母という呪縛 娘という牢獄

著者 :
  • 講談社
4.05
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065306796

作品紹介・あらすじ

深夜3時42分。母を殺した娘は、ツイッターに、
「モンスターを倒した。これで一安心だ。」
と投稿した。18文字の投稿は、その意味するところを誰にも悟られないまま、放置されていた。
2018年3月10日、土曜日の昼下がり。
滋賀県、琵琶湖の南側の野洲川南流河川敷で、両手、両足、頭部のない、体幹部だけの人の遺体が発見された。遺体は激しく腐敗して悪臭を放っており、多数のトンビが群がっているところを、通りかかった住民が目に止めたのである。
滋賀県警守山署が身元の特定にあたったが、遺体の損傷が激しく、捜査は難航した。
周辺の聞き込みを進めるうち、最近になってその姿が見えなくなっている女性がいることが判明し、家族とのDNA鑑定から、ようやく身元が判明した――。
髙崎妙子、58歳(仮名)。
遺体が発見された河川敷から徒歩数分の一軒家に暮らす女性だった。夫とは20年以上前に別居し、長年にわたって31歳の娘・あかり(仮名)と二人暮らしだった。
さらに異様なことも判明した。
娘のあかりは幼少期から学業優秀で中高一貫の進学校に通っていたが、母・妙子に超難関の国立大医学部への進学を強要され、なんと9年にわたって浪人生活を送っていたのだ。
結局あかりは医学部には合格せず、看護学科に進学し、4月から看護師となっていた。母・妙子の姿は1月ころから近隣のスーパーやクリーニング店でも目撃されなくなり、あかりは「母は別のところにいます」などと不審な供述をしていた。
6月5日、守山署はあかりを死体遺棄容疑で逮捕する。その後、死体損壊、さらに殺人容疑で逮捕・起訴に踏み切った。
一審の大津地裁ではあくまで殺人を否認していたあかりだが、二審の大阪高裁に陳述書を提出し、一転して自らの犯行を認める。

母と娘――20代中盤まで、風呂にも一緒に入るほど濃密な関係だった二人の間に、何があったのか。
公判を取材しつづけた記者が、拘置所のあかりと面会を重ね、刑務所移送後も膨大な量の往復書簡を交わすことによって紡ぎだす真実の物語。
獄中であかりは、多くの「母」や同囚との対話を重ね、接見した父のひと言に心を奪われた。そのことが、あかりに多くの気づきをもたらした。
一審で無表情のまま尋問を受けたあかりは、二審の被告人尋問で、こらえきれず大粒の涙をこぼした――。
殺人事件の背景にある母娘の相克に迫った第一級のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • これが現実の事件ってのが怖かったな〜〜でもサクサク読み始めてしまった。
    娘が自閉スペクトラムを患っててそれを認めて本人のペースを保たせてあげれば良かったけど、母親にも理想があって、そのすり合わせがうまくいかなかったのかなぁ。

    一回怒られてしまうと、怒られないようにしなきゃって意識が強くなりすぎて、うまくできないようになるってのがすごく共感できた。ストレスがかかる状況で30年以上母親と生活してきた娘も本当に辛かっただろうな、と。

    この事件のイメージとして、母と娘の仲はずっと険悪だと思っていたので、大学の途中は2人でディズニー行ったり旅行してたってのが意外だった。なんでそこまで医学部や助産師にこだわっていたんだろう?病気だったのかなぁ〜

  • なんか上手く感想を書けない読了直後、泣いています

  • 率直に言って殺されても仕方ない母親だし、娘はよくここまで耐えたなと思う。見栄とか虚栄心、学歴コンプレックス、選民思想など諸々を煮詰めたみたいな母親。自分の理想を子供に押し付け、その子が本来持っている良さを完全に潰す親。毒親という言葉が優しいと感じるほどのひどさ。

  • このような事件を取り上げて、しっかりと事件の真相を伝えるのはとても良いことだと思った。こんな母親には絶対にならないと自信があっても、意外と自分も娘に対してこうなってしまう時があるのかもしれない。他人事とは思わずにいたい。

  • ある方のレビューを読んで興味がわき、図書館で予約をしていました。

    娘に医学部を強要し9年にわたる浪人生活を送らせた母親を、結局医学部には合格できず、看護学科に進学した経緯を持つ31歳の娘が殺害するに至る経緯を語った一冊です。

    歪な親子関係にゾッとしました。
    どちらかがいなくならなければ解決できないところまで来ている気がして気が滅入りましたし、こんな母親に育てられた加害者の娘には同情しました。

    でもそれと同時に、伯母夫婦に育てられたという被害者である母親の生い立ちも特殊なので、叔母夫婦に育てられた事情や、母親の母親(アメリカに住むアメばあ)からみた家族の様子なども知りたかったです。
    学歴コンプレックスの源が分からずじまいでしたから。

    また、父親の存在が薄すぎて不自然な印象だったので、そのあたりも掘り下げて欲しかった。

    加害者にも多分の同情の余地はありますが、母側の情報が少なすぎて、消化不良気味です。。

  • この事件が報道されたとき、とてもショックを受けたのを覚えている。母親を殺害してバラバラにして遺棄するということもだけど、犯人の娘は32歳の医大生(看護)でしかも9年もの浪人生活を送っていたというとてもインパクトある事件だったから。教育虐待という言葉もこの時初めて知ったような。母娘二人だけの世界でお互い相手も自分も狂いだしている事に気が付かず、行きつくところまで行ってしまったのかな。何か少しでも外の人が関わっていたら・・・母親の狂気に気が付く外部の人がいたら・・と思うととてもつらい。娘に本気で逃げろよ!もっと積極的に外に助けを求めろよ!と思ってしまうけど、きっとこの子も長年の母親の呪縛に麻痺してしまっていたのかな。心がギューっと苦しくなる本でした。

  • 思ったまんまの内容!
    毒親怖すぎる
    パパもそんな家庭嫌だっただろうな、、、
    自分もなりかねない恐怖
    反面教師
    懲役10年
    あかりは悪くないと思う一方でバラバラにする猟奇さはやはり恐怖でしかない

  • 自分のことは棚にあげて、娘に自分の理想を押しつける母親。娘は、長い間よく耐え、努力してきたと思う。
    父の優しさと裁判官の言葉が染みた。
    娘にはどうか幸せになってほしい。

  • 壮絶。
    やっぱり長期的に叱責されたり、家出がうまくいかなかったりと、なんだろ、絶望した回数が多いと、もうほんと抜け殻みたいになるんだろうなと思った。


    祖母たちに送る手紙を本人じゃなくて実は母が考えて書かせていたというところの手紙の文章が怖すぎた。

    途中、親子の仲が復活したところにまじ?そんなことある?と思ったけど、なんか洗脳というか、感覚も鈍ってくるんだろうと思った。

  • 「モンスターを倒した。これで一安心だ。」

    こんな文を、母親を殺した直後にSNSで発信する心境。彼女の精神状態が「高揚感」だけでは片付けられない事態になっていたことが窺える。

    とは言え、どう感想を書いたら良いものか、とても迷う。
    ただ読んでいる間はずっとつらくて、特に母親に罵られる場面や2人のLINEなどでのやり取りの、母親の文面を目にしている時などは、本当に言葉がひどくて、負の感情に当てられるのはこんなにも第三者の心まで抉るものなのかと痛感するほど。
    母親の教育方針、という言葉だけでは片付けられない、教育虐待という状態。あなたがしているのは異常なことですよと、ぜひ母親に知ってほしかった。殺してしまっては、反省させることもできないじゃないか…。
    どちらかが死なないと終わらないどん底の深い闇に、近くにいた誰かしらは気付かなかったものかよと悔しくて仕方がない。
    当事者だけであったからこそ、完全に狂ってしまった歯車。祖母なり父親が、母親に強く言えていたら…。先生や卒業校の職員が…母親の友達が…。

    読むのもつらかったけれど、教育虐待の一例を知ることができてよかった。著者の齋藤氏の書き方が、また良かったのだろうな。
    事件を知っている方にも知らない方にも読んでほしい一冊だけれど、ぜひメンタルが削れたり疲れていたりしない時をお勧めします。

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著者プロフィール

最終学歴:お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科 博士(人文科学)
現職:お茶の水女子大学基幹研究院助教
専門:特別支援教育,障害のある子どもとその家族への支援に関する研究

「2022年 『小児期の逆境的体験と保護的体験』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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