ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065286050

作品紹介・あらすじ

年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70代男性の就業率は45%、80代就業者の約9割が自宅近くで働く……知られざる定年後の「仕事の実態」とは?

漠然とした不安を乗り越え、豊かで自由に生きるにはどうすればいいのか。豊富なデータと事例から見えてきたのは、「小さな仕事」に従事する人が増え、多くの人が仕事に満足しているという「幸せな定年後の生活」だった。日本社会を救うのは、「小さな仕事」だ!

【目次】
第1部 定年後の仕事「15の事実」
事実1 年収は300万円以下が大半
事実2 生活費は月30万円弱まで低下する
事実3 稼ぐべき額は月60万円から月10万円に
事実4 減少する退職金、増加する早期退職
事実5 純貯蓄の中央値は1500万円
事実6 70歳男性就業率は45.7%、働くことは「当たり前」
事実7 高齢化する企業、60代管理職はごく少数
事実8 多数派を占める非正規とフリーランス
事実9 厳しい50代の転職市場、転職しても賃金は減少
事実10 デスクワークから現場仕事へ
事実11 60代から能力の低下を認識する
事実12 仕事の負荷が下がり、ストレスから解放される
事実13 50代で就労観は一変する
事実14 6割が仕事に満足、幸せな定年後の生活
事実15 経済とは「小さな仕事の積み重ね」である

第2部 「小さな仕事」に確かな意義を感じるまで
事例1 再就職先で一プレイヤーとして活躍
事例2 週末勤務で会社を支える
事例3 包丁研ぎ職人を目指して独立
事例4 近所の学校で補助教員として働く
事例5 同僚、患者とのやり取りを楽しむ
事例6 幕僚幹部から看護師寮の管理人に
事例7 仕事に趣味に、人生を謳歌する

第3部 「小さな仕事」の積み上げ経済
1.定年後も働き続ける人に必要なこと
2.高齢社員の人事管理をどう設計するか
3.労働供給制約時代における経済社会のあり方

感想・レビュー・書評

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  • タイトルに惹かれて手にとった本
    『ほんとうの定年後』

    現役世代の殆どが、定年後の暮らしに不安を感じているのが、今の日本の実態だろう。

    先日某番組で、とある教授が「人間は他の動物と違って、神様の想定外に長生きしてるけど、生体機能はまたまだ進歩の過程だから・・・」というなかなか興味深い話をされていた。
    医学やテクノロジーの進歩、生活環境の改善や人間の抵抗力や知識の向上といった凡ゆる側面が、長生きに影響しているのは言うまでも無いが、誰もが案じるのが健康とお金の寿命だろう。

    本作では、数値化されたデータ分析や統計によって、具体的かつ現実的に、定年後の生き方を示している。
    読後は、将来の漠然とした不安が少し軽くなり、将来を過度に悲観することなく、現実と向き合おうと思えた。
    特に、老後が心配な方にオススメしたいが、若い世代が知識として読んでおくのもオススメ。

    そして膨大なデータ量と、それに基づく分析結果、各種グラフの多さから、読み手に訴えかける作者の熱量を感じた。定年まで未だ先の長い作者が、定年を意識し始めた世代に向けてあらゆる手段で訴えかけてくれる・・・
    日本は改めて素敵な国だなぁと嬉しくなった。

  • いやぁ、いい本でした。良書。

    ・70歳男性就業率は45.7%、働くことは「当たり前」

    “人生100年時代”
    “生涯現役時代”
    “労働供給制約時代”
    “少子高齢化”

    このキーワードに対する、一つの回答だと思った。

    本書の内容を、簡潔にまとめると、以下。

    ******

    定年後も働かないとやっていけないよ。
    とはいっても、年金にプラス5~10万くらいの月収、
    そのような“小さな仕事”でかまわない。

    しかも、多くの定年後の労働者は、その“小さな仕事”に満足しているというデータがある。ストレスのたまらない“小さな仕事”でかまわない。

    また、“小さな仕事”は、個人だけでなく、社会にとっても意味がある。

    少子高齢化においては、労働者が足りなくなる。
    若者(労働者)が減り、高齢者(消費者)の割合が増える。
    定年後、働かないでいることは、労働者から単なる消費者にかわること。
    消費者に対して労働者が足りなくなる。特に地方においてはそれが顕著にあらわれる。

    これを解決させるには、
    外国人労働者の受け入れや、社会保障制度の充実に腐心するのではなく、
    定年後も働く人を増やすこと。
    そのためにも、社会は、“小さな仕事”の必要性を知り、リスペクトすること、働き方や給与を見直し、評価すること。何よりこれを、消費者側が受け入れること。

    ******

    ……と、ざっくりいうとこのような内容だったのですが、
    “定年”という言葉がタイトルにあるせいで、
    定年前の現役世代や若者が、本書を読むのを後回しにするかもしれない。

    それでは非常にもったいない。

    定年前に読んだほうがいい。絶対そのほうがいい。

    むしろ、定年してからこの本を読んでも遅い、価値が半減する。

    この本は将来の人生設計を考えるうえで、めちゃくちゃ参考になる。

    「10年後どうなりたいか?」と聞かれても、
    「え、それって毎年考えなきゃいけないじゃん。
    2024年は2034年のことを考えて、2025年になったら2035年のことを考えて……毎年考え続けることになるよね?」

    でも、「定年後、60歳以降、どうなりたいか?」、
    この問いかけだと、60歳という“定点”だから考えやすい。

    個人的にはそう思いました。


    ところで、この手の本って、定年後の実体験を交えて書いたり、
    実際に定年した人が書いているイメージがあったのですが、
    作者の年齢を知って驚いた。

    著者である坂本貴志さん、1985年生まれだそう。とても若い。

    いや、この年齢だからこそ、良いのかもしれない。
    定年前の、現役世代の目線にたって書いているからこそ、“定年前”の人に響くのだろう。


    にしても、こういう本って必須だよな、と思う。

    読んで損はないというか、読まないと損をする。

    あくまで統計データに基づいた本だから、すべての人には当てはまらない。
    個人差は絶対にある。だから、すべては鵜呑みにできない。

    しかし、自分の将来を考えたり、日本の社会を知るうえで、参考になることは間違いない。読んで良かったです。

  • 定年後の生活に工夫できるかと手にしましたが、想像と違い役所の統計の様な本でした。

    後半は、架空の7名を、性別・年齢・収入・雇用形態の設定からその変化を想定していくもの。

    参考程度に読むと良いでしょう。

  • 坂本 貴志
    1985年生まれ。リクルートワークス研究所研究員・アナリスト。一橋大学国際公共政策大学院公共経済専攻修了。厚生労働省にて社会保障制度の企画立案業務などに従事した後、内閣府で官庁エコノミストとして「経済財政白書」の執筆などを担当。その後三菱総合研究所エコノミストを経て、現職。著書に『統計で考える働き方の未来――高齢者が働き続ける国へ』(ちくま新書)がある。

  • 第一部は データを元に構成した15の事実
    定年後  年齢 生活費は下がる  能力 体力も低下する  非正規雇用 フリーランスの増加
    小さな仕事の積み重ね
    第2部は インタビューを元にした 実働実例
    第3部が著者の提言なのだろう

    仕事の定年って何なんだろう

  • 定年後の仕事のあり方について考える3部構成の本書。高齢化社会の現状について知りたくて読む。第一部は様々なエビデンスを示して丁寧に現状を解説してくれており信頼と好感を持った。
    第二部では自分自身が定年後の局面でどう振る舞うのかを考えながら読むことが出来た。会社、雇用者そして社会が上手く成り立つことを念頭に定年後の働き手が重要であり、それが自身にとっても有益であること、職業の選び方についても考える機会となり、幾分将来の不安を払拭してくれる本である。

  • 定年までまだ何十年かあるが、タイトルに惹かれ本を手に取った。定年後は小さな仕事でも周りの役に立つ仕事でやりがいを持って意欲的に働く事が大事だと思った。実際の経験者の章は参考になったし、興味深く読むことができた。

  • 小さな仕事に前向きな意義を見出すこと。
    心に留めておきます。

  • 私は今のところ、なるべく早く仕事を辞めたいと思っていたが、「自分にあった仕事なら、ありかな…」と少し思った。
    働き続けるとしても、辞めるにしても、前々から定年後を考えておく必要はある。

    日本社会のことを考えると、「小さな仕事」をする意義はあると思う。

  • 久々にいい書籍だった。
    分析、対応策とも納得できました。
    中小企業経営者の意識を変えていくのは難しいけど、やって行かなければいけない問題だと思います。

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著者プロフィール

1969年生まれ. 専攻, ドイツ文学. 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了. 博士(文学). 現在, 立教大学文学部教授.
主要著作:「崇高による自由の理念の救出と歴史哲学──シラーの三部作悲劇『ヴァレンシュタイン』」(2003), 「異界の系譜──ハウプトマンと鏡花」(2008),「ドイツ近代におけるイシス幻想について──シラー、ゲーテ、アレクサンダー・フォン・フンボルト」(2010),「『非物質的世界のひとつの巨大な総体』というトポス──キリスト教カバラ, 動物磁気, 集合的無意識」(2011), 『秘教的伝統とドイツ近代──ヘルメス, オルフェウス, ピュタゴラスノ文化史的変奏』(2014)ほか.

「2021年 『〈世界知〉の劇場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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