呪い禍 古道具屋 皆塵堂 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065235058

作品紹介・あらすじ

料理屋・福芳で修行するも、やむを得ない事情から店を辞めることになってしまい、途方に暮れていた麻四郎。

困って街を歩いていると、古くからの知り合いである千右衛門に声を掛けられ、皆塵堂を紹介される。
どうやら人手が足りないらしく、ひとまず十日ほど試しに働いてみることに。

麻四郎が店番を手伝っていると、呉服屋の弥平という男が訪れ、やけに綺麗な壺を「ただで引き取ってほしい」という。
おかしな話だが、峰吉の巧みな交渉によって、壺数個を買うことを条件に、綺麗な壺を引き取ることに。

だがその晩、麻四郎がふと目を覚ますと壺の口から人の手が出てきていて……!?
その幽霊の正体とは? そして、麻四郎の不運の本当の理由とは。

大人気シリーズ、3年ぶりの待望の新刊!

感想・レビュー・書評

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  • 何故か『曰く付き』の品と不運な男が引き寄せられる〈古道具屋皆塵堂〉。前作「夢の猫」のあとがきで『完結編』と書いてあったことはなかったことになっている…つまりシリーズは続くということらしい。好きなシリーズなので嬉しいことではある。

    今回〈皆塵堂〉で働くことになったのは麻四郎。料理人として長年勤めていた料理屋からリストラされ退職金もなく、当てにしていた親類の居酒屋で働くことも出来なくなり振り売りの仕事でしのいでいて…という典型的な転落振り。そんな折に知り合いの料理屋の主から紹介されて〈皆塵堂〉で働くことに。
    早速働かない店主・伊平次や相手によって見事に態度を使い分ける小僧・峰吉、『曰く付き』の品による怪異という〈皆塵堂〉の洗礼を受ける。

    麻四郎の『不運』は一つ一つは小さなものなのだが、重なれば呪いか?と疑いたくなる。居酒屋を営む親類から聞かされた話は正にその疑いから確定になりそうなものだったが、真相は。そして麻四郎の『不運』は収まるのか。
    タイトルの「呪い禍」は多分「コロナ禍」に引っ掛けているのだろうが、もう一つ、「呪いか?(呪いなのか、そうじゃないのか)」というダジャレでもあるようだ。
    オチはこれまでの輪渡さんらしい脱力系。

    シリーズ再開ということで、これまで〈皆塵堂〉で働いていた男たちも再登場。
    隣の米屋で働く円九郎は相変わらず怠けることばかり考えているようだが、米俵を担ぐくらいは出来るようになった(その後が笑える)らしいし、女性の前ではキリッとしている。
    間抜けな呪いを掛けられた連助は相変わらず幽霊や化け物を見ないし信じない。目の前に幽霊がいるのにほどけた褌の紐を閉め直すのに必死。間が良いのか悪いのか。
    〈銀杏屋〉の若旦那・太一郎は猫が苦手なのに相変わらず猫に追いかけられている。だが彼の目利きは確かで安心出来る。
    そして〈皆塵堂〉で働いてはいないがレギュラーの巳之助。相変わらずの猫好きは変態レベルで町内の飼い猫から新たに産まれた猫まで全て把握している。引き取り手探しから猫の快適な暮らしのためなら部屋主を蔑ろにすることすら当たり前。
    峰吉の達観も感心レベル。大家で世話好きな清右衛門が何故か円九郎にだけ厳しいのも笑える。

    麻四郎が周囲に振り回されてばかりのキャラクターなのかと思っていたら、時に峰吉より先に客の応対をしようと対抗意識を持ったり(負けるけど)クセのある男たちを上手く使う方法を考えたりとなかなか逞しい。

    ちょっと盛り上がりにかける話ではあったが、いつものユーモラスな輪渡作品らしさを楽しめた。このくらいのユルさが良いのかも知れない。

    ※古道具屋皆塵堂シリーズ一覧
    (★はレビュー登録あり)
    ①「古道具屋皆塵堂」
    ②「猫除け」★
    ③「蔵盗み」
    ④「迎え猫」★
    ⑤「祟り婿」★
    ⑥「影憑き」★
    ⑦「夢の猫」★
    ⑧「呪い禍」(本作)★

  • “祝・皆塵堂再開”ということで、しれっとシリーズ第八弾です。

    今回、皆塵堂で働くことになったのは、人が良くて真面目な元料理人の麻四郎。
    彼に立て続けに起こる“地味な不運”は果たして“呪い”によるものなのでしょうか・・・。
    まずは、久々に皆塵堂メンバーに再会できて嬉しいですね。良くも悪くも相変わらず・・と言いたいところですが、峰吉の“客察知センサー”と巳之助の“猫馬鹿データ”がさらにパワーアップしている気がします。
    そして『祟り婿』に登場した連助と『影憑き』に登場した円九郎も再登場。
    頑なに幽霊を信じなくて太一郎を敵視する連助に、またもやイラっとさせられましたが、峰吉の言う“正しい連助の楽しみ方”に、目から鱗が落ちたような気持になりました(笑)。これで私も“連助を楽しむ”ことができるかも?
    ついでに麻四郎が言うていた“峰吉の正しい楽しみ方”も知りたいものです。
    せっかくシリーズ再始動したのに、太一郎の出番がちょっとしかなくて寂しかったので、今後はもっと登場して欲しいです。という事で次作も楽しみにしております。

  • 皆塵堂シリーズ第8弾。前作でシリーズ終了ということだったが、三年ぶりの再開である。
    料理屋で修行中だった麻四郎が店を辞めることになり、知り合いの紹介で皆塵堂で働くことに。さっそく幽霊を見たりして地味に不運が続くのだが‥
    太一郎や巳之助はもちろんのこと、以前皆塵堂で働いていた連助や円九郎も登場して相変わらずの姿を見せてくれて嬉しい。今回の主人公麻四郎はこれらのメンバーに比べると普通の良い人でストーリーもわりと地味な方だが、幽霊が出てもほっこりする読後感はいつも通りで面白かった。

  • あとがき読んだところ、
    辞めます宣言からの心機一転だったシリーズ新作だったようで

    そこに気づかないまま手にしたんで
    ちょっとばかり説明的な部分が長えなぁ
    と思ってました(^◇^;)

    まだまだ伸びしろあるに決まってるシリーズだとおもうんで
    シリーズ再開
    有り難いです

  • 978-4-06-523505-8
    c0193¥660E(0)

    呪い禍 のろいか
    古道具屋 皆塵堂シリーズ 第8巻
    (この巻より文庫のみ)

    著者:輪渡颯介  (わたり そうすけ)
    発行所:株式会社講談社
    カバー層が 山本(Shige)重也

    講談社文庫 わ-26-17.
    文庫版になってカバーの絵の雰囲気が変わりました。
    鮪助と峰吉はすぐにわかりましたが、伊平次がわからなかったなぁ・・。

    裏表紙より
    運悪く、十五年務めた修業先を辞めることになった麻四郎(あさしろう)
    途方に暮れていると、知り合いの千右衛門(せんえもん)の紹介で曰く付きの古道具が集まる皆塵堂で働くことに。
    しかし、なぜか小さな不運が続く上に怪異騒ぎもひっきりなし。何かおかしい。そんなとき、麻四郎の家には代々受け継がれている因縁があることがわかり!?----

    ==目次==
    ・何かが起こる店
    ・足音の主
    ・正しい楽しみ方
    ・あかない引き出し
    ・のろいか
    あとがき----

    ==手にした理由==
    皆塵堂シリーズを楽しんでいます。
    はじめの巻は2011年春に出ていますので、10年以上前になります。
    当初は7巻までの予定だったようですが。こうして文庫ではありますが、続きが読めて(また皆塵堂の面々に逢えて)うれしいです。
    読むのが楽しみです。
    2024年4月現在でこのシリーズは10巻まであることがわかっています。
    巳之助に良い伴侶が欲しいところ。
    太一郎にも(こちらは難しくなさそう)
    前回で円九郎はまだ米屋の辰五郎預かりのまま勘当が解けていません。
    連助がつぶやいた「商売敵つぶしたる」の約束は守られるのでしょうか?
    子猫たちはどうなているのかしら?
    新しい登場人物も果たしてどんな人かしら? 
    ゆっくり楽しみます。
    ---------------------------
    ※ これまでのものは 本棚 タグ 「皆塵堂」でヒットします。

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    麻四郎 あさしろう 今回初登場の運の悪い男 料理人としての腕は良い、堅物でまじめ人間
    円九郎 えんくろう へなちょこの根性なしの怠け者女好き。箸にも棒にもかからない。峰吉にも鼻で笑われる。鮪助にも相手にされていない。米屋と皆塵堂を行ったり来たりしている。
    清左衛門 材木問屋鳴海屋のご隠居、皆塵堂の地主
    連助 れんすけ 二歩伸ばし室町の紅白粉問屋六連屋(むつらや)の若旦那、入り婿をして、男児が生まれたばかり。
    芝蔵 しばぞう 麻四郎の叔父、麻四郎一族の呪いの話を知っている。
    巳之助 みのすけ 俸手振りの魚屋 猫バカ
    作五郎 さくごろう 大工、おかみさんが実家に帰ってしまっている。作五郎のおかみさんは橘町の桜屋(蕎麦屋)の娘。

    呪い禍(のろいか)が 呪いか?担って終わりました。
    堅物で真面目な麻四郎、円九郎をうまく使えますように。
    あとがきに、再び登場の由が書かれていました。
    単行本の7巻(夢の猫)にはあとがきがありませんでした。文庫の7巻にはあるのかもですが。

    今思えばそれまでも、前の本に出てきた登場人物がチラチラ登場することはありましたが、7巻は怒涛のフィナーレ的に総出演してましたから。
    でもでも、こうしてまた面々に逢えて、新しい人も自分の居場所を見つけて、次の巻も楽しめるってもんです。
    次はいつ読めるかな? 待ち遠しい。

  • シリーズ再開!
    新しい奉公人の麻四郎の他、オールキャストな感じでにぎやかで楽しかった。

  • 幽霊がついていたり、曰く付きの古道具ばかりが集まる皆塵堂。
    15歳にもなるが外見は可愛い小僧、中身は強かな超現実主義の商売人、「峰吉」。店主でありながら四六時中釣りばかりに出掛けてしまい頼りになるや否や不明な主人、伊平次。そして大家の清右衛門。

    今回の主人公は、ついてない麻四郎。腕はいいが人が良すぎる料理人。

    ひょんなことから、皆塵堂で働くことを勧められ。。。


    全編が実は麻四郎にまつわることでハッピーエンドになるのではあるが、回を重ねてこのシリーズも登場人物もこなれて読むうちに、凸凹な人間の集まるこの店の魅力に引き込まれる。

  • シリーズ再開!だそうで。嬉しい限りです。今回から文庫書き下ろしの形態なようで。文庫派の自分としてもさらに嬉しい。
    内容は・・・いつも通りですね。変わらぬ面々による変わらぬ楽しさ。新たに麻四郎さんという人物が登場しますが、これまでの人に比べて若干パンチが弱いというか普通の人というか・・・あんまり濃いキャラクターばかりだと収集つかなくなりそうでもあるからこれはこれでまあいいんですかね。次回作もとても楽しみに待っています。

  • やった、皆塵堂再開!
    今回の主人公は、なぜか小さな不運に見舞われ続ける麻四郎。
    いい奴なのにねぇ。何かとお気の毒。
    でも、皆塵堂周辺のみんなは相変わらずで、再会が嬉しい。
    幽霊を全く信じなくて、とんでもな呪いを受けちゃってる連助もあいかわらずw
    冒頭、麻四郎と千右衛門が会ったあの経緯は案の定だったわー。ま、かなりバレバレだったから。
    麻四郎の身の振り方にも決着がついて、皆塵堂は、きっと引き続き曰く付きのあれこれが集まる、と。
    どんなものが集まるか楽しみ。
    峰吉はメンタル強すぎて人間離れしたあの主従は、何があってもぶれないから。
    さて、お次はどんなことが起こるかな。

  • 完結!だと思っていたらシレッと再会していたらしい。このシリーズは何度か読み直しているので嬉しいな。今回の主人公はいたって平凡な麻四郎。今までのように幽霊は出てくるのにその背景があまり説明されないまま進んでいくな〜と思っていたら、最後にそう言うことかとなった。主人公が平凡だからかこれまでに派手さがないかなーという感じを受けた。

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著者プロフィール

1972年、東京都生まれ。明治大学卒業。2008年に『掘割で笑う女 浪人左門あやかし指南』で第38回メフィスト賞を受賞し、デビュー。怪談と絡めた時代ミステリーを独特のユーモアを交えて描く。『古道具屋 皆塵堂』シリーズに続いて『溝猫長屋 祠之怪』シリーズも人気に。他の著書に『ばけたま長屋』『悪霊じいちゃん風雲録』などがある。

「2023年 『攫い鬼 怪談飯屋古狸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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