到達不能極 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065220962

作品紹介・あらすじ

2018年、南極大陸を遊覧中のチャーター機が突如システムダウンを起こし、不時着。ツアーコンダクターの望月拓海は、南極経験者である乗客のランディ・ベイカーとともに、物資を求めて今は使用されていない「到達不能極」基地を目指す。
1945年、ペナン島の日本海軍基地。訓練生の星野信之は、ほのかに思いを寄せていたロッテと、ドイツからやって来た彼女の父親である博士を、南極にあるナチスの秘密基地へ送り届ける任務を命じられる。

現在と過去が大胆に交錯する、第64回江戸川乱歩賞受賞作! 受賞後第一作となる、表題作のスピンオフ『間氷期』も併録。

感想・レビュー・書評

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  • 斉藤詠一『到達不能極』講談社文庫。

    第64回江戸川乱歩賞受賞作。

    2018年の南極大陸と1945年のペナン島の日本陸軍とを交互に描きながら、南極大陸の『到達不能極』の謎を描いたSFミステリー小説。期待を大きく裏切る凡作だった。そして、ついでに収録された表題作のスピンオフ『間氷期』も、さらに傷口を広げたばかりという有り様。この種の小説の場合、決定的な何かを描かないと迫力が出て来ない。

    2018年に南極大陸を遊覧中に通信障害とシステムダウンで不時着を余儀無くされたチャーター機。チャーター機に乗っていたツアーコンダクターの望月拓海は、アメリカ海軍特殊部隊のランディ・ベイカーと共に物資を求め、『到達不能極』基地を目指す。1945年にナチスドイツが南極大陸で秘密裏に行っていた実験とは……

    本体価格840円
    ★★★

    • 魚雷屋阿須倫さん
      単行本で読了済みですが、「終戦のなんちゃら」とちょっと似ていますよね。
      単行本で読了済みですが、「終戦のなんちゃら」とちょっと似ていますよね。
      2020/12/31
  • 2018年、突然の電波障害で南極に不時着した遊覧飛行中だったチャーター機。基地との連絡が取れなくなった南極観測隊。そして1945年、戦時下の兵士たちに下された極秘の指令。現在と過去が交互に語られ、見えてくるものは……。圧巻の舞台設定とスケールで描く江戸川乱歩賞受賞作。

    この話の最大の謎は、2018年の電波障害と、1945年の戦時下の指令がどうつながるのか、というところなのですが、その謎が明かされるまでの各時代の描写がまず読ませる。
    2018年では南極のリアルな描写が見もの。知識的な面はもちろんなのですが、食料や燃料を求め、今は使われていない基地へ向かう描写の迫力はかなりのもの。冒険小説としての面白さも持ち合わせている。

    一方での1945年でのエピソードは18歳の少年兵を語り手に話が進む。軍事的な部分であったり、航空機の描写などもリアルに描かれているけれども、少年兵の初恋の感情であったり、戦争へのモヤモヤ、同じ部隊の仲間との関係性など、心理描写がみずみずしくそこも良かった。日本兵たちの目的地というのも、かなり荒唐無稽なのだけど、そこも描写がきちんとなされているので、話がすっと入ってくる。

    そして二つの話がつながるとき、明らかになるのは全世界を巻き込む大きな危機。ここにきて話はより壮大になり、荒唐無稽さもより増していくのだけど、ここに至るまでの各エピソードや心理描写が詳細かつリアルに描かれているので、個人的にはわりとすんなり受け入れられました。

    乱歩賞路線の作品というよりは「このミステリーがすごい!大賞」路線の話かもしれない。なので従来の江戸川乱歩賞を期待していると、だいぶ面食らう展開かもしれません。でも作品自体のパワーや熱量は、これまで読んできた乱歩賞作品とは全く違う方向に振り切られていて、純粋に楽しめました。

    今回初収録という「間氷期」は『到達不能極』の登場人物の過去を描いたもの。短編ながらこちらもワールドワイドな舞台と設定で、他の小説家ではあまり読んだことのない路線で面白かった。

    そして『到達不能極』も「間氷期」も単にスケールの大きい娯楽作というわけでなく、今の世界や社会が抱える問題に切り込んでいるあたりも印象として良かったです。

    著者の斉藤詠一さんが、今後どんな路線で作品を書いていくのかはわからないけど、この路線、この完成度の作品が続いていくなら、解説にある通りミステリ史に偉大な足跡を残す作家さんになる可能性も十二分に感じます。それだけスケールの大きさを感じる作品でした。

    第64回江戸川乱歩賞

  • ミステリーとSFとミリタリーと色々な要素があっておもしろかったし、とても感動しました。

  • 南極に最近行った知り合いがいる。死ぬまでに富士山登頂したいとよく言うが南極も面白そうだが本書を読むととてもじゃない感じがする。
    発送はとても面白いし、SFとして読むなら楽しめる。

  • 南極。極寒の地に閉ざされた過去の悲劇が、現代に蘇る! 第64回江戸川乱歩賞受賞作。

  • 読んでる途中でずっと涙が止まりませんでした。
    戦争時代のときには感情移入をしながら読んでいたので、最後の日本軍の仲間たちが全員を助けるために死んでいくのは心が引き裂かれるように辛かったです。

  • 南極大陸を部隊にしたSF小説。
    第二次世界大戦と現代の2つの時代の話が交互に進んでいく。南極大陸に秘密基地を建設し、そこで昨今のAIに相当する技術を軍事目的に開発していたという設定。詳細は記載しないが、エンタテイメントとしては問題ない範囲で、スムーズに腹落ちしながら読み進めることができる。
    南極探検隊の話の中で、頻繁に「しらせ」の名前がでるため、その存在だけは知っていたが、軍に所属するいわゆる軍艦であることを初めて知った。

  • 冒険&SF。
    南極はとにかく謎な事が多く、それだけでワクワクする。
    本書は現代で南極を探索するパートと過去の戦中時代に南極にいた部隊の2つの話が交差して進んでいく。

    戦時中に南極である研究が進められていたのだが、
    それが本当にありそうなのだ。
    現代ではもう使われていそうな気がする。

    何もかもが凍ってしまう南極、とても魅力を感じるけれど行きたくはないな…。

  • 過去と現在が交錯するダブルプロット。期待が高い分、終わりに向かう過程に、若干の疑問。楽しめるスケール感。

  • スケール感の大きい作品を読みたいと思っていたところで出会い、楽しく読めた。
    欲を言えばアクションシーンの描写をもう少し描き込んで欲しかった。
    併録されている間氷期も本編では詳しく語られなかった部分か描かれていて良かった。

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著者プロフィール

1973年、東京都生まれ。千葉大学理学部物理学科卒業。2018年、『到達不能極』で第64回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。近著に『環境省武装機動隊EDRA』『一千億のif』『レーテーの大河』がある。

「2023年 『クメールの瞳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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