虚構推理(20) (講談社コミックス月刊マガジン)

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  • Amazon.co.jp ・マンガ (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065334195

感想・レビュー・書評

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  • 自殺に見せかけ密室にしたはずが、怪異が密室を開けてしまった事件の行方が語られる『かくてあらかじめ失われ……』完結。そこからメカ琴子復活を挟んで、新章『飛島家の殺人』が始まる!

    『かくてあらかじめ失われ……』(前巻より引き続き)
    怪異が密室開きで犯人を驚かせようと思ったら「計画通りだ!」というリアクションをされてしまい、腹いせに犯人を匿名で通報!怪異のせいで計画が崩れた犯人・有働は逮捕された。しかし、殺された田内栄貴(たうちえいき)の元妻・志乃に罪を着せようと偽造した遺書の影響は残っていた。被害者の娘・美矢乃と、琴子に一目惚れしてしまった幼馴染・昴。二人は不可解な状況を解くべく推理し始めるが──。

    偽造された遺書は琴子の手の中に!怪異が絡んでややこしくなった事件をどう収めるのかと思ったら、どんどんややこしくなる(笑)
    会社や志乃の不正を告発しようとした田内が、会社側だった有働によって自殺に見せかけて殺されたのが始まり。有働の計画では志乃の不正を告発する偽造した遺書を、第一発見者となる予定の志乃に偽装の痕跡ごと処分させ、疑いを向かせるつもりだった。それが遺書は消えるわ、密室は開いてるわ、通報されるわでホラーに(笑)

    琴子は美矢乃と会い、偽造された遺書を見せ、虚構の推理を伝える。圧倒的作り話のリアリティが面白い。さらにそこから暴かれる予想外の真実。事件じゃないところでどんでん返しが回り始める地獄の観覧車。もうどうにでもなーれって言いたくなる人間関係のパズルにしてやられたなと。とりあえず、琴子には恋人のおいなりさんをつまんでみてほしい。

    『MK復活』
    六花が再び製作したメカ琴子2号!それには簡単に破壊されないように、とある工夫が施してあって──。コミカルな話ではあるんだけど、六花の存在が怪異に馴染んできたのが怖いところ。裁く時は情を挟まない琴子への非情感を演出して、怪異側から疎まれるように仕向けているのかな?九郎は確かに琴子の絶対的な味方ながら、怪異はそうとも限らないのかな…。

    『飛島(とびしま)家の殺人』
    「どうか走太郎様が巻田孝江を確かに殺せたと 龍子奥様に納得させられないでしょうか」
    龍子の長男・頼行の娘である椿にそう訴えたのは、使用人の幽霊・植村健三だった。一族で唯一の霊感がある椿は戸惑いながらその話を父に問う。すると、五十年前に一族を襲った事件が掘り起こされて──。

    殺せなかった証明ではなく、殺せたと証明してほしいという謎めいた依頼。さらに、五十年前から黒いベールをかぶり続ける龍子の胸の内には何があるのか。表向きは腹心だった孝江が横領して失踪したとなっているが、走太郎が殺したことに親族は疑いを持っていない様子。動機も証拠もある。ただ、確実に殺せたかだけがわからないという謎がしみを作っている。その隠蔽された汚点。そこにはいったい何が潜んでいるのだろうか。

  • 新章開幕、「飛島家の殺人」。

  • 複雑だと感じるのはいつものことだけれども、今回は余計に複雑に感じましたね。
    もう一度前巻から読み直してみようと思います。

  • 今回もミステリーとしてしっかり面白かった。家物シリーズのミステリーの導入としても面白かったので、引き続き続刊期待。血縁関係周りはすこしこねくり回し過ぎかなと思った。

  • 化け物が密室を開いてしまったという事実を隠しながら虚構の真相を提示しなければならない『かくてあらかじめ失われ……』
    どう考えても厄介な状況。けれど琴子はさほど労せず変わりの真相を用意していたね
    それというのも虚構を納得させなければならない対象が限定されていたという点が大きいのかな

    一方で琴子が推理披露の相手に選んだのが被害者の元妻である志乃ではなく、娘の美矢乃であった点が特徴か
    つまり怪異が関わる事件において琴子が対処を必要と判断したのが偽造遺書に悪評を書かれている志乃ではなかったなら、美矢乃は美矢乃で偽造遺書に何が書かれているかを別口で深く心配しているという話になる

    琴子が語る真相は化け物が密室を開いたなんて事実より驚きに満ちたものだったね
    化け物でも開けない心の密室。それを優しく解く琴子はまさにお節介としか言い様がないのだけど、彼氏彼女という点においては琴子に一日の長があるのだから、別の見方をすれば後輩へのアシストと言えなくもないのか
    ……それにしては昴にやったショック療法は酷すぎた気がしなくもないけど(笑)


    小説版を読んだ時は色々と衝撃を覚えた『飛島家の殺人』、ストーリーの衝撃を期待して読み始めたら冒頭から主張の強い幽霊が現れてギャップで笑ってしまったよ

    さておき、話は家を隆盛の波に乗せた女傑が抱える密室を開くというもの
    また、椿が事件解決に関わるのは怪異が関わっているが、それ以外に怪異の姿はあまりなく。その意味では真っ当なミステリと言えるね

    1つ目の密室は龍子のベール、もう一つの密室が殺害現場となるわけだけど、どちらも事の始まりは50年前に有る
    調査なんてしようがないし、関係者の話を聞く手段も限られている。厄介な条件に思えるが、反面存命の関係者を納得させるだけで良いとも言える
    それならば、これまでも言葉を巧みに操って事件関係者を翻弄してきた琴子の得意分野
    厄介であっても彼女の苦労は少ないと言える

    他方で、密室がどのような形であれ開かれるとなると、問題になってくるのは開かれた密室の中に関係者が何を見るのかという点
    都合の良い虚構か都合の悪い真実か
    果たして、頼行と椿は分厚いベールの向こう側に何を見ることになるんだろうね?

    あと、小説を読んでいる際も異様に感じられたベールを被り続ける龍子の在り様。こうしてマンガとしてビジュアルが見えるようになると、より一層に龍子の異様さが強調されて感じられたよ

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著者プロフィール

【片瀬茶柴(かたせ・ちゃしば)】
本作にてデビュー。

「2021年 『虚構推理(15)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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