時空犯 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065305461

作品紹介・あらすじ

私立探偵、姫崎智弘の元に、報酬一千万円という破格の依頼が舞い込んだ。依頼主は情報工学の権威、北神伊織博士。なんと依頼日である今日、2018年6月1日は、すでに千回近くも巻き戻されているという。原因を突き止めるため、姫崎を含めたメンバーは、巻き戻しを認識することができるという薬剤を口にする。再び6月1日が訪れた直後、博士が他殺死体で発見された……。

感想・レビュー・書評

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  • 何度も何度も6月1日が繰り返す。タイムリープ中に発生した殺人、時間の狭間に隠れた犯人は? #時空犯

    ■きっと読みたくなるレビュー
    もうね、天才的発想。

    時間を行き来するミステリーはいくつかあれど、こんなにも鋭角なプロットを放り込んでくるミステリーは他にないよ。突拍子もなくリアリズムに欠ける部分もありますが、逆に良くぞこの設定で本格ミステリーを成立させましたね。すごいよ。

    時間遡行の原理や説明シーンなんかの書きっぷりは、まさに鬼才のなせる技。はじめて森博嗣先生や西尾維新先生を読んだ時の感覚に近く、あまりにも先鋭的な内容で、未来を感じさせてもらいました。

    誰が時空犯なのか、犯行方法の解法がロジカルに整理できていて、とってもわかりやすい。動機やまつわるエピソードも、めっちゃ痺れましたよ。壮大な時間ミステリーの果て待ち受ける真相はこういうことですか…

    潮谷先生はやたら高次元なテーマのお話が多いのですが、キャラクターや関係性が妙にカジュアルなんですよね。先生の優しさや人柄が伺えて、読んでて癒してくれるところも大好きでした。

    ■推しポイント
    本作に登場している情報工学博士のような、いわゆる天才の価値観が理解できないんですよ。

    今まで私は、自分の考えを突き詰めたり、誰振りかまわず意見を主張したりしたことがありません。そのほうが皆にとって楽しいし、苦労もないし、合理的だと思うからです。
    でもそれはきっと凡人だからそう思うだけで、本当に頭の良い人は価値観や発想が全く違うんでしょうね。

    彼らは、たった一人で真っ暗な道を歩き続けている。
    失敗も成功も、賞賛も批難も、希望も絶望も何も関係ない。ただ自分が歩きたいから歩くだけ。孤独な闘いを続けている天才の脳みその中を垣間見たような気がしました。

  • 時間遡行体験者 北神博士が各分野の有識者8名を緊急召集。特製の薬を飲んで時間遡行を検証し、同じ日が900回以上繰り返されていることの原因を究明して欲しい依頼した。だが、時間遡行体験1回目に北神博士が殺害され、2回目にはも時間遡行メンバーが殺害されてしまう。タイムスリップSFミステリー。

    「情報を蓄積するポテンシャルが偶発的に発生した場合、そのポテンシャル自体が知性体になり得る」(偶然の積み重ねから高い知能が生まれ得る)というセン・ミウアート論文のアイデア、異世界の知性体というアイデアは面白かった。

    ただ、ミステリとしてはどうもしっくりこなかった。9人の中に犯人がいる、巻き戻しを起こした人物が犯人、巻き戻しが起きなくなれば犯人は犯行を犯さなくなる、などの推理は理屈に合わないような気がする。そもそも時間遡行が繰り返される中で殺人を犯す意味なんてないんだし(どうせ生き返ってしまうんだから)。

    まあ、真相が分かってその辺の辻褄は合うんだけど(ハートフルな結末!)、途中の推理がなあ。

  • 時が進むという、至極当たり前の事に幸をみる。
    勿論、時を遡る事に憧れを抱いた時期もあった。ただ、私は皆と一緒に歳を重ねる楽しみも知っている。

  • 天才博士・北神(きたかみ)の依頼で集まった男女八名。参加するのは「一日が巻き戻る」新薬の実験で、報酬は驚きの一千万円!参加者で探偵・姫崎(きさき)もループを確認し、実験は成功したかに思われたが、なんと博士の死体が発見されて──。

    900回以上も繰り返される六月一日。その謎を調査するべく、博士とともにループを体験するはずが当の本人が死んでいた。な、何を言っているのかわからねーと思うが状態。同じ時を繰り返し、殺人を犯す時空犯の目的やループの手段とは?!軽やかに読める中にも、芯はSFミステリで面白かった!

    タイムリープものって主人公サイドが能力を駆使して打破するイメージがあった。それが逆転して、犯人がそれを駆使して襲い掛かってくる!顔の見えない悪意が先手を打って忍び寄ってくるスリルがすごい。タイムリープの仕組みもミステリやドラマに活かされていて読み応えがあった。タイムリープがあったから起きた事件であり、その技術に頼ったがゆえに解かれてしまったというのが皮肉だなと。

    時が巻き戻ったとしたら、その前に犯した罪は帳消しになるのか。肉体的には元通りでも、記憶は引き継がれる。また、その他大勢の人生を知らずに消費させていることは罪なのか。結局、時が戻れば証拠は残らない。その時に時空犯は裁かれるべきなのか。この哲学性にあと一歩踏み込んでくれたら最高だった。ただ、お節介なオバちゃんが意外と最強だったり、現実ってそういうもんかもしれないなって思える雰囲気で、これもまた有りかなと。

  • タイムリープをうまく使って、きれいにストーリーをまとめたなと思います。
    終わり方もよいのですが、途中のふざけた絡みや
    ライトなやり取りが若干の違和感を感じたところ…
    でも面白いのは間違いないです。。

  • 飲み会の席でたまに話題になる、「今の記憶のまま高校生に戻れたらどうする?」みたいなくだらない話を恥ずかしながらイメージしました。
    また、少年の思惑が操られていたかどうかは分かりませんが、こうゆう猪突猛進というか一つのことに熱意を注げる人が何かを変えていく人なのだと感じましたし、情報工学に興味を持ちました。

    「まだ、できるはずだ。」

  • 同じ日が繰り返される現象の真っ只中にいる博士が、その謎を解明するために集めた元探偵の姫崎とその他メンバー。その繰り返しのなかで博士が殺害される。なぜ、、繰り返しを引き起こす真相と殺人の真相を調べだすが…。
    特殊設定ミステリで限定された条件下で推理していく様子はワクワクする。どちらかというとSFに近しいが難しいこと考えず姫崎の顛末を追うと楽しめる。

  • 想像していたものとは違っていて、1歩深い話になっていた。時間をあけて読み直したい。

  • 面白かった。タイムリープものでも結構好きな分類だった。

  •  タイムループと殺人事件をどう組み合わせてくるのか興味をそそられて手に取りましたが、なるほど、念入りに組み立てられた本格ミステリですね。壮大なSF設定もしっかり織り込みつつ、事件そのものは理詰めできちんと推理していくところが好印象でした。
     読後感も爽やか。何せ登場人物の大半が死ぬのに最終的にはほぼ死なないという(笑)

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著者プロフィール

1978年京都府生まれ。第63回メフィスト賞受賞。デビュー作『スイッチ 悪意の実験』が発売後即重版に。「王様のブランチ」(TBS)で特集されるなどで話題となる。2作目の『時空犯』は「リアルサウンド認定2021年度国内ミステリーベスト10」で第1位に選ばれ、今作が3作目となる。

「2023年 『エンドロール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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