- 本 ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065314265
作品紹介・あらすじ
珠玉の名歌を季節ごとに精選した究極のアンソロジー。
日本を代表する歌人が、初心者にもわかりやすくその魅力を解説する、極上の短歌体験!
柿本人麿、藤原定家、良寛、正岡子規、石川啄木など、八〇人以上に及ぶ古今の歌人から一五〇首以上の歌を選り出し、その魅力を解説し、初心者にもわかりやすく読んでいく。いつの世も変わらぬ人生の愉悦、悲哀、そして無常をも心ゆくまで堪能する、贅沢なひとときがここに。
【本書の扱う歌人(一部)】
天智天皇 額田王 持統天皇 山上憶良 大伴旅人 柿本人麿 大海人皇子 山部赤人 小野小町 在原業平 西行法師 藤原定家 和泉式部 式子内親王 源実朝 良寛 正岡子規 北原白秋 与謝野鉄幹 与謝野晶子 窪田空穂 伊藤左千夫 前田夕暮 斎藤茂吉 若山牧水 土岐善麿 土屋文明 石川啄木 島木赤彦 釈迢空 川田順 佐佐木信綱(ほか多数)
【目次】
一 月
二 月
三 月
四 月
五 月
六 月
七 月
八 月
九 月
十 月
十一月
十二月
あとがき
感想・レビュー・書評
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※本稿は、「北海道新聞」日曜版2023年7月2日付のコラム「書棚から歌を」の全文です。
雷【らい】の音雲のなかにてとどろきをり殺生石【せつしやうせき】にあゆみ近づく
太田水穂
〈春がすみいよよ濃くなる真昼間のなにも見えねば大和と思へ〉という秀歌で知られる、奈良県生まれの歌人前川佐美雄。10冊以上の歌集を残し、歌書も多いが、このたび、味わい深い「秀歌十二月」が文庫化された。
その月にまつわる短歌を150首余り選び、解説を加えたアンソロジーで、万葉集や新古今和歌集から石川啄木ら近代歌人まで、幅広く選歌されている。
さっそく「七月」の章を開くと、掲出歌が目に飛び込んできた。
「殺生石」は、栃木県の那須岳にある大きな溶岩で、国指定名勝史跡でもある。「九尾の妖狐」が退治され、それが怨念化して石になったという伝説があり、周囲は、硫黄の臭いが漂っているという。松尾芭蕉もここを訪れ、「奥の細道」にも記しているそうだ。
芭蕉研究者でもあった長野県生まれの歌人太田水穂は、1933年(昭和8年)夏、那須温泉を訪れた際に掲出歌を作った。石自体の説明はなく、「ただ雲の中に鳴りひびいている雷をいっただけ」だが、その簡素さがかえって、「ひろい那須野の原のその湯本なる殺生石をじつにぶきみに感じさせる」と解説されている。確かに、聴覚と視覚の双方から不気味さを感じさせ、存在感のある歌になっている。
余談ながら、2022年3月、殺生石が割れたというニュースが話題になった。また何か新しい伝説も生まれるのだろうか。
◇今週の一冊 前川佐美雄著「秀歌十二月」(講談社学術文庫、2023年)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東2法経図・6F開架:B1/1/2770/K
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