狙われた羊 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065298824

作品紹介・あらすじ

カルト宗教は、心を奪い、カネを奪い、家族を壊す!
カルト教団によるマインドコントロールの恐怖と、悪辣な集金システムを描いた名作フィクション、緊急文庫化!

最近は浮気調査ばかりしている探偵の牛島のもとに、奇妙な依頼が舞い込んできた。
「人さらいはやってもらえるんでしょうか?」
依頼人の息子は、突如連絡を絶ったのだという。どうやら、あやしげな団体に深入りしているらしい。

「厄介な仕事」と踏んだ牛島は当初依頼を断ったが、秘書の坂巻に説得されて調査を開始。すると、依頼人の息子は、近年様々な問題を起こしているカルト教団に入信していることが判明した――。

世間を騒がすカルト教団、そして家族を取り返すために戦う人々を描く!

感想・レビュー・書評

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  • 中村敦夫『狙われた羊』講談社文庫。

    著者の中村敦夫は『木枯し紋次郎』で主役を演じた有名な俳優で、作家やキャスター、ジャーナリストでも活躍しており、統一教会と揉めた過去を持つ。

    今現在、元首相の暗殺に端を発した政界と世間を騒がしているカルト宗教団体をテーマにした問題小説が、30年の時を経て文庫化。なかなかのリアリティ。30年前に統一教会のカルトとしての正体が暴露されていながら、何故に現在も存在しているのか……

    もっぱら浮気調査ばかりをしていた自由ヶ丘探偵社の探偵、牛島は依頼人から怪しげな団体に取り込まれた息子を奪還して欲しいと頼まれる。

    少しずつ調査を進め、団体の正体を知る牛島だったが……

    家族の病気や事故、様々な不幸に見舞われたり、悩みを抱える心の弱った人に巧みに近付き、洗脳した揚げ句に財産を奪い、自由も、人間の尊厳をも奪い取るカルト宗教団体。親が信者であれば、その子どもまでもが信者にさせられるという世襲の実態。

    30年前には明らかにカルト宗教団体というレッテルを貼られていた統一教会はいつの間にか名前を変えて、政治家と手を組んでいたことに世間は驚いた。しかも、現職の首相が統一教会の広告塔となり、他の多くの政治家も選挙のために統一教会と懇意にしていたというのだから全く驚く限りだ。

    与党である自民党は旧統一教会と手を組み、創価学会を基盤にする公明党と連立政権を構築している。つまり日本は知らぬ間にカルト宗教団体を背景にした政府に支配されていたということだ。

    与党が無駄に巨額の税金を遣い、その補填のために国民に増税や社会保障費の増額を負担させるところなどは、カルト宗教団体の集金システムと何ら変わりがないように思う。

    定価990円
    ★★★★

  • 祝文庫化!

    作家、キャスター、ジャーナリストとしても活躍した、 名優中村敦夫氏が描いた「カルトの真相」を緊急文庫化|今日のおすすめ|講談社BOOK倶楽部
    https://news.kodansha.co.jp/9505

    『狙われた羊』(中村 敦夫):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000370713

  • カルト教団によるマインドコントロールの恐怖を描きます。
    30年前の作品ですが、いまでも色褪せません。
    新興宗教によって行われている布教には、大なり小なり、このような方法が使われているでしょう。
    名前は変えてありますが、旧統一教会の原理や内実などが、詳細に書かれています。
    「なぜ人はこうもやすやすと操られるのか?」
    実は、簡単に騙されてしまうのが、私達なのです。

  • これはかなり面白かった。30年前の小説ということだが、今年のあの事件をきっかけにクローズアップされた宗教団体を扱っており、今回文庫化したようだ。詐欺集団としてのそのマインドコントロールの見事さはぞっとする。
    いま、世間では宗教二世の問題が取り上げられているが、この小説には、若い信者を取り巻く家族の苦悩が描写されている。自分がこの家族の立場に立ったら、どうするだろうか。自分がマインドコントロールされていたときに気づけるだろうか。
    色々深く考えてしまう良い小説だった。
    物語ならではの迫力があった。

  • カルト教団の手口を物語風に書き上げた、大変面白い小説であった。特に信者を作り上げるまでの洗脳のノウハウは今話題の統一協会のそれを感じることができた。

  •  著者中村敦夫は、言わずと知れた「木枯し紋次郎」だが、役者にとどまらず、ジャーナリスト、テレビキャスター 政治家等、経歴は多彩である。著者については、だいぶ前に評論「さらば、欲望の国」(2004年、近代文芸社新書)を読み、生きる姿勢、文章力とも私は高く評価していたが、この小説の存在は最近まで知らなかった。
     テーマは統一教会(作中では「国際キリスト敬礼協会」)。不倫調査、興信所の下請け等で食いつないでいる冴えない探偵牛島に、「人さらい」の依頼が来る。依頼人は水回り職人の松本で、妙な宗教団体に行ったまま戻らない息子を取り返してほしいという。金になりそうもないし、面倒なので、牛島は費用を過大に見積もり、一度は体良く追い返す。しかし、たった一人の社員、受付の坂巻よねに人情がないと非難されたこと、その後入ったラーメン屋から、偶然、外を歩いている松本を見かけてしまったことから、長年忘れていた感情がよみがえり、支払いは後々相談ということにし、仕事を引き受けてしまう。
     その後は、依頼人松本の息子の奪還を中心に、教団の勧誘の手口、洗脳の方法、教義のデタラメさ、信者の生活の様子や課されるノルマ、洗脳を解く過程などを巧みに織り込みながら、物語は展開していく。著者はフィクションと断っているが、教団に関する記述は有田芳生氏、浅見定雄氏らの著作に書かれていることと一致しており、深く調べ、正確を期して書いたことがうかがえる。娯楽小説としても、場面の展開が早く、登場人物が生き生きとしていて一気に読め、優れていると思う。
     特筆すべきは。この小説が1994年に発表されたことだろう。1992年、統一教会は合同結婚式や霊感商法でクローズアップされるものの、その後、有田芳生によれは「政治の力」で、統一教会に関する捜査、報道は、安倍晋三射殺事件が起こるまで、事実上封印される。これが「空白の30年」であるが、この小説はその空白の中で発表されている。私はそこに、この問題をそのままにしてはいけないという著者の強い思いを感じる。全国霊感商法対策弁護士連絡会の方々、有田芳生氏、鈴木エイト氏等、様々な圧力に屈せず、統一教会問題に取り組み続けた人々にと同様、私は著者に敬意を表する。
     安倍晋三氏が射殺され、空白の30年は一応終わりを見た。だが、教団で演説し、昔のアイドルもどきをそこへ連れて行った者、食口(信者)になり、ありもしない立場をでっちあげてごまかしている者、マザームーンと叫んだ者等、名前を書くのも汚らわしい政治家たちはみな、実質的に何の咎めも受けず、平然と権力の座に居座っている。変わっていない、というより、変えたくないのだ、多くの人が不幸になっても。まるでそれ自体がカルト集団であるかのような政党が牛耳る国。この国はとことん堕落してしまったが、著者のような人々の存在にわずかな希望を見出したい。

  • 再販 そうかだからか
    昔 ワイドショーで連日報道されていた宗教団体
    有名人か多数入信していたから TVをつければその話題だつた頃かあった

    報道されていた事が文字になり 架空の人物だけど
    人物像が浮き彫りにされていったが

    …ワイドショーで見たのとかわらないかなあ

  • 家族を壊すカルト宗教の恐怖! その洗脳と集金のシステムや家族を取り返すために戦う人々。カルト教団を描いた小説を緊急文庫化!(e-honより)

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著者プロフィール

1940年、新聞記者の長男として東京で生まれる。幼年期に東京空襲があり、父の出身地である福島県に疎開。そこで小中学校を過ごし、高校は東京に戻り、都立新宿高校を卒業、東京外国語大学に入学。在学中、演劇に興味を持ち、大学を中退、劇団俳優座に入所。

1972年放映の「木枯し紋次郎」が空前のブームになり、その後数多くのドラマで主演をつとめた。俳優業だけでは満足できず、脚本や演出でも活動したが、海外取材を基に書いた小説『チェンマイの首』がベストセラーとなり、その後の二作を含め東南アジア三部作は、国際小説ブームの火付け役を果たした。

この成果が注目を浴び、1984年には、日本最初の本格的なTV情報番組「地球発22時」のキャスターに起用され、TV界の流れに大きな変化をもたらした。数十ヶ国の海外取材での経験から、国際的視点からの政治的発言が多くなり、政界入りの要請が強くなる。

日本ペンクラブ理事、環境委員を歴任。著書に『簡素なる国』(講談社)、『ごみを喰う男』(徳間書店)、『暴風地帯』(角川書店)ほか。
ドラマ「CHANGE」(2008年)、「不毛地帯」、「仁」(2009年)、「鉄と骨」(2010年)、「まれ」(2015年)などに出演。

「2022年 『【朗読劇】線量計が鳴る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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