新しい声を聞くぼくたち

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065277423

作品紹介・あらすじ

フェミニズムを前に、男性はただ反省しなければいけないのだろうか。
従来のままのマチズモを前面に出すことも、また「性差にとらわれない」と強弁することも難しい中、多様な声を前に、男性はどのように生きていけばよいのか。
男性性の過去・現在・未来を、映画『ターミネーター』『マッドマックス』、漫画『鬼滅の刃』『ブルーピリオド』、ジブリ作品等々、様々なコンテンツを例にとりながら、その複雑性を鮮やかに読み解く。階級、コミュ力、障害、ケア、育児を鍵にした丁寧な分析から見える課題と可能性が、男性性の考察と「僕たちの生き方」の新たな道を開く画期的論考。

【目次】
はじめに

第一部 僕らは何を憎んでいるのか
第一章 能力と傷──ポストフェミニズム時代の男性性
第二章 やつらと俺たち──階級と男性性
第三章 男性性のいくつかの生き残り戦略──助力者と多文化主義

第二部 男性性、コミュ力、障害、そしてクリップ
第四章 『もののけ姫』と障害者の時代
第五章 コミュ力時代の男たち
第六章 「これは私の吃音だ!」──「個性」としての障害と治癒なき主体というユートピア

第三部 ライフコースのクィア化、ケアする男性
第七章 母の息子のミソジニー、母の息子のフェミニズム
第八章 ぼくら、イクメン
第九章 老害と依存とケア、そしてクィアな老後の奪還

おわりに──ケアする社会へ

感想・レビュー・書評

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  • 前作で、今のポストフェミニズム時代がポピュラー・カルチャーの女性キャラクターにどう投影されたかを、斎藤環さんの「戦闘美少女」という言葉を用いつつ論じた著者(あれ以来、私は巷に溢れるアニメや漫画がその視点でしか見えなくなってしまった。そのようなキャラを嗜好しているのは男性なのではないかという疑問は拭えないが…)。

    では、男性は、男性キャラクターは、どのように描かれるようになったのかを論じたのが本書である。フェミニズムの問題とされていることのほとんどは実は「男性の(が?)問題」としたうえで、男性には、マジョリティである自分たちの加害性を自覚・反省する立場の者たちと、自分たちこそフェミニズムの被害者だと主張する者たちに分かれると指摘する。そして、ミソジニーの問題も取り上げつつ、ポピュラー・カルチャーの男性キャラクターは、マッチョな男性像から助力者としての男性像にシフトしつつあるという。

    本書で扱われる主な作品は以下の通り。
    『怪獣8号』『ジョーカー』『ヒックとドラゴン』『アナと雪の女王』『もののけ姫』『風の谷のナウシカ』『Beasters』『鬼滅の刃』『恋愛小説家』『英国王のスピーチ』『そして父になる』『わたしは、ダニエル・ブレイク』『家族を想うとき』『クレイマー・クレイマー』『きのう何食べた?』…。

    前作同様、表紙と取り上げる作品群とは裏腹に、かなり骨太な論考が展開される。やはり作品の選び方は難しいなと感じる。全てを網羅できない以上、恣意的にらならざるを得ない。障害者と労働に関する記載など、あまり頷けない部分もあった。それでもしかし、大いに学ぶところがあった。

  • 男性にとってのフェミニズム・ミソジニー論。
    本書を読むには自分の知識が足りないと感じたが、それでも興味深い視点とポイントが満載で、面白く読んだ。

  • 書店で見かけたのだったか、どこかの書評で気になったのだったか。ひとくくりにしちゃいけないのかもしれないけど、いわゆるジェンダー論。色んな観点から繰り返し触れて、少しずつでも自分のマチズモを削り取っていけたら、と。
    参考資料の中で気になったのは以下。

    映画 ジョーカー
    漫画 家政夫のナギサさん
     キッズファイヤー ドットコム

  • ちょっと難しい。けど興味ある分野。アスカは説明不要のキャラなんだな。よかったエヴァ見といて。漫画と映画の解説になってきた。ほとんどが映画や小説、マンガなどの事例を引っ張ってきていろいろ述べているのだが、知らない話をまず知るところから始めなきゃならない、で、そこから著者の理論を認識しなきゃならない、2度手間になっちゃうからちょっと疲れる。

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  • <2023年度男女共同参画推進センター推薦図書>
    ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC14821535

  • フェミニズム論の立場から映画、漫画などサブカルチャーを評論する。面白いのは、そこから推測されるような、サブカルチャーに現れるミソジニー的傾向を明らかにする、わけではないことだと思う。むしろ、本書の主眼は、現代的な価値観の中で望ましいとされるケアする男性、イクメン的男性が、アッパーミドルの価値観=ネオリベラリズムと結びついているのではないかという問題提起にあるのだと思う。もちろんそういったフェミニズム的な価値観を否定するわけではなく、ポストフェミニズム的な状況からこぼれおちるものがミソジニーに結びついてしまう現状があることで議論を一歩進めている。障害者の負う障害が「個性」とみられることで障害者への支援が削減され、働ける障害者と働けない障害者の間での区別がなされるようになるという議論も背景にあるというのもはっとさせられる。ただ、当然ながらフェミニズム以前に戻ればよいという話ではなくその次を見据えてどうしたらという点については、自分の理解不足もあって見通せていないのではないか、とも思ってしまった。

  • 差別や抑圧の解消を目指す言説が「新自由主義的な罠」に絡め取られがちなことに警鐘を鳴らす。そのために「脱構築」を繰り返し、良い意味でも悪い意味でも「めんどくさい」議論になっている。「男性性」の描かれ方を多くの小説・映画・漫画等の物語分析を通して論じている。ただ、知らない作品も多く、知っている作品でも詳細は覚えていないものが多く、この本を頼りにそれらを見返す余裕とエネルギーがあるとよいのだろうが、とは思う。

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著者プロフィール

【著者略歴】
河野真太郎(コウノシンタロウ)

1974年、山口県生まれ。専修大学国際コミュニケーション学部教授。専門は英文学とカルチュラル・スタディーズ。著書に『増補 戦う姫、働く少女』(ちくま文庫)、『新しい声を聞くぼくたち』(講談社)、『この自由な世界と私たちの帰る場所』(青土社)など。

「2023年 『はたらく物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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