読むことのアレゴリー (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065302279

作品紹介・あらすじ

批評界に大きな衝撃を与えるとともに、文学批評はもちろん、哲学・思想の領域にも深い影響を与えた巨人ポール・ド・マン(1919-83年)。ド・マンを領袖とする「イェール学派」は、第一世代に属するハロルド・ブルーム、ジェフリー・H・ハートマン、J・ヒリス・ミラー、第二世代に属するバーバラ・ジョンソン、ショシャナ・フェルマンの名とともに無数の輝かしい成果をあげてきた。その原点に位置するのが本書『読むことのアレゴリー』(1979年)であり、そこで全面的に展開されたド・マンの「脱構築批評」は文字どおり世界を震撼させた。
本書の一貫した主題は、言語の「比喩性」の観点から「読むこと」の本質を考察することにある。テクストに普遍的=不変的な意味を見出そうとする「字義性」に基づく発想をド・マンは虚妄として暴き出す。その帰結として高らかに宣言されるのが、言語はすべて比喩的である、というテーゼにほかならなかった。つまり、言語は絶えず自身とずれていく。それゆえ、語りは決定的な終結を迎えることに必ず失敗し、コミュニケーションはディスコミュニケーションとなる。例えば、アメリカのテレビドラマ『All in the Family』の一話で靴紐の結び方を聞かれた男が口にする「What’s the difference?」という言葉に見られるように、言語は常に「字義どおりの意味(literal meaning)」と「比喩的な意味(figurative meaning)」のあいだで宙吊りになり、意味の決定不可能性に直面するわけである。本書は、このことをルソー、ニーチェ、リルケ、プルーストにも見出される本質的な特性として示し、それらのテクストがみずからを脱構築し、さまざまな内部矛盾を遂行してしまうさまを鮮やかに浮かび上がらせる。
ド・マンの主著にして現代批評理論・現代思想の領域に聳え立つ一大金字塔──その定評ある明快な日本語訳を文庫版で手にできる快楽がここに生まれた。

[本書の内容]
序 文

第I部 修辞(学)
 第1章 記号学と修辞学
 第2章 文 彩(リルケ)
 第3章 読むこと(プルースト)
 第4章 生成と系譜(ニーチェ)
 第5章 文彩のレトリック(ニーチェ)
 第6章 説得のレトリック(ニーチェ)

第II部 ルソー
 第7章 隠 喩(『第二論文』)
 第8章 自 己(『ピュグマリオン』)
 第9章 アレゴリー(『ジュリ』)
 第10章 読むことのアレゴリー(『サヴォワの助任司祭の信仰告白』)
 第11章 約 束(『社会契約論』)
 第12章 言い訳(『告白』)

人名・作品名索引

感想・レビュー・書評

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  • ポール・ド・マン没後40年、または脱構築ルネッサンス:講談社学術文庫『読むことのアレゴリー』に寄せて(巽 孝之) | 学術文庫&選書メチエ | 講談社(2023.01.09)
    https://gendai.media/articles/-/104337

    読むことのアレゴリー - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b261084.html

    『読むことのアレゴリー』(ポール・ド・マン,土田 知則):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000363767

  • 難解で知られるポール・ド・マン。その代表的な著作である『読むことのアレゴリー』。作品を丹念に読むことからその意味作用を分析して統一的な解釈から反する意味を読む脱構築的な読みの実践の書。テクストクリティークの代表的な作品。
    しかし、とにかく難しく、文と文のつながりを追って行くことができないというか、極めて困難。そんな作品を訳した訳者の土田さんの偉業には恐れ入る。
    また読んでみたい。

  • 読むのに大変苦労しました。
    難しいけど、おもろい…
    読書やめられない…
    言語と意味が渾然一体となって溶け合うことで、指示的で単一な理解を妨げる、その因子のことをド・マンは「アレゴリー」と表現する。
    全てのテクストには必ず矛盾し、かつ相克し合う隠喩的土台がある。このことにより、統一されたテクストの読み取りには到達し得ないということ、これをリルケ、ニーチェ、プルースト、ルソーを例に挙げ骨太な内在的批評を試みる大著。
    混乱したルソーのテキスト分析は大変面白かった。
    言語というものの曖昧さや不安定性をどう捉えるのか、それが現代の文学や哲学の基盤としてあるのかなとつらつら思った次第です。

  • ・旧版の書名は『読むことのアレゴリー ――ルソー、ニーチェ、リルケ、プルーストにおける比喩的言語』だった。

    【書誌情報】
    『読むことのアレゴリー』
    原題:Allegories of Reading: Figural Language in Rousseau, Nietzsche, Rilke, and Proust(Yale University Press, 1979)
    著者:Paul De Man(1919-1983)
    訳者:土田 知則(1956-)
    出版社:講談社
    発売日:2022年12月15日
    定価:2,200円(本体2,000円)
    ISBN:978-4-06-530227-9
    判型:A6
    ページ数:576
    シリーズ:講談社学術文庫
    通巻番号:2743
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000363767

    【目次】
    序文

    第I部 修辞(学)
     第1章 記号学と修辞学
     第2章 文彩(リルケ)
     第3章 読むこと(プルースト)
     第4章 生成と系譜(ニーチェ)
     第5章 文彩のレトリック(ニーチェ)
     第6章 説得のレトリック(ニーチェ)

    第II部 ルソー
     第7章 隠喩(『第二論文』)
     第8章 自己(『ピュグマリオン』)
     第9章 アレゴリー(『ジュリ』)
     第10章 読むことのアレゴリー(『サヴォワの助任司祭の信仰告白』)
     第11章 約束(『社会契約論』)
     第12章 言い訳(『告白』)

    人名・作品名索引

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著者プロフィール

Paul de Man.
1919‐1983.ベルギー生まれ。文学者。
エコール・ポリテクニークで工学を学び、
ブリュッセル自由大学で化学と哲学を学ぶ。1946年、米国移住。
1960年、ハーバード大学でPh.D.取得。コーネル大学、
ジョンズ・ホプキンス大学を経て、イェール大学で教授を務めた。
デリダの影響を受け、脱構築批評を確立したイェール学派の代表的存在。
米国及び英語圏での文学研究にドイツ及びフランスの哲学的(大陸哲学的)
方法を輸入した著名な学者。「誤読」「精神分析」「脱構築」「修辞学」
を中心に文学作品を独自の手法で読み解いた。
『盲目と洞察』(宮﨑裕助、木内久美子 訳、月曜社、2012年)、
『読むことのアレゴリー』(土田知則 訳、岩波書店、2012年)、
『ロマン主義のレトリック』(山形和美、岩坪友子 訳、法政大学出版局、
1998年)、
『理論への抵抗』(大河内昌、冨山太佳夫 訳、国文社、1992年)、
『美学イデオロギー』(上野成利訳、平凡社、2005年・2013年
(平凡社ライブラリー))等、多くの訳書が出版されている。



「2019年 『ロマン主義と現代批評』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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