檸檬先生

著者 :
  • 講談社
3.45
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本棚登録 : 1636
感想 : 98
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065228296

作品紹介・あらすじ

第15回小説現代長編新人賞受賞作。


世界が、色づいている。

小説現代長編新人賞、史上最年少受賞!
十八歳の作家が放つ、鮮烈なデビュー作。


<内容紹介>
私立小中一貫校に通う小学三年生の私は、音や数字に色が見えたりする「共感覚」を持ち、クラスメイトから蔑まれていた。ある日、唯一心安らげる場所である音楽室で中学三年生の少女と出会う。檸檬色に映る彼女もまた孤独な共感覚者であった。



本を開けば白黒の紙面のうえで、色と音とが踊る。読み終わり、それが幻だったとしたら、あなたは耐えられるか。
――水野良樹(いきものがかり)


先生は鮮烈な青春そのもの。みずみずしい感覚で心が開かれる傑作。 
――茂木健一郎(脳科学者)


『こころ』の末裔か令和の『彼岸先生』か。全体に血が通っていて、小説を読む原初の喜びのようなものがあった。
ーー宮内悠介


音と色の響き合う世界を見事なまでに小説に引き込んだ。その生きづらさ、苦しさだけでなく、新しい世界に目を開かされた瞬間があった。台詞と地文に新鮮な発露があり、檸檬先生の台詞には実がある。
ーー朝井まかて


作品のテーマが珠川さんの背中を押している気がした。何より支持できたのは対象を見つめる無垢にも似た視点から言葉を紡いでいる点だった。これは才能であろう。
ーー伊集院静


共感覚という独特な感性を小説として描こうとした意欲を大きく買い、またそれが見事に成功していると思える作品だった。
ーー薬丸岳

感想・レビュー・書評

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  • まずもう1ページ目から、高校生(当時)の文体とは思えない。

    色彩にあふれた表現だった。
    みずみずしい、という表現がまさにぴったり当てはまる。
    「死体」までをも、こんなに鮮やかに詳細に表現している作品を、私は知らない。


    みずみずしいのとは正反対に、少年の孤独や閉塞感が描かれていた。
    少年の見える世界は色彩豊かなはずなのに
    少年の心の中はずっと曇っていてそして無色だった。
    色の共感覚は私はないけれど、この少年の曇ったような気持ちはすごく伝わってきた。天気で表すなら確実にくもりである。

    だけどそれが、先生との出会いによって、ほのかに色づいていく。


    少年は檸檬先生に救われた。
    でも少年は檸檬先生を、救えなかった。

    檸檬先生の存在はあまりに彩度が高くて、そして檸檬先生の抱えるものは、少年が支えるにはあまりに鮮やかで、大きすぎた。

    少年は幼くて純粋だった。
    檸檬先生もまた、幼くて、純粋だったのだ。
    ただまっすぐに思いを伝えて、そしてただまっすぐに、その思いを受け取った。
    たった、それだけのことだったのだ。

    少年はこれからも、抱えきれない「檸檬先生」を抱えて、今日を生きていく。


    これが、2002年生まれの作家。
    そして、カバーイラストが、ブルーピリオドの山口つばささんというのも、完璧だ。
    (next door design岡本歌織さんの装丁センス、さすがです)




    (複数の誤字脱字があって校閲全く通ってないな、と思ったけれど、高3ゆえの若さと勢いが感じられる、ということにしておく。ご愛嬌。)

  • 共感覚がテーマ。学校に馴染めない少年は,音楽室で檸檬先生(少女)と出会う。人生を鮮やかに変えた出会い。共感覚で繋がる孤独な少年と先生。先生は共感覚と付合う方法を教える。新鮮。


  • 色と音の共感覚を持つ少年は、
    周りに馴染めず、弾き飛ばされて一人だった。

    偶然、同じ感覚を持つ檸檬先生と出会って
    感覚のコントロールや社会には馴染むことを
    少しずつ覚えていく。

    少年が成長してゆく軌跡を辿った小説。



    個人的感想としては、
    檸檬先生の真意が読み取れなかった、
    自分の愚鈍さがが少し悲しいかった。
    檸檬色の物語。

  • 共感覚という特殊な能力を持つことで苦悩する少年と少女。強くなくては生きていけない、優しくなければ生きていく資格はないと言ったのは誰だったか。

  • 2022初の読了本です。
    周りの人の影響か、ハードルが変に上がってましたね。
    「読んでスッと面白い小説」だと勘違いしてました。
    「考えさせられる小説」だったとは。

    ラストシーンの色や音の表現がめちゃくちゃリアルに感じました。
    まるで、あの現場を生で目撃したかのように。


    〝普通〟って何なんでしょうね。

    俺は「女性に暴力を振るう男」「パクチーが好きな人」
    「バック宙ができる人」はいろんな意味で普通ではありません。
    でも、〝普通〟と思う人もいるでしょう?

    〝普通〟は共有できない。それを理解していないと偏見や差別を生み、自分と異なるものとして攻撃する。

    それがたまたま少数派だった場合は、その人は「間違っている」のかな?「おかしい」のかな?

    〝間違ったことをした人には、その人の心が壊れようとも攻撃してもいいのかな?〟

    ネットの誹謗中傷が身近な問題になってきているからこそ、心に留めたい小説だった。

  • 普段はあまり読まない系統の本ですが、小説現代長編新人賞ということで、どんな感じなのかな?と冒頭をチラッと読んだら…あまりにも衝撃で何故そこに至ったのか気になって気になって、一気に読んでしまいました。
    「共感覚」が主なテーマとなっていて、その中で生きづらさを感じている少年と檸檬先生の関係、心情、変化がとても繊細に綴られています。

    とにかく表現がすごい。書いたのは高校三年生!?
    決して私の口からは出てこないような表現も、不思議とサラサラと頭に入ってきてこんな感情なのかな?と想像できる。そこがすごい。

  • 梶井基次郎の「檸檬」を読むといつも、仄暗い中で色彩と音楽が喧しく響く寺町通りに迷い込む。
    共感覚というものが、気になりだして、いくつか本も読んで、この小説に行きあたった。

    音楽や数字や名前に色が見えて溺れる少年に、平凡な世界は冷ややかだった。
    彼に手を伸ばしたのは、同じ感覚を持ち、同じく阻害されている「檸檬先生」だった。

    二人が感覚を交わしながら、楽しい冒険を繰り広げる様子は、見ていて本当に幸せだった。
    教室から抜け出ることも、先生の目を盗んでピアノを弾くことも、「平凡」には叶わないのだから。

    拒絶された存在は、声をあげる。
    でも。声を届けなければ、理解されないのかな。
    心の内なんて見えない、分からない、だけど同じ世界にいるという感触が、ある。
    二人はきっと、そのことで繋がっていた。
    それが「平凡」な世界にも通じれば良かったのに。

    クライマックスは、息がしにくくなった。

    少年の絵は、先生の何を描いたんだろう。

  • なんかすごい作品だった…。
    初めて知った「共感覚」という感覚。これまで言葉すら聞いたことがありませんでした。
    物語を通して感じるその独特な世界、彼らがもつ感覚を表現する言葉の洪水に圧倒された。
    そしてこの作品を生み出した著者が当時まだ18歳だということにも驚きました!

    音や数字、名前も「色」として認識され、人にも色が見えてしまう少年。そのせいで何をするにも大変な日常。 
    そんな彼に、それは「共感覚」だと教えてくれた檸檬先生。ある日を切っ掛けに始まった中三の檸檬先生と小三の少年の濃密な時間。
    文字を追いながらこんなにも色彩豊かに感じたことはなかった。

    少年が発表するシーンは感動で胸がいっぱい。
    衝撃の終盤からのラストは苦しく切ない気持ちになりました。

  • 史上最年少で「第15回小説現代長編新人賞受賞」を獲ったという事でしたが、そういう情報って皆さん何処で手に入れるのか不思議。これだけ本読んでいるのにそういう情報全然目に入って来ないのは私の目が節穴なのか?
    全く予備知識無しで読んだので、その辺の雑音無しで読めたのは良かった。小学3年生が語っているはずなのに妙に難しい言葉で思考したり違和感が拭えなかったのですが、青年になった少年が思い出して語っているというシチュエーションを想像して自己解決しました。

    衝撃的なシーンからスタートするので、檸檬先生が墜落死する事が織り込まれた状態でスタートするのですが、最後まで読んでも少年に自分の死を見せつける理由が分からないです。自死の理由はなんとなく分かるんです。少年と道を違えて以降、自分と感覚を共有出来る人がいなくて、しかも自分がLGBTなのに親に結婚を強いられてしまう。その行き場の無い思いが自死に至らせたと。
    しかし、わざわざ自分の死を少年に植え付けるという行為とは、どうも繋がらないというか理解がし難いんです。
    檸檬先生がただのエキセントリックな女性ならば分かるんです、しかしながら彼女は奇矯な行為で人を煙に巻いている人では無かったはず。最後の最後にこれかよ。というのが率直な感想でした。

  • 二人が出会ったばかりの頃は、お互い、自分の居場所は相手しかないって思っていそうな雰囲気だったのに、成長するにつれ二人が確実に違う生き方をして、すれ違ってしまったのは悲しかった
    少年は"普通"に溶け込むことができたけど、先生はできなかったのかなと思ったり、少年が"普通"になったことに思うことがあったのかなと思う

    私は大学でピアノ演奏を勉強しているけど、私が感じたショパンの和音の美しさとか、モーツァルトの煌めいてる感じとか、人によっては耐え難いものなのかなあと思った

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著者プロフィール

2002年東京都生まれ。小学校二年生から物語の創作を始める。高校受験で多忙となり一時執筆をやめるも、高校入学を機に執筆を再開する。『檸檬先生』で第15回小説現代長編新人賞を史上最年少で受賞し、デビュー。他の著作に『マーブル』、『1と0と加藤シゲアキ』に寄稿した「渋谷と廃墟」がある。

「2023年 『檸檬先生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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