江戸前エルフ(4) (マガジンエッジKC)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065232149

作品紹介・あらすじ

江戸時代からずっとステイホーム! 神社にひきこもるエルフのエルダと巫女の小糸のもとに、やってきたのは金沢のエルフと巫女!

感想・レビュー・書評

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  • 江戸と令和の数百年、母と子の数十年。過去と、未来と、いつでもエルフ。

    東京、大阪、金沢と、ご当地で神様やってるエルフも三柱目。

    話の枕に置かれる。
    「東京都中央区」
    「月島――」

    から始まる十一行の舞台説明もいい加減板についた今日この頃です。
    事実、この作品の前提を一目にして初見さんにもご理解いただける名口上だと思うので、どうかご存じでない方はこちらの文言から確かめにいらっしゃいませ。

    さて!
    三巻から引き続いてお送りしますは金沢在住、前田利家公から召喚されし、ちょっぴりお姉さんでハイソなエルフの「ハイラ」さま。

    が。

    おなじみ我らが主人公、東京のご当地エルフ「エルダ」の元へやってくる話、その続きからになっております。
    異世界からやってきたエルフが神様をやっているのなら、お付きの巫女もいる体なものでありますが。
    巫女が世話を焼くのか、手を焼くのかという違いこそあれ、なんだかんだでお互い甘く、地域住民込みできちんとした信頼関係で結ばれている優しい世界、ここを揺るがせないのが日常コメディとしてやはり強い。

    定命の人間と不死のエルフ、生きる時間の異なるもの同士の出会いと別れ、という哀しみが作品の根底に流れていることに変わりはなく、作品が惰性で流れているとは限らないのもこの漫画の魅力であるわけなのですが。

    では、そんなわけで。
    黙って佇めば麗しいことに変わりはないけれど、片や引きこもりの「エルダ」とギャンブル狂の「ハイラ」。
    駄目さのベクトルは違えど、このご両人というか両エルフ、キャラクターデザインとしては色白で細面の長身、だけどご自身の愛する特定方面に関してはアグレッシブに動くという意味で似通っています。

    この辺は一巻巻末で顔見せした「エルダ」のライバルでエルフ「ヨルデ」が色黒で丸っこく小柄、なにもかも正反対だけど不思議と通じ合う魅力をお出しした後だからこそ、なのかもしれません。
    極端と極端を語った後だからこそ近似を出せるというのは、創作の世界ではありふれた手法ともいえましょう。けれど、わかりやすく鮮やかであることに変わりはないのです。よって、ほれぼれとする私もいたりします。

    ああそういえば。
    ヨルデのことも「忘れんといて」とばっかしに、この巻の巻末に15Pほど彼女ら大阪エルフと大阪人のコンビの日常を描いた番外編が収録されているのも構成としてなかなかに心憎いところですね。

    話を戻してハイラのお付きの巫女「いすず」のハイラに対する接し方にしても、一見ドライな対応に見えて幼少期から彼女の傍に控えてきただけあって実は……。などと意外性を持っており、エルダのお付き巫女にして主人公の片割れである「小糸」の明確な「IF」になっている風に感じ取れるのも面白いところですね。

    作風としては一巻で基本路線を提示してから先ほど申し上げた対比構造を展開するなどし、そうして二巻までで固めた延長線で動いていることに変わりはありません。
    全体的な流れという意味では、悠久の時の持ち主であるエルダに合わせてゆったりと時が流れるいい意味での安定が極まった気がします。真新しさで客を捕まえたなら、今は駄弁ってつなぎ留める一幕というべきか。

    もっともこの辺に関しては人によってはマンネリと捉えられるかもしれません。
    この巻単独を取り上げれば、江戸時代の歴史風俗と現代文化を絡め、うんちくを述べながら話を進めていく基本路線に忠実な分、今までの巻で見られた変則的な構成から遠ざかったと言えなくもないわけですし。

    とは言え全体的なストーリーラインも微妙に動いていないこともないので、そちらに注目してみても良いかと。
    それと、この『江戸前エルフ』、構造上いつでも終わらせることができるタイプの話ではあるのでしょう。
    時に、過去と現代を往還して、昔を振り返りながら今を歩んでいくこの物語は、仮に喩えるとするならば過去と未来を往復するブランコのようなもの。

    勢いよく揺れても、やがては運動エネルギーを失って止まってしまう。
    しかしそれは勢いを殺すという意味ではなく、うまく余韻だけを残して終える意味合いこそが理想……。
    なら、どうするか? 私なりの空想ですが、過去と未来でなく「現在」で話を落ち着けてしまえばいい。
    事実、この巻では百年単位ではなく十年単位、比較的最近に目を向けるエピソードが登場しました。

    具体的には「小糸」が大掃除の過程で発掘した懐かしの記録媒体「β」を通じて亡き母の顔も見ることができた。
    やはり当時からまったく変わっていなかったエルダも、やっぱりそこにいた、というものです。
    やがて「エルダが一区切りとばかり語りを落ち着ける≒連載終了の日」は、ひょっとすればわずかに近づいているのかもしれませんね。

    その一方で。
    ひとつ前の年号「平成」の文化も「令和」を生きる女子高生にとっては立派なジェネレーションギャップ! 
    といったわけで、江戸期における三十六の元号に留まらず「平成」ネタも投入できたのはネタの幅を広げる上で美味しいところです。

    十年ひと昔という言葉でさえ、少し年代が上の読者層にも実感が籠っているので、いわんや百年以上激変する町並みに揉まれてきたエルフは――というものです。
    時間間隔が身近になった分、取り残されるものの哀愁を共感できるようになった――。さもありなん。

    以上、つらつらと述べてしまいましたが、所詮は根拠も薄弱な空言なのであまり真に受けないでいただければ。
    ちなみに一巻と三巻の〆に当たって、次の巻に尾を引くようなエピソードが配置されましたが、この巻は二巻のような(現時点での)例外でなく、エンターテイメントの定番である「引き」が働いていますよ。

    巫女である「小糸」に弓引く神事のお役目が回ってきた、責任重大! というものです。
    話がどう転ぶのかどうにもわからない反面、成長も見込めそうなお話であるため、どうやら定型の日常エピソードから離れたお祭り回といった意味で見逃せそうにないようです。
    祭りの後の寂しさを忘れない、けれども祭りの最中の楽しさを覚えて続けている――それがきっと、彼女たちエルフなのでしょうから。

  • ■書名

    書名:江戸前エルフ(4)
    著者:樋口 彰彦 (著)

    ■感想

    のんびりとした巫女の日常が相変わらず描かれています。
    江戸の知識も適度に入っており、一作目から作風が変わっていません。
    登場人物も踏まえましたが、エルフも人間も基本良い人なので、
    安心して読めます。
    この物語に悪人は不要かなと思いますので。
    麗耳神社のハイラとその巫女・いすずの関係性の関係性ですが、いすずが
    ハイラを溺愛しています。

    長寿の種族の物語なので、昔を思い出してしんみりすることもありますが
    そういうのもまた一興です。

    なお、物語とは全然関係ないのですが、表紙の印刷の画質が悪いです。
    明らかに画像の画質間違えている気がします。
    これ、2版から直るのかな??

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