トヨタのEV戦争

著者 :
  • 講談社ビーシー
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065330258

作品紹介・あらすじ

EV(電気自動車)が好きでも嫌いでも関係ない。負けられない戦いがここにある! 2023年4月、電撃的な社長交代を果たしたトヨタは、佐藤恒治新体制のもと新たなEV戦略を次々に発表している。マルチパスウェイ(全方位戦略)を維持するとしながらも、国、地域をあげた欧・米・中によるEV覇権争いに乗り遅れることはできないと、腹を括ったのだ。「壮大なる消耗戦」の様相を呈してきたこの戦いに、トヨタはどう挑み、勝ち抜こうとしているのか? その戦略を詳細に分析するとともに、世界の自動車産業がこの先に進む、未来の姿も提示する。 日々、大胆に進む「100年に一度の変革」を、自動車産業No.1アナリスト・中西孝樹がダイナミックに、精緻に描く必見の書、緊急出版!第1章:トヨタつまずきの本質論第2章:CASE2.0と国内自動車産業の六重苦 第3章:世界のEV市場の現在地と未来図 第4章:トヨタのマルチパスウェイ戦略 第5章:10年に一度のサイクルで訪れるトヨタの危機 第6章:2020年に再来したトヨタ最大の危機 第7章:テスラの野望 第8章:次世代車SDVへの進化 第9章:トヨタ新体制の戦略 第10章:トヨタに求められる変革   最終章:国内自動車産業の未来 

感想・レビュー・書評

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  • EVで車体が重くなりタイヤの摩耗が激しいとか、そもそも価格が高すぎるとか、ガソリンの匂いが好きだとか。中々普及しないEV。日本にはハイブリッドがあるし、それがベストではという意見もあるが。トヨタは、マルチパスウェイ戦略。全方位で攻めていくという事だ。吉凶どうなるやら。

    日本では2035年乗用車を100%電動化(ハイブリッド車を含む)、商用車は2040年までにカーボンニュートラル燃料を含めて100%電動化を目指す。リーマンショックが自動車業界に齎した3つの構造変化①需要構造が新興国に変わるパラダイムシフト②設計標準化、部品共通化による差別化要素の縮小とそれによるコスト競争激化③グローバルなサプライチェーン再構築におけボッシュのようなメガサプライヤーの台頭、自動車業界は、変化する事を掲げているし、既にその過渡期にある。

    本書はトヨタの負の面も見逃さない。ダイハツの不正、ドアリム内部にスリットを入れ、壊れやすくする事で乗員の安全性を確保。第三者調査により安全性には問題がなかったが、安全を担保した開発をしながら法規違反した試験不正は根深い。日野自動車のトラックやバスに搭載するエンジンの排出ガス、燃費の認証不正。豊田自動織機のフォークリフト向けエンジン不正。2021年には愛知トヨタのヨンゴー車検不正。続々と。製品だけではなく、従業員に対してもあまり良い噂は聞かない。

    他方でテスラを賞賛。テスラが電気を蓄えたり放電する巨大な電流会社になる。マスクは世界二位のビリオネアだが、情熱を持ったハードワーカー。ギガキャストを製造する巨大な鋳造試作機をUBE旧宇部興産とトヨタが共同開発し、2026年の次世代EVで採用決定。これは、テスラが2020年のモデルYに採用して話題となった技術。しかし、テスラだって順風満帆ではない。

    変革の過渡期にあり、今までの常識が通じない。だからこそ、見どころ満載、面白い業界である。本書はやや専門的な部分も恐れず切り込み、その面白さを伝える良書である。

  • トヨタのEV戦争

    【本書の3つの魅力】

    ①著者出自;
    自動車業界アナリスト20年超の実績があること。

    ②出版時期;
    2023年度出版であること。

    ③EV;
    技術、国内そして海外マーケットの動きがわかること。

    海外勢の躍進がめざましいEVに、トヨタがどう挑もうとしているのか?技術含めて理解できる著書となっています。

    【読み終えて】
    トヨタを含めた国内自動車メーカーがEVを推進する流れは益々強くなります。
    したがって、メーカー傘下のサプライチェーンの各企業がそのリスクにどのように対応(隣接市場か?それとも新規市場か?)していくのか?は非常に重要なテーマ、課題です。
    だからこそ、この領域に事業機会が潜んでいるともとらえることもできます。

    ーーーーーーーー
    <本書の内容>
    【EVの競争力とは?トヨタはどう動く?】
    電気自動車(EV)の競争力は、ハードウェアよりもソフトウェアに大きく依存しています。ソフトウェア・ディファインドビークル(SDV)がその象徴です。

    トヨタでは、次世代のEV専用プラットフォームが2026年からレクサスから導入される予定です。これは、当初の2029年から2027年へと前倒しになりました。さらに、佐藤新社長の下で1年前倒しの計画が進行中です。

    ーーーーーーーー
    【高すぎる参入障壁。日本メーカーが対峙する北米市場】
    北米市場では、現地調達条件を満たしたEVが約100万円の税控除を受けることができます。

    2023年4月からは、米国メーカーのみの22モデルに適用されています。日本メーカーはゼロ社です。また、2024年以降、現地調達比率の範囲が電池部品や電池鉱物まで拡大します。
    これは、アメリカの中国のEV躍進の脅威に対する政策の一環です。したがって、日本メーカーにとって売上高比率の高い北米市場での厳しさが増していると理解できます。

    ーーーーーーーー
    【競合の次なる1手。日本市場へ・・・】
    ここではテスラ以外を記述します。
    ◆現代自動車グループ(ヒョンデ);
    2022年の世界生産台数は5位から3位へ躍進しています。着眼したいことは、世界市場でブランド認知が著しく向上していることです。この背景が、2022年4月ワールド・カー・オブ・ザイヤーに『アイオニック5』が選ばれたことです。そして、さらに『アイオニック6』が2023年のワールド・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。デザインがポルシェを彷彿させる洗練さをもっていると話題です。

    ◆中国BYD。
    2022年、テスラについで2位です。また、中国市場シェアは2019年2%から2023年11%まで上昇しています。
    競争力はずばり価格です。
    この成果は、需要の大きい大衆車市場に対して、ガソリンよりも安いEV車を順次投下していることです。
    なぜ、安くできるのか?それは、サプライチェーンを川上から川下まで垂直統合しているからです。その結果、廉価にEV専用プラットフォーム、プラグインハイブリッド技術そして電池を生産することを可能としています。
    BYDは、トヨタならびに日本メーカーにとってさらなる脅威となる可能性が高いです。なぜなら、2024年以降に日本国内で正規ディーラー200店舗の確立を急いでいるからです。

    ーーーーーーーー
    【トヨタのEV戦略とサプライチェーンへの影響は?】
    テスラを含めた外国メーカーは、2024年から大衆車市場に対するEV投入を加速させます。

    一方で、トヨタは、2028年までに4つの新型電池の実用化を目指しているという状況です。この実現により、コストを20%削減し、ワンチャージで1,000キロ走行可能なEV車が完成します。また、トヨタは、次世代EVプラットフォームを小型も大型も1種で完結させるという生産戦略を進行中です。

    しかし、書籍では非常に厳しい戦いになると記述されています。
    具体的には、「2027年に向けて米国と中国市場でシェアを失い、規制対応コストで収益性を大きく悪化させるリスクが高い」としています。さらに、「2026年以降にEVファクトリーの成果が出るまでは、EVでの逆転劇を演じることは困難に映る」とも記述しています。

    トヨタがEVを加速させることは、トヨタのグループ企業ならびに関係するサプライチェーン企業にも影響は出ることは周知のとおりです。

    2030年にEVシフトが15%、2035年が30%に上昇とした場合、モーター出荷額は2.4兆円から1.8兆円へ縮小します。部品出荷全体を見れば、18兆円から15兆円へと縮小すると予想されています。

  • 発売当初から気になっていましたが!
    最近巷の報道で、世の中はハイブリッド推し?

    と、読む意味あるのかなぁと思いつつ、
    図書館の予約で回ってきたのでとりあえずと
    軽い気持ちで読んでみました。

    本書は単純にEV vsガソリンという話でなく、
    車の生産現場、考え方からから日本は遅れているという個人的に読む価値ありの内容でした。

    技術用語が多く、読むのに苦労しましたが、
    今後の世界の自動車産業を知る上には充分すぎる内容でした。

  • 本書にトヨタの報道は本音に基づく情報が報道されているように見えない、とある。
    確かに、中国で日本車のシェアが落ち、素人目にもトヨタのEVがライバルを引き離しているようには見えないし、冴えない印象すらある。それでも過去最高益の報道がなされれている。確かに著者の指摘通りだ。
    著者はEVシフトが遅れれば、2026年以降のトヨタに待つのは「収益の下り坂」、悪くすれば「谷」、最悪「崖」だという。またEVは内燃機関自動車の代わりとなる印象が強いが、それだけではない。ハードの利益が減り、ソフトの価値が増し、収益構造が変るのだと。物作りに価値を見出した日本企業にとって、EV本体で稼げないのは大転換になるのだろう。
    本書は一般向けなのだろうが、ソフトの解説などはついていけない部分もあり、またカタカナとAcronymが大変を占める段落があったりして、スラスラ読めなかった。それでも、表面だけで理解していた自動車産業の現状と未来が理解できて良かった。

  • 昔、日本の自動車産業の強さは『擦り合わせ』にあると藤本隆宏氏が書いていた(書名は覚えていない)。その強さでは勝てない時代が訪れたことを知らされる一冊。

    本書が指摘するようにEVの是非論(EVだけで脱炭素が達成されるわけではない云々)は意味がなく、世界のルールが、EVオンリーに変わってしまっている。EV対応にしくじればトヨタをはじめ日本の自動車産業は総崩れになることを本書は明らかにしている。第7章「テスラの野望」を読むと、イーロン・マスクは恐ろしい異才でトヨタを捻じ伏せる力を持っている、と震撼する。

    日本の自動車産業の現状を知るには良い一冊だと思う。ただ、業界知識がないと専門用語が多いので辛いと思う(斯く言う私も辛かった)。著者は、「おわりに」で、近年、すっかりトヨタに甘口になっている自身を反省した(上で本書を著した)、と書いているが、その筆致は鋭いどころかトヨタに甘々に思えた(豊田章男前社長持ち上げ過ぎ)。ので、☆ひとつ減点。

  • フル装備、全方位マーケットの巨大な企業が出遅れるのは仕方ない。新たなマーケットガバナンスをどう描けるのかの問題。イノベーションの観点のみで語られるべきでは無い時代に入った。

  • 高範囲な関心時を分かりやすくまとめられており、良かった。

  • トヨタの歴史から今後の予測まで書かれている。また他社のことも少々。会社のことだけでなく、EV関連の社会事情(法律や規則)や技術的な進捗についても理解できる。

  • 配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
    https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=10275493

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著者プロフィール

株式会社ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト
1994年以来、一貫して自動車産業調査に従事し、米国Institutional Investor(II)誌自動車セクターランキング、日経ヴェリタス人気アナリストランキング自動車・自動車部品部門ともに2004年から2009年まで6年連続第1位と不動の地位を保った。バイサイド移籍を挟んで、2011年にセルサイド復帰後、II、日経ランキングともに自動車部門で2012年第2位、2013年第1位。2013年に独立し、ナカニシ自動車産業リサーチを設立。

「2020年 『自動車 新常態(ニューノーマル)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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