からだの錯覚 脳と感覚が作り出す不思議な世界 (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065316238

作品紹介・あらすじ

「からだの錯覚」を通して人の身体や脳の実態に迫る、認知科学研究者である著者が、からだに起こる不思議な現象を徹底解説します。「自分」という、もっとも身近にありながら、つかみどころのないもののイメージが、脳や五感などによってどんなしくみで作られているのかが語られていくと共に、錯覚を感じるさまざまな方法も紹介。読者も簡単な方法で、不思議な錯覚の世界を体験できるかもしれません。
自分が感覚としてとらえている自分の体と、実際の体が乖離していることを感じたりすることは、誰にでもあること。また、ケガで体の一部を失ったときにないはずの部分に痛みを感じたり、拒食症の人が実際にはやせているのに自分は太っていると感じていたり――そんな例も聞いたことがあると思います。それ以外でも身近にあまり意識しないところで、ちょっとした錯覚を感じることは、実は多いのです。乗り物酔いも、金縛りも、自分の感覚と意識の不一致のようなことから起こる錯覚の視点から説明できます。こういったことがどうして起こるのか、その謎に迫ってみると、生きるために必要な脳の働きなどが見えてくるのです。心と体が離れる「幽体離脱」も科学的に説明できる現象です。オカルトではなく誰しもリラックスしたりするときに起こることがあり、ここでも脳と体に備わったくみが関係しています。
そのような事例を紹介しながらからだに起こる不思議を解説していく1冊。読み進めると、自分が「錯覚」の産物であるように思えてくるのではないでしょうか。身体とはなにか、感覚とはなにか、自分とはなにか、についてふだんとは違った見方で考えるきっかけに。

序章 錯覚体験
第1章 「からだ」とはなにか~自分として感じられる身体と物体としての身体
身体と触覚がバラバラ/身体の感覚とはなにか/自分の「からだ」はどこまでか ほか
第2章 目で見る視覚と頭の中にある視覚――目を閉じることで広がる「からだ」の感じ方
錯覚しやすいかどうか、試すならこの2つの方法/触覚だけで「自分の身体を見つける」!? ほか
第3章 弾力のある身体――空想の世界にも想像しやすいものとそうでないものがある
アバターを自分の身体のように感じる錯覚/腕や脚が伸び縮みするVR錯覚 ほか
第4章 からだの錯覚は思い込みと何が違うのか――錯覚が生まれる、その時脳は……
第5章 「身体」なのか「モノ」なのかーー自分のような自分じゃないような「きもちわるさ」の由来
外傷のない痛み/スライムハンドの衝撃 ほか
第6章 幽体離脱を科学する――不思議な現象が導く、さまざまな可能性
多角的な視点からイメージできる人は、幽体離脱が起こりやすい/リセットされる夢、リセットされない幽体離脱/とりかえしのつかない遊び ほか

感想・レビュー・書評

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  • タイトル通り、からだの錯覚に関する仕組みがまとめられています

    意外だったのは、触覚がさほど貢献していないということ、触覚だけでは錯覚は起こらなくて、それ以外の感覚と複合的に同期しないと錯覚は起こらない、ということが分かって面白かったです

    最終章の幽体離脱に関する科学的な見解もとても興味深く、金縛りなどに通じる現象で、仰向けという姿勢も関与している、というお話はとても面白かったです

  • 錯覚はどうして起きる
    今後、メタバース等人間の日常感覚から離れる空間に身を置いた場合、脳が作り出す「車酔い・船酔い」「幽体離脱」に似た様々な錯覚を体験することが簡単になる、と感じた。それが新たなゲーム感覚の新潮流になることは間違いないが、方や「気持ち悪い」と言う現象が起きることも間違いない。脳への錯覚を呼び起こす擬似体験は今後益々盛んになるだろう。

  • 「探究の階段」という番組でその錯覚の様子を見てすごく興味を持ったので、その放映のすぐ後に出版された新書があると知り、まんまと読了。スライムハンドなどのキャッチーな錯覚の様子を予め映像で観ていたためすんなりと読み始めることができたが、全く予備知識なしで読み始めるととっつき悪いかもしれない。
    本書でもおそらくそういう危惧があったのだろう、序章として簡単な錯覚体験を自ら試せる例を紹介しているし、章ごとに動画も用意して導入に工夫が凝らされている。ただ、これは人によると思うのだが、錯覚体験を一緒にしてくれる人がすぐ見つかる環境とは限らないし、集中して読む態勢になっているときにQRコードから動画を観ようというふうには私は気持ちが切り替わらないので、導入は難しいなあと感じた。
    まあ、この本を読もうという人は(私のように)何らかのきっかけが既にある場合も多いであろうから、あまり心配する必要はないのかもしれない。
    内容はキャッチーなところから入って脳科学的説明から幽体離脱を経てメタバースまで思いがけない広がりを見せた。ただ、若干繰り返し感が強いと感じる部分があったので星は四つ。

    「探究の階段」で著者が紹介されたのは以下の前後編。
    https://www.tv-tokyo.co.jp/tankyunokaidan/backnumber/index.html?trgt=20230302
    https://www.tv-tokyo.co.jp/tankyunokaidan/backnumber/index.html?trgt=20230309

  • 様々なからだに関する錯覚を紹介し、人の認知について考える本。錯覚を調べることで人の脳がどのように外界を認知しているのかがわかってくるのは実に面白かったが、一番ビックリしたのは最後の最後で錯覚と幽体離脱体験が結びつけて考察されていたこと。考えてみれば実に納得できることなのだが、今までここを結びつける発想はなかったな。

  • とりかえしのつかない遊び

  • ブルーバックスだからこそ、こんなおもしろい本がある

  •  いつも利用している図書館の新着本リストで目についた本です。
     「ブルーバックス」は時折手を伸ばしたくなりますね。今回は「認知科学」関係の著作ですが、“錯覚” をテーマにした解説本ということで興味を持ちました。
     ただ、私としては、脳科学的な観点から、“からだの錯覚”が生じるメカニズムを素人にもわかるように解き明かしてくれるのではと(勝手に)思っていたのですが、“現象の紹介”が中心で、そういった観点での解説はほとんどありませんでした。
     そのあたり、オリジナリティのあるテーマを取り上げた興味深い挑戦作ではあったのですが、ちょっと消化不良が残る読後感でした。

  • 145-K
    閲覧新書

  • 幻肢や幻肢痛は、四肢の一部を切断した人がよく使う言葉だが、これから言えることは、からだは決して触覚で表されるものではないと言うこと。つまり錯覚だ。

    幻肢と目に見える肢は、常に単一であろうとするが、これを実験的に感じることが出来ると言う例をいくつか紹介し、実際に読者に味わってもらうことが出来るようにしている。
    脳科学的な説明や、幽体離脱を科学すると言う章もあり、これはちょっとついて行けない感かあるが、簡単な仕掛けで、脳の錯覚を感じることが出来るのは面白そう。
    彼女や彼氏がいるなら、この遊びで更にお近づきになれるかも。

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著者プロフィール

名古屋市立大学芸術工学研究科准教授。工学博士。
2003年京都大学総合人間学部卒業。京都大学大学院情報学研究科、IAMAS、早稲田大学WABOT-HOUSE研究所を経て、2012年より現職。野島久雄賞(認知科学会)、Best XR Content Award(ACM Siggraph Asia)、世界錯覚コンテスト入賞(2019-2021)など多数受賞。

「2023年 『からだの錯覚 脳と感覚が作り出す不思議な世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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