逆襲する宗教 パンデミックと原理主義 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065309735

作品紹介・あらすじ

宗教から眺めると世界の「いま」が分かる!
アメリカのクリスチャン・ナショナリストはなぜ陰謀論めいた主張を叫んでやまないのか。インドでは反イスラムの動きが先鋭化し、モスクワこそが「第3のローマ」と謳うロシアの原理主義者たちもまた陰謀論を思わせる「世界の終末」を唱える。一体、いま世界で何が起こっているのか。――その背景には1970年代以降に広がった「宗教復興」の潮流があった。
パンデミックに揺れる世界で、一気に噴き出した宗教と社会の問題を、各国各宗教ごとに解き明かす。
宗教ぬきに国際情勢を理解することはもはや不可能となった現代にあって、「いま」をあと一歩深く知るために必読の書!

イランのイスラム革命に象徴されるように、世界は1970年代から宗教の季節を迎える。それはイスラム教に限ったことではなく、アメリカやロシアなどの大国をも含む複数の国で「宗教復興」とでも言うべき現象が起こり、その勢いはいまなお衰えをみせない。
イスラム教においては、その一部がジハード主義者たちのテロ行為へとつながっていくが、そこで標的となったアメリカもまた、「宗教復興」と無縁ではない。それを示すのが、1980年の大統領選におけるロナルド・レーガンの逆転勝利である。このときアメリカが直面したキリスト教保守主義vs.世俗リベラルの図式は、今日いっそう深刻な分断となって我々の前に立ち現れている。
宗教が各地で影響力を強めていくなかで突然訪れた世界規模のパンデミックは、感染防止のための礼拝の禁止や宗教施設の閉鎖をめぐって大きな反発を生み、各国で思いがけない事態を引き起こした。その一方で、広く影響力をもつ宗教勢力と協力して、危機を乗り越える力を得た国もある。
世界情勢はもはや宗教なしに理解することが不可能となりつつある。本書は、国際交流基金に長く勤めた経験のある著者ならではの筆致で、危機の到来によって急激に前景化した宗教と社会の関係を各国ごとに明快に解き明かす。
読めば世界の見え方がちょっと変わる、「いま」に対する探究心に応える一冊!

【本書の内容】
はじめに 
序章 世界の宗教復興現象――コロナ禍が宗教復興をもたらす
第1章 キリスト教(プロテスタント)――反ワクチン運動に揺れる米国
第2章 ユダヤ教――近代を拒否する原理主義者が孤立するイスラエル
第3章 ロシア正教――信仰と政治が一体化するロシア
第4章 ヒンドゥー教――反イスラム感情で軋むインド
第5章 イスラム教――ジハード主義者が天罰論拡散を図る中東・中央アジア
第6章 もうひとつのイスラム教――宗教復興の多面性を示すイスラム社会、インドネシア
終章 コロナ禍で日本に宗教復興は起きるか
参考文献
あとがき

感想・レビュー・書評

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  • コロナ禍のそれぞれの国の宗教について書かれている。
    同時に簡単に歴史も書かれてるのであの戦争や紛争の元はこの辺りにもあるのかと思って読んだ。ただ、『簡単に』『わかりやすく』書かれてるので、おそらく実態はもっと複雑なものがあるのかもしれないとも思う。

    序章 世界の宗教復興現象
    科学や経済の発展と共に宗教は衰退すると予測していたものが、今はそうではないということが書かれている。世界的な流れとしてがざっとわかる。

    第1章 キリスト教(プロテスタント)
    主にアメリカの話。キリスト教もいろんな宗派があって考えが違う部分もある。トランプ大統領を応援する層がどういう層なのかも書かれていて、なるほどと思った。


    第2章 ユダヤ教
    イスラエルの話。ユダヤ教は古い宗教の一つらしいけど、もうなにがなにやら。そろそろついていけなくなっている。

    第3章 ロシア正教
    ロシアに関する話。ウクライナや周辺の国との関りも書いてあって。戦争が起きた理由の一つが宗教にもあったというのがわかった。


    第4章 ヒンドゥー教
    インドの話。インドといえば仏教なイメージだけど、実際には他宗教でヒンドゥー教が一番多い。イスラム教とも争いがあって、パキスタンとインドは分裂した国というのも分かった。宗教の争いってあちこちにあって、わからない。

    第5章 イスラム教
    中東・中央アジアの話。……もう無理。何が何だかわからない。大半の人は意外と穏便というぐらいしか読めなかった。


    第6章 もうひとつのイスラム教
    インドネシアの話。宗教と政治(ワクチン)の話が分かりやすくて読みやすかった。宗教のお墨付きがないとワクチン接種しないというくらいには宗教が入り込んでいるのすごいな。


    終章 コロナ禍で日本に宗教復興は起きるか
    最後は、日本。日本が一番わかりやすい。実感としても宗教の影響は薄い。日常に入り込んでるものは多々あるけど、宗教が何か言ったから国民が動くということはあまり聞かない。
    うちの父も『コロナは中国の実験失敗の結果』だと言っていた時期があった。たぶん、そういう話をしてる人たちと関わってるのだろう。だからといって、何ってことはないので放置。


    あとがきでは元首相の事件について書いてあったけど、この事件は宗教が家族(個人)の孤立を招いて起きている。日本の場合『一時の流行のスピリチュアル』として話題になっては事件が起きて宗教を忌避する。この事件も宗教を妖しいものとみなすものになるのではないか……となっている。



    見慣れない単語が続いて疲れたけど、宗教のことを簡単に知るにはいい本。

  • 分かった気にさせるほどに分かりやすく、メジャー宗教•またその原理主義勢力のコロナ対応、そして宗教と社会の在り方が簡潔にまとめられている。

    だが、P234「新型コロナウイルス危機を契機に、宗教が地域共同体をつなぐ社会資本として復興してくる可能性を、いささかの期待もこめて終章で語った」とあるように、著者には宗教に対し肯定的な考えが根底にある。その終章は、著者の宗教に対するあふれ出る期待のあまり、ほとんど個人の感想レベルで終わっており、客観性ゼロで読後感が台無し。

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著者プロフィール

1959年神戸市生まれ。
1980~81年米国キャンザス大学留学。1982年早稲田大学教育学部卒、2012年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士課程修了。博士(学術)。
1982~2017年国際交流基金に勤務。1989~93年国際交流基金ジャカルタ日本文化センター駐在員、2011~16年国際交流基金東南アジア総局長(在ジャカルタ)。2017年より現職。
【専門】国際交流政策、東南・南アジア研究。
【著書】
『インドネシア 多民族国家の模索』(岩波新書、1993年)
『ヒンドゥー・ナショナリズムの台頭』(NTT出版、2000年。毎日新聞・アジア調査会 アジア・太平洋賞特別賞受賞)
『インド 多様性大国の最新事情』(角川選書、2001年)
『原理主義とは何か:アメリカ、中東から日本まで』(講談社現代新書、2003年)
『テロと救済の原理主義』 (新潮選書、2007年)
『戦後米国の沖縄文化戦略』(岩波書店、2012年)
『インドネシア イスラーム大国の変貌:躍進がもたらす新たな危機』(新潮選書、2016年)
『自分探しするアジアの国々 揺らぐ国民意識をネット動画から見る』(明石書店、2021年)
『逆襲する宗教:パンデミックと原理主義』(講談社選書メチェ、2023年)

「2023年 『変容するインドネシア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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