- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065308912
作品紹介・あらすじ
日本の最後のサンクチュアリを支配する男のあくなき野心と反骨の半生!
障がいをバネに差別と戦った若き時代から、「京都のドン」野中広務を倒し、昭和的独裁者として1000万人組合員ににらみをきかせるその実像とは。
農協にはびこる巨大なカネと権力を牛耳る「昭和的独裁者」を追った渾身ルポ!
(目次)
プロローグ 農協の独裁者、中川泰宏とは何者なのか
第一章 「コメ産地偽装疑惑」報道、七億円裁判の顛末
1 「農協界のドンVS.ダイヤモンド」の内幕、前哨戦は訴訟示唆の抗議文
2 コメ産地疑惑報道で自民党農林部小泉進次郎会長に圧力
3 産地偽装の潔白主張する「二つの虚言」
4 偽装米疑惑にうごめくヒト・モノ・カネ
5 訴訟の「けじめ」として試みた中川への直撃取材
第二章 いじめられっ子の変貌
1 障害のある泣き虫が青年実業家に成長
2 カネを稼いで社会を見返す! 貸金・不動産業で大成功
第三章 農協の甘い汁
1 宿敵・野中広務
2 恐怖支配を象徴する「農協労組潰し」
3 ファミリー企業による悪質な不動産取引
4 フィクサーを取り巻く面々
5 強引な「農家数水増し」で孤立を深める
6 スキャンダルを探して天敵・農水次官解任を画策
7 全国農協を牛耳る野望の果てに
第四章 小泉チルドレンVS政界の狙撃手
1 野中広務のけん制と中川の反発
2 同和問題改革者から一転、同和事業を利用する
3 北朝鮮支援で一躍中央政界に名をとどろかせる
4 国政進出を阻まれ、野中に「死んでも闘う」と宣言
5 小泉純一郎の加勢で野中陣営に薄氷の勝利
6 「使い捨て」にされた改革者
第五章 京都のフィクサーとして支配体制を確立
1 政治家から「黒幕」に転身
2 中川と野中の「代理戦争」は泥沼化
3 野中亡き後も続いた復讐劇
4 農業版「桜を見る会」、海外宮殿での晩餐会
エピローグ 子飼いたちに利用される昭和的「独裁者」
感想・レビュー・書評
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タイトルから農業全体の話かと思いましたが、どちらかというとピンポイントの地域における農協から話が広がります。
そこから、農業全体への問題点、国との関わりに繋がります。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
京都の中川さんっていうのは初めて聞いたが、噂に聞く農業のガバナンスの低さを逆手にとって、甘い蜜を吸う吸血鬼。。
政治の世界まで進出していて、野中さんがいなかったらどんな悪行を行なっていたか、、、と背筋が凍る思いで読み進めた。
記者の千本木さんも、いろいろな嫌がらせ、恫喝、そもそも訴訟を起こされたり大変だったと思うが、週刊ダイヤモンド社の骨太の対応はさすがだなぁと感心させられた。 -
障害をバネにのしあがり、政治の世界にも進出しつつ、京都の農協のトップに長年君臨して、数々の「悪事」にも手を染めてきた「農協のフィクサー」、あるいは「農協の独裁者」といえる中川泰宏とは何者かに迫ったノンフィクション。
中川泰宏という人物については、小泉チルドレンにいたかなという程度でほとんど何も知らなかったが、京都の農協を支配し、野中広務とも激しい政争を繰り広げたこんな特異な人物がいたのかと驚いた。本人には取材できていないものの、関係者への聴き取りや著書の分析など丹念な取材により中川泰宏の人物像を克明に浮かび下がらせており、とても読み応えのある本だった。本人や農協からの強い抵抗を受けつつも数々の「悪事」を暴き続けた著者のジャーナリストとしての矜持と能力にも敬意を表する。
中川泰宏という男は障害をも味方につけ自らの才覚により京都の農協や政界で勢力を伸ばしてきたということで、ある種の人間的魅力のある人物なのかとは思うが、個人的にはアクが強すぎて、決して関わりたくはないなぁと思った。著者が明らかにした中川の数々の「悪事」、特に、被差別部落でないのに同和対策補助金を受領したことや、農産物輸出促進につながりそうもない海外での晩餐会の開催といった私腹を肥やすためとしかいえない公私混同的な公費の使用は許しがたいものがある。著者などにより問題が公になっているのに、なかなか改められないことにも闇の深さを感じる。
個人的に、現在の農協は農業振興の役に立たずむしろ足枷になっている部分もあるのではないかと批判的に捉えているのだが、中川のような人物が経営層としてのさばっているところに農協をめぐる諸問題の一因があるのではないかと感じた。ただ、著者も最後に指摘しているように、中川のような「独裁者」が跋扈しているのは農協だけでなく、政界、会社、大学など日本社会の様々なところで存在していると思われ、そのような支配を打破していくことが今後の日本社会にとって不可欠だと思う。そのためには、なかなか難しいとは思うが(自分も当事者なら声を上げられるか自信はないが)、周りがちゃんと声を上げていくということが必要だし、著者のような心あるジャーナリズムの役割が重要だと考える。 -
このような独裁者の出現が防止できないのは日本だけなのか、他の先進国でもこのような事例があるのか知りたい。
日本では、会社でも、学校、その他の組織でも強力な指導者が現れて人事権を掌握すると、反対勢力は粛清されて長年君臨し、当初は善良な施策を進めていてもどこかで私利私欲に走り、ついには世襲体制を築こうとする。
気づいて逆らおうとしても、排斥され、ますます誰も逆らえなくなる。
やはり大きな組織であれば、この著者のようにマスコミが問題を提起する事が必要であろう。
人事に外部の眼が届きにくい組織は、この手のリスクが高くなる。 -
若き改革者が既得権益の成れの果て
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週刊ダイヤモンドの記者が、京都の農協トップに27年以上君臨している中川泰宏について書いた本。農協の問題点を明らかにするというよりは、中川泰宏個人に焦点を当て、農協トップというより政治家としての中川泰宏に関する内容がメインになっている。訴訟や地上げ、選挙を中心とした政治闘争など、地域的な出来事がほとんどで、人権問題を含め視点が低い。もっと国家レベルの視点から農協の問題に焦点を当てるとか、中川泰宏が日本の政治にどのような影響を及ぼしたかなどを追求して欲しかった。野中広務との権力闘争には興味を持てなかったし、既得権益を嫌い、規制改革に取り組む中川氏の姿勢には共感でき、批判には当たらない点も多いと思う。著者の個人的な恨みが大きいように感じた。
「(産地偽装疑惑の)記事公開後、中川の政治力を駆使したネガティブキャンペーンが展開されることは覚悟していた。だが、実際には、自民党の農林族議員や農水省の官僚を巻き込んだ、想像を超える圧力が待っていた」p22
「当時の同和問題研究会は、共産党系の同和団体や社会党に近い部落解放同盟との付き合いのある運動めいたものだった」p68
「(中川)100万円の取り立てに2000万円の費用が掛かろうと返してもらうものは返していただくのが鉄則」p77
「(農協経営のトップ)地域のまとめ役なら経験豊富な長老でも良いが、激変する経営環境に経営トップとして腕を振えるとは思えない。農協の合併や人員整理など、波風を立てずに先送りする傾向が強いからだ」p87
「(農協による選挙運動)JAグループ京都は、選挙応援を行う職員のシフト表まで作成していた。シフト表には「本件ボランティア活動につき、有給届け提出のこと!」などという命令が記されている」p126
「農協を通じて農産物を販売したり生産資材を調達したりする農業者が、正組合員の1割程度しかいないことを物語っている。こういった状況に至った理由を中川は端的に明らかにしている。それは「正組合員であっても農地を貸して農業をしていない方もいる」からなのだ」p144
「石川県能美市などを管内に持つJA能美では、4312人の組合員のうち、農産物の年間販売額がゼロの組合員が80%に上り、販売額1000万円以上の組合員はわずか2%しかいなかった」p145
「中川泰宏は、政府による農協改革に真っ向から反対し、改革を主導した自民党農林部会長の小泉進次郎や農水省事務次官の奥原正明と対峙した」p148
「海辺の松と不動産屋はまっすぐに育たない(野中広務)」p173 -
【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/566646 -
丹念な取材に裏付けられた内容は読み応えがあった。
本書で取り上げた中川氏は見方によっては成功者とも言えるだろう。障害を乗り越え、逆に長所に転化させ巨大組織の陰の実力者であるからだ。
しかしながら、やはり視点が違えばそうは言えない。社会的な影響力がある人物はやはり社会的な影響を倫理的な視点で評価されなければならないからだ。
個人の人生にフォーカスするか、社会的な影響力にフォーカスするか。
人というのは見方によって異なるものだなと改めて感じたね。 -
これまさにいたる組織にあるある譚だ。成り上がる過程では、類まれな気概と才覚を発揮したに違いない。まあ当然ながら中川氏本人にたやすく取材が叶わず、本人の反論が聞けないので、ジャーナリズムのありようとしては不十分だ。核心にせまっていようが、応酬なき言論は話半分にとらえたい。しかし、フィクサーを必要悪としても、昭和型ガバナンスが未だはびこってるのは事実だ。括りで記されるように、独裁者に加えてその取り巻きの責任、すなわち組織のありようを見直しできない体質が何よりも問題だ。(最後の1行で、独裁者が独産者になってる)
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中川氏の京都の農協の牛耳るまでの歴史と中身
あとがきにあるがケチくさい感じで強い思想は感じられない