言葉の展望台

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065283455

作品紹介・あらすじ

いま、あなたとの会話で起きたことは、いったい何だろう?

マンスプレイニング、コミュニケーション的暴力、会話の引き出し、言語的なポリティクス、アイデンティティと一人称、人々をつなげる言葉、誠実な謝罪と不誠実な謝罪……。難しくて切実で面白い「言葉とコミュニケーション」を、「哲学」と「私」のあいだのリアルな言葉で綴るエッセイ。

【目次】

プロローグ コミュニケーション的暴力としての、意味の占有

そういうわけなので、呼ばなくても構いません
ちょっとした言葉に透けて見えるもの
張り紙の駆け引き、そしてマンスプレイニング
言葉の空白地帯
すだちかレモンか
哲学と私のあいだで
会話の引き出し
「私」のいない言葉
心にない言葉
大きな傘の下で会いましょう
謝罪の懐疑論
ブラックホールと扉

感想・レビュー・書評

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  • 言葉の持つ両義性(どころが多義性)は私も好物なので、イルカさんや地球っこさんのレビューで知らさせれて本書を手に取った。

    1番読み応えあったのはプロローグ「コミニュケーション的暴力としての意味の占有」なのだけど、それは地球っこさんが紹介しているので、その他の「気づき」について書く。

    私が言葉に敏感になるのは、多くは二つの場面。ひとつは、政治的言語である。もうひとつは、映画や小説で使われる言葉である。

    政治的言語から。
    吉村大阪知事の「ガラスの天井」誤用発言。政治的公の場でのLGBTQ+の人々への差別発言。誠実な謝罪とはどういうものか?等の考察が興味深い。

    多くの場合、「公」は力的には私たちよりも上だ。認識のすれ違いも、影響力があることから問題を発生させる。

    ビックリしたのは、トランスジェンダーの著者が、差別発言の正否もわかり、経験も積んでいるのに、それについて考え始めた途端に帰りの電車で涙ぐんでしまったということである。慣れたはずなのに、シュミレートすると過去の辛さが蘇ってしまい、子供の様に泣いてしまったらしい。差別発言のもたらす影響に、まだ私は想像力が不足しているのかもしれない。

    「誠実な謝罪」だとわかるのは、ホントにつくづく難しい。いや、政治家の謝罪はわかりやすいですよ。彼らの謝罪は悉く誠実ではない、という意味ではわかりやすい。でも例えば(最近のニュースを観て)子供を死なせてしまった母親の裁判所での謝罪というのは、非常にわかりにくかった。

    是非とも三木さんに、安倍語録のひとつひとつを、哲学的に分析して、一つの本をとして公刊してもらいたい。きっと売れると思う。

    「マンスプレイニング」という哲学用語も紹介される。私的に訳せば「マウント取り」。相手が無知であるということを前提として話される説明、とのことだが、私の作品批評がそれにならないだろうか?と自問する。私は作品は政治的発言と同じ公のものだと思っているから、陰口と違って作者が目の前にいなくても悪口は言えると思っている。辛口に批判する時には必ず根拠を上げてするようにしている。でも、そういう批判をすると、離れていく人もいるようだ。私は一方的に批判しているつもりはない。聞いている人に反論してもらいたいと思っている。でも、そもそも相手がそれを言えないような空気感を感じていたら‥‥等々いろいろ考えた。


    ドラマの台詞として。
    あるドラマの台詞のやりとりを著者は例示する。2人は、実は言葉と気持ちは正反対のことを言い合っている、という例である。数日前、映画「キングメーカー大統領を作った男」で、全く同じような台詞のやりとりがあったのを観た。わかりやすく書こうと思ったけど、重大なネタバレになるので省略します。ともかく、これこそ映画だと思った。(俳優の演技力は必要だけれども)気持ちとは裏腹の台詞のやりとりがあった方が、間違いなく名作に近づくだろう。

    反対に全く同じ台詞を繰り返すのに、毎回意味が違うということも起こるという。この前「ちょこっと京都に住んでみた」というドラマ(木村文乃主演Amazonプライム)を観た時に、近藤正臣が「知らんけど」という台詞を毎回言うのだけど、意味が少しづつズレていった。

    言葉は言葉だけでは伝わらない。
    力関係、場面設定、それぞれの歴史、等々が関係する。

    著者は、本書の中で、まるで時代劇の決め台詞のように「仮にも言語とコミニュケーションの哲学者を名乗る身だ」と言って、哲学的意見を開陳する。そして、‥‥ここをもっと深掘りすれば、現代の哲学界に新しい光を当てられるかもしれない、というような意味のことをしばしば書いている。実は、それが正直鬱陶しかった。一般読者を対象にするエッセイとしては、そういう哲学者としての野心は、少なくとも私には要らない。‥‥最後だけ辛口にしてみました。

    • kuma0504さん
      いるかさん、こんにちは♪
      良かった、読書済みの方から好意的な感想聞けて。
      辛口批評すると、
      「偉っそうに!」と思う人がいるのではないかと、時...
      いるかさん、こんにちは♪
      良かった、読書済みの方から好意的な感想聞けて。
      辛口批評すると、
      「偉っそうに!」と思う人がいるのではないかと、時にはビクついているんです。

      関係ないレビューも受け入れてくださりありがとうございます♪
      2022/09/14
    • 地球っこさん
      kuma0504さん、こんばんは☆

      私はプロローグを読んだだけで頭フル回転でした。
      哲学的な思考の仕方って疲れました……

      吉村大阪知事の...
      kuma0504さん、こんばんは☆

      私はプロローグを読んだだけで頭フル回転でした。
      哲学的な思考の仕方って疲れました……

      吉村大阪知事の誤用発言のことも、とても考えさせられたのでレビューに載せたかったのですけど、プロローグだけで精一杯で諦めちゃいました。
      でも政治的言語に敏感なkumaさんのレビューを読んで、私は「公」に対してまだまだ甘いよなぁと思いました。
      2022/09/14
    • kuma0504さん
      地球っこさん、こんばんは♪

      この本に関しては、一つのテーマについてあれこれと丁寧な感想を書くことの方があるべきレビューだと思います。

      私...
      地球っこさん、こんばんは♪

      この本に関しては、一つのテーマについてあれこれと丁寧な感想を書くことの方があるべきレビューだと思います。

      私は貧乏症なので、付箋紙つけたところ出来るだけ全部言及しておこうと思って簡単な感想を書いて次に行きました(^_^;)。

      私は小学生の時から「陰口だけは言うまい、陰口だけは言うまい‥‥」と自分の言葉に縛りをかけてきたので、結局それは面と向かって悪口も言うこともできないと言う結果をもたらし、そのストレスが、政治や作品という「公」への批判というところに向かったのだと自己分析(^^;)しています。
      2022/09/14
  • いま、あなたとの会話で起きたことは、いったい何だろう?

    哲学者・三木那由他さんの「言葉とコミュニケーション」についてのエッセイ。
    哲学的な研究から取り上げられる難しくてややこしい議論的なものではない。綴られるのは三木さんが日々の暮らしのなかで経験し、「これはいったい何だろう」と思った言葉やコミュニケーションについてだ。そうした言葉やコミュニケーションの正体を探ってみたり、そうしたものがもたらす結果について考えを巡らせたりする。あくまで研究者としての三木さんはお手伝い。
    ここにある「言葉とコミュニケーション」は、「私」と「あなた」の間で生み出されるもの、私たちの身近なものなのだ。

    「私が何かを語り、あなたがそれを受け止める。あなたが何かを語り返し、私もまたそれを受け止める。そんな、当たり前に日々おこなっていることが、とても不思議なことに思えていた。私とあなたは、なぜ通じ合えるのだろう? あるいは、なぜ通じ合えないのだろう? 通じ合えたとき、私とあなたのあいだで何が生まれるのだろう? あなたに語り掛け、それを受け止められる前の私と、あとの私で、どう違っているのだろう? あなたは、以前のあなたとどう違っているのだろう?」(P9)
    はて、いきなり〈プロローグ〉の第一段落で私は立ち止まる。そんなこと今までしっかりと考えたことなかったぞ。何が生まれる? どう違う? 私はどう変わる?

    けれども、この部分は分かる気がする。
    「コミュニケーションは、確かに素晴らしいものであり得る。けれどそれだけではない。言葉による支配も、侮蔑も、否定も、コミュニケーションのなかで起きる。つまりは差別や暴力も、コミュニケーションにおいてしか起こらないわけではないが、コミュニケーションは少なくともそれらが現れるひとつの舞台だ。」(P10)
    だって、モラハラ、セクハラ、マタハラ、パワハラ……、そんな言葉が日常を飛び交う現代だもの。あ、それと「あなたのため……」「あなたを思って……」という言葉も曲者だ。

    まず著者はプロローグで「コミュニケーション的暴力」について語る。
    小説『魯肉飯のさえずり』(作・温又柔)の登場人物、桃嘉と一見すると優しく、好ましい人柄である桃嘉の夫・聖司のやり取りから、「コミュニケーション的暴力」のひとつの典型を取り上げるのだ。

    あるとき桃嘉が自立を求め、聖司に「甘えてたくない」から仕事を探したいと切り出す。しかし桃嘉も含めた周囲の女性を自立していない“女の子”と見ている彼は、彼女が“自分の稼ぎを心配しているからだ”と理解し、「奥さんと子どものために稼ぐのは、男にとってあたりまえのことなんだからさ。それに俺は、桃嘉に甘えられるのが嬉しいんだよ」と答えるのだ。
    また桃嘉が性行為そのものを「いや」と拒絶したときには、聖司にとってその「いや」は膣内での射精の拒否へと変質させられる。

    桃嘉の言いたかったことが聖司には伝わらない。だが問題は伝わらないこと、そのものではない。
    問題は「伝わらないときに、誰がその場の支配者となり、誰が会話の成り行きを決めるか」なのだ、と著書はいう。そこにコミュニケーション的暴力が立ち現れるのだ。

    そもそもコミュニケーションとは何なのだろう?
    著者は「誰かが何かをしたり言ったりすることで何かを意味し、別の誰かがそれを理解したときに成立するもの、それを「コミュニケーション」と呼ぶ」(P14)という。
    では、「誰かが何かをしたり、言ったりすることで何かを意味する」とはどういうことだろう。
    哲学者ポール・グライスは「何かを意味するとは、要するに相手にその何かを信じさせようのいう意図のもとで何かをしたり、言ったりすることだ」(P15 )と考える。「ある特別な意図のもとで何かをしたり、言ったりすることであり、その意図の中身を見ればそのひとが何を意味しているかがわかる」(P15)発想なのだ。

    しかしながら著者はそういった考えかたはうまくいかないと論じる。
    著者はその代わり「コミュニケーションというのは、いわば約束をすることなのだ」というのだ。
    「コミュニケーションとはある種の約束を生み出すことである。そして約束は一方の力によって、不均衡な仕方で、他方には望まぬ仕方で結ばれることもある。だとすれば、コミュニケーションにおいても、ひとはときに別のひとの力に屈し、自分が意味するつもりのなかったことを意味したことになり、それによって生まれた約束に縛りつけられることもあり得る、ということになる。」(P21)

    それは「話し手がその振る舞いや発言で何かを意味しようとしても、聞き手の力によって別の何かを意味したことにされ、その別の何かに従って約束が結ばれてしまう。」P18
    これを著者は聞き手による「意味の占有」と呼び、桃嘉の状況がまさにそれなのである。

    濃い。まだプロローグの時点で、私の頭のなかはフル回転だ。
    これが哲学的な考え方なのか。
    初めて知る哲学者の名前や、とことんこだわり(くどくどと言うのか……)本質を洞察する、そんな考え方に、哲学とはこういうものかと刺激を受ける。
    私にとっての哲学的な考え方は、こうだ。
    たとえば、今まで相手に言いたいことが伝わらずにモヤモヤしたこと、逆に相手へ勝手な思い込みでアドバイス的なことをしてしまったこと(それこそ「あなたのことを思って……」だ)。それらの「経験」が、完成した1,000ピースのパズルだとすると、哲学とはその完成したパズルからピースを一欠片ずつ剥がしていき、裏返しにしたピースを再度組み立てなおし新しい絵を完成させる、そんなイメージなのだ(あぁ、しんど……)。

    マンスプレイニング、コミュニケーション的暴力、言語的なポリティクス、アイデンティティと一人称……
    難しい言葉の数々ではあるけれど、それらのテーマに初めて接する私にも、三木さんの文章は根気強くとことん付き合ってくれる。
    ときには私も大好きな少年漫画やゲームなどを引き合いに出して語られるテーマもあって、まさかの胸キュンありだ。

    三木さんはトランスジェンダーだとエッセイ(初出『群像』での連載)途中でカムアウトされるのだけど、ご自身の体験も交えながら性差別や性的マイノリティへの差別について、言葉とコミュニケーションの観点から語られる。
    私は知ってるつもりになっていたこと、自分の無知さに愕然とした。なかでも「アウティング」について、「カミングアウト」の使われ方、それらの言葉が持つ重要な意味というものが、今の社会で変質していくことへの危惧についてはハッとしたし、これではダメだなと強く思った。

    難しくて面白い。なんとも刺激的なテーマだった。これからも「言葉」についてもっと深く考えたいし、勉強したい。もっと自分の世界を広げていきたい。

    • 地球っこさん
      ハイジさん、こんにちは♪

      言葉をつかうことって、気にしていないときは何気なく通りすぎていくのだけど、一旦気になってしまうと、深くて濃くて、...
      ハイジさん、こんにちは♪

      言葉をつかうことって、気にしていないときは何気なく通りすぎていくのだけど、一旦気になってしまうと、深くて濃くて、自分の発した言葉に、ちょっと怖さを感じるときもあります。
      そう、ハイジさんのおっしゃる「責任のようなものがついて回る……」って感じです。

      この本がハイジさんにとって何らかのヒントになってくれれば嬉しいなと思います(*^-^*)

      読み終えて、私は著者の三木さんの言葉に向き合う姿勢に信頼と、そして三木さんのことが大好きになりました。

      そのひとつのきっかけは、参照文献の一覧に添えられた文章なんです。

      そのなかの著者の一人が、悪質なセクシュアル・ハラスメントが報告されていると注意書きがされているんです。

      それだけでも人に対して細やかな気遣いをされる方だなぁと感心したのですが、続けて
      「経歴等の情報を得ようとしたらその具体的な内容が目に入る可能性がありますので、調べる際にはその点にお気を付けください」
      と記されてるんですよ。

      今まで参考文献の欄に、こんなにも読者に対して、著者さんの言葉で細やかな配慮がなされたものは見たことがなくて(私が気づかなかっただけかもしれませんが……)。

      そのひと言に優しくて繊細で、そして信頼できる方だなぁと思ったんです。
      ハイジさんに、自信を持っておすすめしたい著者さんです。ぜひぜひ♪

      それにしても私って移り気というか、興味あるものがあっちこっちに飛んでいってますよね 笑

      たぶん、本の見つけ方は皆さんと変わらないと思います。
      新刊は、ブクログアプリの「おすすめ新刊情報」や新聞の書評欄とか?

      既存の本は、ブックガイドや参考文献、もちろんブク友さんの本棚など。
      大きな書店があったら、ぐるぐる回りながら探せるのだけど、残念ながらないので、キーワードをアマゾンなどに入れて検索します。

      うーん、最終的にはカンかな 笑
      ビビビッときたものです♡
      2022/08/11
    • ハイジさん
      地球っこさん
      お返事ありがとうございます!
      三木さんという方を全く存じ上げず…
      参考にさせていただきます…

      移り気なんてとんでもない
      好奇...
      地球っこさん
      お返事ありがとうございます!
      三木さんという方を全く存じ上げず…
      参考にさせていただきます…

      移り気なんてとんでもない
      好奇心旺盛といいます(笑)

      今後も地球っこさんのセレクトから目が離せません

      知らない世界を見せていただけるのでとても楽しみです(^ ^)
      2022/08/11
    • 地球っこさん
      ハイジさん

      私も三木さん、初めての著者さんです。
      あはは、とうとう哲学の道にまで足を踏み入れてしまいました……

      私の方こそハイジさんのレ...
      ハイジさん

      私も三木さん、初めての著者さんです。
      あはは、とうとう哲学の道にまで足を踏み入れてしまいました……

      私の方こそハイジさんのレビュー、いつも楽しみにしてます。文豪関係や科学関係など、ハイジさんのレビューのおかげで読んだつもりになっております( *´艸`)
      ありがとうございます♪
      2022/08/11
  • 地球っこさんのレビューを見せていただき、是非読んでみたいと思った一冊。

    すごい。。。
    言葉、会話を分析・哲学するって。
    こんな分野があるなんて、考えたこともなかった。
    最初は頭をフル回転させながら、なんとか食いついていくかんじだったのが、カムアウトされたところぐらいから、すごく作者の意図することが理解出来るようになった。
    そもそも一般向けに分りやすくエッセイと解説の間ぐらい というのがコンセプト。
    しかし この人たちの頭の中はどうなっているのだろう。
    会話を哲学するって・・・

    次に読もうと思っている「会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション 」は準備済み。
    次も楽しみです。。

    • いるかさん
      地球っこさん こんにちは。

      地球っこさんのレビューがいつも素晴らしくって、どの本も読んでみたくなります。
      この本も読んで本当によかっ...
      地球っこさん こんにちは。

      地球っこさんのレビューがいつも素晴らしくって、どの本も読んでみたくなります。
      この本も読んで本当によかった。
      考え方がこれまでと少し変わってしまいました。
      影響力 大です~。

      ホントに哲学的考え方って、まわりくどくって・・・
      でもそうでないと、真相を語っていけないのでしょうね。
      きらいではないのですが、疲れますね。

      私も地球っこさんと共読本が増えてうれしいです。
      ありがとうございます。

      さて、気合いをいれて次の「会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション 」にすすみたいと思います。
      2022/08/30
    • 地球っこさん
      この本に重なる部分は「あ、あのことね!」と気づけると思いますよ~
      レビュー楽しみにしてます(’-’*)♪
      この本に重なる部分は「あ、あのことね!」と気づけると思いますよ~
      レビュー楽しみにしてます(’-’*)♪
      2022/08/30
    • いるかさん
      はーい ありがとうございます。

      「会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション 」は難しそうなので、準備運動ですね。
      気合...
      はーい ありがとうございます。

      「会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション 」は難しそうなので、準備運動ですね。
      気合い 入れていきます。。
      2022/08/30
  • 著者の日常から、そこで起きた疑問や喜怒哀楽を言語哲学を通して"気持ち"の謎を解明していく。
    哲学は難しそうと思いつつ理解のための道具(補助輪のイメージ)として使っていくエッセイ。
    もう「ただの言葉」とは言えない。

    「謝罪の懐疑論」が今の悩み(反省しているのかどうかわからない人を相手にする)を理解するのに役立った。

    言語哲学を通して見た日常の中にある疑問、言葉は「言っただけ」ではなく発話したこと自体にも意味がある。
    言霊(言うことにより願望として捉えられる)とかを連想するけれども、霊的なモノではなく哲学の視点で解説してくれて面白い。

    著者の疑問、自身の気持ちについて解き明かそうとする。日々、思い出せないくらい流してしまっている疑問に対して向き合える気持ちになる。
    参考となった本も読みたい、もうちょっと知りたくなる本。

  • 「群像」10月号――三木那由他氏連載を読んで|植月 のぞみ|note(2021年9月9日)
    https://note.com/nozomi_uetsuki/n/n3568eccb6380

    三木 那由他 (Nayuta Miki) - マイポータル - researchmap
    https://researchmap.jp/nayutamiki/

    言葉の展望台 三木 那由他(著/文) - 講談社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065283455

  • 何気ない言葉のやりとりを楽しんだり、ときに深く傷ついたりする「日常の私」と、言葉やコミュニケーションを専門に研究する「哲学者の私」。
    ふたつの視点を併せ持つ著者が、日々の生活のなかで感じた疑問やモヤモヤの正体を探っていく。
    友人との会話やアニメ・ゲームといったごく身近な事柄から哲学的思索が広がっていくので、自分のことと照らし合わせて実感しながら読み進められた。

    ・「意味の占有」という現象
    わたしたちの日常では、言葉の意味は話し手ではなく場の支配者に決められてしまう。
    そのためマイノリティの人が自分の意図通りに言葉を伝えるのはきわめて困難。

    ・誠実な謝罪とは
    「ご不快な思いをさせてしまい…」という謝罪が不誠実に見えるのは、具体的に今後どういった行為を避け、どのように行動していくかの約束がなされていないから。
    曖昧な物言いにより、「これより具体的なことはわかりません」と暗に伝えることになっている。

  • 哲学系の本は何度も挫折している私だけど
    この本は非常にわかりやすかった。

    ひらがなが多いということと
    いろいろな例を出して説明してくれること
    漫画とかゲームとか、親しみやすいです。

    ただ最後まで読むと、エッセイ的に書いたのだとのこと。
    なあんだ、だからよく理解できたんだ。

    そして、連載中にカムアウトという
    ご本人にとって記念になる本に?

    とても面白かったので、このあとも
    三木那由他さんの本を読みたいです。

  • 先に読んだ本とジャンルが似ていたのか、「マンスプレイニング」をインプットした。
    なんとなく、痒い。
    レディがファーストされることとの違いを考えてしまう。痒い。

    「セクシュアル・ハラスメント」の話題では「ともかくまずは言葉をつくり、たとえそれが広い社会での蓄積に含められずとも、せめてその言葉を必要とする者たちのあいだで共有される、ということが重要なのかもしれない」

    しかし、一方で「松岡さんは、『アウティング』という言葉の意味がそれと同様の仕方で変質し、それによってその言葉に込められているはずのマイノリティの経験がその言葉によって表せなくなってしまうことを危惧していたのだろう」ともある。

    言葉がつくられるとは、他との差別化をはかることなんだろうか。ある意味で、汎用性を持っていくということだとは言えないだろうか。
    現に、私の目の前には、数々のハラスメントが見え、ジェンダーギャップが見えてくる(ように感じている)。
    うまく言えないけれど、この、見えてくるという次元は、この言葉を必要とする人にとって、どんな変化をもたらしたのだろうか。いや、変化はもたらさなかった?迷惑でしかない?

    そして、汎用性を持つということは、原義の持つ繊細さが失われることでもある。
    言葉にその次はあるんだろうか。
    使い古されて失われるのを待つだけなんだろうか。

    綴りながら、自分はどんな意識を持っているんだろうと、少し悩む。
    誰かを傷付けているかもしれない。
    でも、誰も傷付けないこともまた、難しい。

  • 分かりやすくて読み始めてから二、三日で読めてしまった。

    哲学の入門書と言えば『ソフィーの世界』があるが、それと同じくらい分かりやすくて勉強になった。でも、哲学は哲学でも言語哲学について。分野は狭いが深い。

    今回はLGBTの当事者としての言葉を哲学していたが、次巻の『会話を哲学する』は恋愛の話かな??私がスペイン語の検定試験を受ける五月以降に読む本として楽しみにしておこう。

    さっ、スペイン語勉強しよ!

    • 松子さん
      こんにちは(^^)
      スペイン語の勉強されてる方なんだなぁ、凄いなぁと思いながらレビュー読んでます。検定頑張ってください。応援しています♪
      こんにちは(^^)
      スペイン語の勉強されてる方なんだなぁ、凄いなぁと思いながらレビュー読んでます。検定頑張ってください。応援しています♪
      2023/02/21
    • Yutaさん
      応援ありがとうございます!

      松子さんは英語頑張っておられる方だなぁ、私も語学頑張らなあかんなぁと思いながらいつもレビュー読んでます!
      応援ありがとうございます!

      松子さんは英語頑張っておられる方だなぁ、私も語学頑張らなあかんなぁと思いながらいつもレビュー読んでます!
      2023/02/21
    • 松子さん
      くぅぅ、語学関係で触発しあえるブク友さんができて嬉しいです!どうぞお願いいたします(^^)
      くぅぅ、語学関係で触発しあえるブク友さんができて嬉しいです!どうぞお願いいたします(^^)
      2023/02/21
  • 昔、男社会の風潮がまだ残る会社で、会議中こんな話をされたことがある。
    「これ専務に話通すのムズイなー。〇〇(昔うちの部署にいた女性)がプレゼンすると、専務のOK大体貰えたからな。〇〇(部署で唯一女の私)がいってみない?」
    と、加わってもないプロジェクトの話をふられた。
    彼らからしても勿論それは冗談で、本当にプレゼン頼まれた訳じゃなかった。
    なんだけど、不愉快だったなあ。そういうことを言ってしまえる無神経さに、無神経でいることが許容されてる組織の鈍感さに、不愉快だったなあ。
    その女性が専務に話を通せたのは、彼女が優秀だったからじゃないのか?"女だから"通ったと思ってるのなら、その女性にとても失礼だなと思ってムカついた。

    そんなことを、この本を読みながら思い出していた。
    ーーーーーーーーーーーーーーー
    「セクシュアル・ハラスメント」という言葉がなく、それゆえ「その行為はセクシュアル・ハラスメントだからやめてほしい」とは語れないが、代わりに同じことを「その行為は不愉快だからやめてほしい」と語ることで伝えようとしたとしよう。このとき、「不愉快」という言葉を選んではいても、そのひとが本当に言いたいのは自身の心理に関することではなく、むしろ社会的な不正に関わる振る舞いが生じているということである。だがたとえそのひとがそうしたことを意図して発言をしていたとしても、この発言が単なる心情の表明と理解され、しかもその理解が発言のなされた場で共有され、そのひとは単に自分の心理に関する何事かを言っていたひととしてそれ以降扱われるということは、容易に起こりうる。そうした場でたとえ「単なる心情の問題ではない」と訴えたとしても、「ヒステリック」で「感情的」で「不合理」な者として片付けられるのが落ちだろう。
    ーーーーーーーーーーーーーーー
    そういえば、そんなことを考えていたな。
    この組織を変えるには、今の発言が無神経だということを皆が認識しなきゃいけない。その為には私が声をあげればいい。簡単なはずのこと。
    でも、相手が無神経なだけじゃなく思慮もないのなら、声をあげたところで「フェミニスト」とか「面倒くさい女」とか思われてもっと生きにくくなるんじゃないかって思った。私は彼らのことを、どれくらいその点について感受性豊かか分からなかった。だから未だに言ってない。
    ただ、言っていないから、それはその組織では未だ許容範囲のものとして許されてるんだ、と思う。
    私は別の、そんな言動が許容されない、豊かな組織を知っているので、そんな井の中の蛙状態の人たちのことをどう思えばいいのか、未だ分からないでいる。

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著者プロフィール

1985年、神奈川県生まれ。2013年、京都大学大学院文学研究科博士課程指導認定退学。2015年、博士(文学)。現在、大阪大学大学院人文学研究科講師。著書に『話し手の意味の心理性と公共性』『グライス 理性の哲学』、共著に『シリーズ新・心の哲学1 認知篇』、共訳書にブランダム『プラグマティズムはどこから来て、どこへ行くのか』がある。

「2022年 『言葉の展望台』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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