中国の歴史9 海と帝国 明清時代 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (616ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065227770

作品紹介・あらすじ

学術文庫版「中国の歴史・全12巻」の第6回配本・第9巻は、明朝と清朝、ふたつの大帝国を1冊で通観する。出口治明氏(立命館アジア太平洋大学学長)が「名著ぞろいのシリーズの中で、まさに名著中の名著。内藤湖南に匹敵するのでは」とイチオシする話題作。
2003年3月、雲南省昆明の空港で、著者は不思議な一行に出会う。聞けば彼らは、台湾の港町・花蓮から、海の女神「媽祖」を奉じて、雲南省の麗江を訪ねた帰路だという。台湾の海の女神が、なぜ中国内陸の観光地を?――この謎から、海に囲まれた東ユーラシア500年の歴史が浮かび上がってくる。
14世紀半ば、朱元璋が開いた明朝は、万里の長城の修築や、鄭和の南海遠征など、古代的な性格の色濃い王朝だった。それに対し、16世紀に登場したヌルハチに始まる清朝は、少数の満洲族のもとでさまざまな人々が闊達に生き、近代的な活気に満ちていた。古代的な明代から、近代的な清代への跳躍はなぜ可能だったのか。それを解明するには、「海に向かい合う中国」を見ることで、従来の中国史の枠を超える必要がある。倭寇と朝貢、銀の流通と世界経済、清朝皇帝とチベット仏教。地球規模の視点から、ふたつの帝国を描き出す。そして19世紀、アヘン戦争や太平天国を経験し、中国社会は近代への脱皮に備えて大きく変化していく。〔原本:2005年8月、講談社刊〕

目次
はじめに 大海に囲まれた二つの帝国
第一章 出来事の時空間
第二章 明朝の成立―一四世紀1
第三章 海と陸の相克―一四世紀2
第四章 海と陸の交易者―一五世紀
第五章 商業の時代―一六世紀1
第六章 社会秩序の変容―一六世紀2
第七章 王朝の交替―一七世紀
第八章 産業の時代―一八世紀1
第九章 伝統中国の完成―一八世紀2
第一〇章 環球のなかの中国―一九世紀
おわりに 媽祖と明清の歴史

主要人物略伝
歴史キーワード解説
参考文献
年表
索引

感想・レビュー・書評

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  • 中国の歴史シリーズ第9巻。中世を抜けて近代を迎える明・清時代を描く。
    「海」「銀(貨幣)」「物(生産と物流)」など巨視的な流れを捉えながら、皇帝や官僚・商人の業績を時代の雰囲気を伝えるために紹介している。
    中国が歴史的に大陸国家で、鄭和を除いて海洋に進出することがなかった背景を知りたくてこの本を読み始めたが、中国から見える「海」の範囲をよく理解できた。

  • 2021/6/13読了
    明清時代を扱う。
    鄭和の大船団で朝貢貿易を展開した明と、〈アヘン戦争〉然り欧州列強に食い潰された清というイメージが覆る。まあ、それぞれ200年以上は続いた王朝なので、単純には割り切れないのだが、元以降、もはや中国の歴史のうねりは中国だけに留まらなくなっていた、という事なのだろう。

  •  中国史というのは、複雑であるが故にわけがわからなかったのですが、このシリーズを読むとその背景までわかるのでとても興味深く読めました。
     そして中国はかつて鄭和が航海したことを根拠に南シナ海の領有権を主張しているのですが、その本当の姿をキチンと理解することが大切であると思います。中国に蓄積された大量の銀がどのように動いたのか?アヘン戦争以降アヘン貿易はどうなったのか?太平天国とはなぜ起こりどんな意味があったのか?
     12巻から読み始め、11巻、10巻、1巻、2巻そしてこの9巻を読み終えました。歴史を後ろから読むか始まりから読むかという問題は悩ましい問題ですが、次はだい3巻を読もうと思います。

  • 海に視点を置いた明清時代の概説書。明創業の時期は大航海時代の前段階にあたり、鄭和の艦隊規模は後代のヨーロッパのそれをはるかに上回っていたのは周知のところ(ただし鄭和の旗艦のスケールについては慎重な見方をしている)。その後にくる、海禁政策と倭寇のせめぎ合い、銀の大還流、王直や鄭芝龍・鄭成功親子の海上帝国など、閉じた農本国家の中国近世にあっても、海との関わりはダイナミックで、読み応え充分だった。清時代の人口爆発的増加の一要因に、外来種の甘藷と玉蜀黍があったという点、世界が海を通じてひとつになりつつあった事の影響と言える。清の領土が拡大したのは、中華帝国の皇帝、草原の民の大ハーン、チベットの大施主を兼ねた存在だったからで、紐帯があれば大勢でも纏まりやすい好例だし、逆に権威が落ちるとバラバラにもなりやすい体質は、海から来た西洋人の侵略を容易にした。本書は人物にスポットを当てることは少なく、巨視的に歴史の流れを捉えるスタンス。ボリュームあるが、明清という長大な期間がよく纏まっており、お薦めの一冊。

  • 海からの視点を取り入れて、経済と交易を軸に明から清までの社会構造の変遷を追う内容。様々なファクターが絡み合って時代が進んでいく様子が面白い。

  • 元朝は江南産の物資を大都に運ぶために穀物輸送の海運と塩その他の大運河を利用したが、安定した供給とすることができなかった。大運河は紅巾の乱で寸断され、海運は方国珍や張士誠に制せられた。
    朱元璋は胡惟庸の獄で独裁中央集権化を進め、里甲制で皇帝と臣民が直接相対する体制を作り、雲南攻略で海から遠ざかり内陸に重心を置こうとした。
    京畿を中心とし全国の動員に及んだ雲南攻略で、各将兵の間には戦友結合関係が生まれた。これを断ち切るために藍玉の乱と軍制改革による衛所の配置転換が行われた。
    物納で税を取り開中法で軍糧を確保していた明朝だが、銀経済の波に飲まれやがて銀経済を追認していく。里甲制では納税・徭役は里長が責任を負ったが、一条鞭法では知県が責任を負うようになる。行政が主体的に生産基盤を整理する必要に駆られ、その協力者として郷紳が重んじられる。
    清朝は互市を発展させ、王朝正式の外交である朝貢メカニズム外での交易を行った。後に西洋が正式外交による通商を望む時には朝貢メカニズムを適用せざるを得なかった。
    海外から流入してくる銀は、地域物価の需給を超えた相場で動くため、不作地域でも納税の為穀物を売り銀を確保する事態が生まれた。清朝は銀を地域間決済とし、銅を州県地域内決済とすることで地域内で完結する経済圏を作り需給原理を維持した。
    清朝盛世の人口爆発は、北虜南倭から開放され軍事費用のための税負担が軽くなったこと、少数満族の清朝皇帝が多数漢族を支配するために努力し人格的に優れていたこと、郷紳が地域自治に関わり治水や孤児院や義倉を整備したこと、アメリカ原産のトウモロコシやサツマイモといった新作物が普及したこと、によって起こった。
    清末社会の蛻変は、人口増による正業に就けない遊民の増加、鉱業とその労働者のための略奪的農業による森林資源の枯渇、黄河氾濫による大運河水系の維持不能による三要因によって起こった。
    海と明清帝国500年の関係は、第一期の元末に陸から独立した海域社会の成立、第二期の海禁による政権維持管理と倭寇対立、第三期の海禁解除による互市成立と鄭氏政権の海域社会独立、第四期の清朝による海が陸政権の統制を受ける、第五期の阿片戦争以後東ユーラシアの海が環球の一角となる、変遷をしていった。

  • 清が、満洲族の出自であり、東北部、ハンの後継として、その出自を十分に生かして、帝国を運営、支配していた。
    また周辺諸国との関係、特に鎖国をしていた筈の日本、正式な国交はないが、と経済的に密な繋がりを持っていた。

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著者プロフィール

1957年東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、立教大学文学部教授。専攻は中国社会史。著書に『中国の歴史9 海と帝国』『伝統中国─〈盆地〉〈宗族〉にみる明清時代』『シナ海域 蜃気楼王国の興亡』(以上、講談社)、『貨幣の条件─タカラガイの文明史』(筑摩書房)、『死体は誰のものか─比較文化史の視点から』(ちくま新書)、『人口の中国史─先史時代から一九世紀まで』(岩波新書)ほか。

「2023年 『戦国日本を見た中国人 海の物語『日本一鑑』を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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