マルクス解体 プロメテウスの夢とその先

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065318317

作品紹介・あらすじ

資本主義をこえていく、新時代のグランドセオリー! 人新世から希望の未来へ向かうための理論。英国で出版された話題書Marx in the Anthropocene(ケンブリッジ大学出版、2023年)、待望の日本語版! いまや多くの問題を引き起こしている資本主義への処方箋として、斎藤幸平はマルクスという古典からこれからの社会に必要な理論を提示してきた。本書は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論から、プロメテウス主義の批判、未来の希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語るこれまでの研究の集大成であり、「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。目次第一部 マルクスの環境思想とその忘却第一章 マルクスの物質代謝論第二章 マルクスとエンゲルスと環境思想第三章 ルカーチの物質代謝論と人新世の一元論批判第二部 人新世の生産力批判第四章 一元論と自然の非同一性第五章 ユートピア社会主義の再来と資本の生産力第三部 脱成長コミュニズムへ第六章 マルクスと脱成長コミュニズム MEGAと1868年以降の大転換第七章 脱成長コミュニズムと富の潤沢さ  【原書への賛辞】自然科学に関するマルクスの手稿への詳細な検証を通じて斎藤幸平が私たちに想起させるのは、マルクスがなぜ自然と資本主義の関係が根本的に持続不可能と主張したのか、ということだ。本書は、忘れ去られていたマルクスを私たちのもとに復活させる。長らく顧みられることのなかったマルクスを手がかりに、斎藤は、「脱成長コミュニズム」を力強く主張する。この理論的なアプローチは、「豪奢なコミュニズム」という抽象的な概念を対象にするのではなく、むしろ〈コモン〉の幸福を対象にして「豊かさ」という概念そのものを再編成しようとしている。ティティ・バタチャーリャ(共著書『99%のためのフェミニズム宣言』)傑作。これこそわれわれが待っていた本だ。斎藤は、マルクスに基づいて「脱成長」と「エコ社会主義」のワクワクするような統合を成し遂げている。ここにポスト資本主義への転換の秘密が隠されている。ジェイソン・ヒッケル(著書『資本主義の次に来る世界』)斎藤幸平はマルクス思想を完結したシステムではなく、運動のなかにある思想としてとらえている。彼の「脱成長コミュニズム」という果敢な表明は、現代のエコロジカルなマルクス思想、すなわち「人新世のためのコミュニズム」への決定的な貢献である。ミシェル・レヴィー(著書『エコロジー社会主義』)

感想・レビュー・書評

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  • 個人的に言えば、行き詰まった社会の中での次の一手として、脱成長コミュニズムはありだと考えている。

  • 難しい
    評価するほど理解できなかったので⭐️無し。

    人新世の「資本論」 は理解できる範囲であったが、こちらは学術書。
    少なくとも資本論を読破した方が対象でした。

  • 『資本にとっては『どんな限界も、克服されるべき制限として現れる』(資本論草稿集)

    今の時代のベースになっている価値観はこれだと思った。
    環境問題に勝つ、競合に勝つ、就活に勝つ、自分に勝つ、、、

    環境問題のような大きなスケールだけでなく、個人が抱えるキャリアやワークライフバランス、育児や介護といった問題に至るまで、「克服こそが正義」というマジョリティの価値観が、今の時代になって違和感として現れてきてるんだろうなと思った。克服できるものが少なくなってきて、克服する難易度も上がった結果、あらゆる生きづらさを生み出してる説。

    そこから逃れるためには?

  • 10月末に購入している。サイン本だったのが大きい。そこから、2ヶ月ほど積読。その後2ヶ月くらいかけてやっと読み切った。「人新世の資本論」では具体的な政策の話が多かったが、こちらはほとんどが理論的な話で、感覚的には3割くらいしか理解できていないと思う。それでも、十分面白く、興奮しながら読んだ。最初に、批判的なことを書いておくと、著者自身も書かれているが「環境危機を有意義に語るにはある種の人間中心主義が不可欠なのだ」という点。いつも言っていることだが、環境問題なんて地球にとっては屁でもない。だから「地球を守る」なんて本当におこがましい。まあ、著者はそのこともふまえて議論しているということだろう。最初に気付かされたのは、グローバルノースで今まで通り、もしくは今まで以上に便利で裕福な生活をするために、グローバルサウスあるいは未来へいかに負担をかけているのかということ。分かってはいたことだが、きちんと言語化されていて再認識できた。それにしても人間の欲望は留まるところを知らない。それが資本主義なのだろうが、いくら便利で物質的に豊かになっても、いっこうに精神的な豊かさは得られていない。常に何かに急かされるように、まだまだ使えるものを廃棄し、新しい商品に手を出す。欲望を駆り立てるような広告が常時目の前に現れる。会社では常に右肩上がりを要求される。子どもの数が減る中で、何をそうあせるのか。持続可能な範囲でやっていけばいいではないか。競争をあおるのはよしたらどうか。同業他社とはうまく棲み分けすることを考えたらどうか。本書でも書かれているが、ブルシットジョブをなくし、教育や福祉など、よりエッセンシャルな仕事に関わる人が増えることで、労働時間を短縮することができるのではないか。こういう仕事は環境負荷が小さいわけで「脱成長コミュニズム」の世界では重要になっていくのだろう。明日から25年ぶりに管理職から外れて定年退職までの1年間を過ごすことになる。どんな働き方をすることになるのだろう。子どもたちに対してすることは何も変わらないのだけれど。さて、本書の中に、マッカラーズの小説の中で見つけたマルクスのことばに出会った。「各人はその能力におうじて、各人にはその必要におうじて」(コーダ綱領批判)これがおそらく直訳なのだろう。それを村上春樹が付け足しているのか、どうなのだろう。「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」こちらの方が分かりやすいし、その通りだと思う。必要最低限の収入があり、食うには困らず、医療や教育は無料で受けられる世の中が僕には望ましい。そうであれば、息子の心配もしなくてすむのだが。

  • 前著「大洪水の前に」と重複するところも多い気はするが、よりマルクスのテクストに深い入り込みつつ、晩年のマルクスの思想を再構築していく。

    そのプロセスに知的好奇心が動きつつも、なんで今更マルクスが著作にできなかったことを今あれこれと推論しなければいけないんだろうという気持ちがしばしば起きてしまう。

    マルクスが本当に考えていたことはこうなんですと言って、20世紀に破綻したと思われるマルクス主義を環境、持続可能性という観点から再構築しなければいけないんだろう?(そういう意味では、タイトルの解体というより再構築という方が相応しいと思う)

    それって、マルクスの神格化ではないか?

    という批判は、当然、著者はわかっていて、そういう趣旨ではないのだというわけだけど、それでもそういう思いを禁じ得ないわけだ。

    マルクスの資本主義理解は、今をもっても正しいところはたくさんあると思う。また、時代の変化を踏まえながら、理論的に発展したところも多い。

    一方、環境問題や持続可能性を踏まえた理論もたくさんあるのだから、「現在」の資本主義理解と環境問題理解を組みああせて、新たな理論構築した方がいいんじゃない、と思ってしまう。

    しかしながら、マルクス主義系の研究者にとって、まだまだマルクスの威光は効果的なようで、彼らにとってこうした「マルクスは実はこう思っていた」というのが意味があるわけかな?

  • 東2法経図・6F開架:309.3A/Sa25m//K

  • アクター・ネットワーク理論やマルチスピーシーズ人類学など最近よく聞くキーワードが「自然」と「社会」の一元論と捉えられ、それらに対して自然を「素材」と「形態」の2面から捉える方法論的二元論の立場から批判を行なっている箇所は、批判的な視野を持って近年の思想を読み解く視野が開ける面白い論説だった。
    一方、脱成長コミュニズムやコモンズ的な潤沢さに関する議論については、あくまで余裕のある先進国の人が想起するビジョンでしかないという印象。
    既にしてコモンズが失われ、環境危機がスタートしている社会において、莫大な人口を抱えた状況で途上国の人がこの理論を受け入れることは到底なさそうな気がする。
    あくまでマルクスはこう読むことができるという点で批評的に面白かったという感覚。

  • OPACへのリンク:https://op.lib.kobe-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2002330906【推薦コメント:『人新世の資本論』で一世を風靡した齋藤幸平。脱成長を掲げる彼の熱意は留まるところを知らない。】

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著者プロフィール

1987年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科准教授。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。専門は経済思想、社会思想。Karl Marxʼs Ecosocialism:Capital, Nature, and the Unfinished Critique of Political Economy (邦訳『大洪水の前に』)によって権威ある「ドイッチャー記念賞」を日本人初歴代最年少で受賞。著書に『人新世の「資本論」 』(集英社新書)などがある。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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