雨の日も神様と相撲を(3) (講談社コミックス月刊マガジン)

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  • Amazon.co.jp ・マンガ (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065230565

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  • 初版 帯

  • 相撲に蛙に殺人事件、普通なら絡む事のないだろう3つの要素が絡み合い生まれる摩訶不思議な物語
    話の内容そのものは既に小説版を読んでいた為に知っているのだけど、それでも蛙が相撲を取っているという奇妙奇天烈な光景を越えた先にある幾つもの真実にはやはり驚かされてしまうね


    村の秩序を壊す存在に思えたイチゴヤドクガエル。普通の物語であれば、異邦の存在である赤い蛙を倒せばそれで終わるが本作の真骨頂はむしろイチゴヤドクガエルが倒された後にあるというのは面白いね

    文季が指導する形で村の蛙を勝たせてしまった事で崩れる秩序
    これを元通りの形にする最善の道はわざと相撲で負けること。でも、その道は文季の人生の秩序を崩してしまうもの。例え、村の為だろうと文季にわざと負けるなんてことは許されない
    つまりこれは村の秩序と文季の秩序が真正面からぶつかる事態になってしまったというわけだね

    まあ、文季はそんな殊勝な価値観で負けられないなんて思っていたわけではないのだけど
    彼が考えていたのは既存の秩序を壊すこと。それによって囚われのお姫様を開放しようと考えていたわけだね
    それにしたって真夏を解放する展開を意識して早い段階から真夏対策を始めていたなんてどう考えても普通じゃないね……

    こうして真夏は外の世界からやって来た異邦人によって無事に救われてめでたしめでたし……とならないのが本作の面白い所
    神前相撲に続く形で明かされる殺人事件の真相
    それはほぼ完璧に近い形で真相を推理していた文季が実は事実を見落としていた為に真相を得られたというおかしな構図
    この気付きを契機に隠されていた別の真実を明らかにしていく展開は本当に面白い!

    というか、13話及び最終話で明かされた様々な事実を見るに、文季は欠けた事実を繋ぎ合わせて特に導き出す必要のない真相へ真夏や自分自身を導いていたという間の抜けた展開だったといえるのだろうね
    いや、それでもあの真夏が自分を好いているだなんて、それこそ文季には導き出しようのない真実だったのだろうけど(笑)
    でもそこを見落としていた、もしくは気付かないようにしていた事で文季は自分を余計に追い込んでいたわけだ

    秩序を取り戻すために始まった蛙との相撲
    それがいつの間にか元の秩序を脅かす行いになってしまっていた。けれど、裏の真実を知らないままに突き進んだことで別の秩序を打ち立てる可能性が生じた
    相撲に愛された少年が相撲に縛られた村からお姫様を自由にしてみせた
    それは一種の秩序有る物語と言えるのかもしれないね

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著者プロフィール

過去作に『雨の日も神様と相撲を』(原作/城平京、全3巻)。


「2023年 『世界最強の魔女、始めました ~私だけ『攻略サイト』を見れる世界で自由に生きます~(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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