レーエンデ国物語 喝采か沈黙か

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1948
感想 : 140
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065335833

作品紹介・あらすじ

毛布にくるまって読みふけったあの頃のあなたへ――こんなファンタジーを待っていた!待望の第三弾が早くも登場

感想・レビュー・書評

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  • レーエンデ国物語 第三部
    『喝采か沈黙か』
    今回は、前作より約100年後、前々作より約250年後のレーエンデが描かれており、リーアンとアーロウという双子の兄弟を中心に物語が紡がれています。

    前作『月と太陽』が《動》の革命とするならば、今作は《静》の、革命という趣です。

    双子の兄リーアンは、天才劇作家、弟アーロウは、凡庸な俳優(男娼)として、革命の英雄テッサ・ダールの戯曲を完成、上演する事で、レーエンデの人々の心に訴えていこうとします。

    今作を読みながら、文化、芸術、そして歴史の大切さを教えられた様な気がします。

    でも、その歴史さえも、時の権力者の都合によって、改竄されたり、隠蔽されたりしているのかも知れません。

    実際 100年前の事は、正確には分からないし、100年後の事も・・・

    と考えている自分がこれまた滑稽に思え
    凡庸なりに、日々を噛み締めながら過ごして行こうという気持ちにもなりました。

    双子は、テッサの足跡を訪ねる旅をします(取材旅行)約100年前のテッサの事を語り継いできた人々(テッサと関わりのあった人々の子孫)との出会いは、二人に感動と決意を与えていきます。

    この第三部は、ちょっとしたまとめ的なものかも知れません。

    最後に、これは作者多崎礼氏の演出だと思いますが、作中に第一部の中心人物ユリアとトリスタンの会話が聞こえてくる場面があります。

    皆さんも探して見てください。




  • 革命の話をしよう
    歴史のうねりの中に生まれ
    信念のために戦った者達の
    夢を描き未来を信じて
    死んでいった者達の
    革命の話をしよう


    さぁ、さぁ、待ってました!
    レーエンデ国物語第三弾


    第一弾はユリア
    第二弾はテッサ
    それに続き、信念のため戦った第三弾の英雄は双子の兄弟リーアン・ランベールとアーロウ・ランベール


    今回の革命の武器はペンと戯曲
    天才劇作家のリーアンがレーエンデの英雄テッサ・ダールの真実を伝えようとする


    レーエンデの自由のために戦ったテッサ
    その奮闘むなしく歴史から彼女は忘れ去られた


    剣では世界は変わらなかった
    力では人の心は動かせなかった


    だが、戯曲は直接心に働きかける
    刃のような切れ味で心臓に突き刺さる


    リーアンの戯曲は革命を起こし、世界を変えることができるはずである


    奪われた、
    レーエンデの自由を!
    レーエンデの未来を!
    レーエンデのすべてを!
    きっと取り返せるはずである…


    この物語は喝采か?それとも沈黙か?
    それは言うまでもない!


    喝采だ!

    • 1Q84O1さん
      ユッキーさん
      何読んでも泣けるw
      涙腺が暴走してますね!w
      ユッキーさん
      何読んでも泣けるw
      涙腺が暴走してますね!w
      2024/02/15
    • 1Q84O1さん
      mihiroさーん
      リクエストして読んじゃいました^_^
      レーエンデに自由が戻るまでまだ続きそうですね!
      mihiroさんが戻って来るのをレ...
      mihiroさーん
      リクエストして読んじゃいました^_^
      レーエンデに自由が戻るまでまだ続きそうですね!
      mihiroさんが戻って来るのをレーエンデで待ってます<(`・ω・´)
      2024/02/15
    • 1Q84O1さん
      かなさん
      レーエンデの自由のためにかなさんもぜひお越しください!w
      かなさん
      レーエンデの自由のためにかなさんもぜひお越しください!w
      2024/02/15
  • リーアンが命をかけて書いたレーエンデの月と太陽それが最後アーロン?がリーアンに成り替わりレーエンデ人を鼓舞していった。兄弟の熱い想いが伝わってきてじーんときた。

  • 記念すべき100回目の感想はこちらに決定しました!『爆発物処理班が遭遇したスピン』(漸くタイトル覚えました)と悩んだ結果、レーエンデ国に帰国する事と相成りました。

    「レーエンデに自由を!」ユリアとテッサが全てを掛けて駆け抜けてきた長い歴史。
    いよいよ本作で革命への下地が完成するようです!
    そして憎いのが今回は武器を持って戦うのではなく、ペンでもって世界を変える双子の話です。正に「ペンは剣よりも強し」
    国の文明も驚く程の進化を遂げていて、久方ぶりの帰国を遂げた私は驚きました。

    しかし相変わらず銀呪病は消えておらず、幻魚も現れて民を恐怖へと陥れています。
    その恐怖への対処法に恐ろしい制度が導入されており、レーエンデの民の苦悩が続いているどころか益々目も当てられない事態になっている事が窺えます。
    「レーエンデの自由は死んだ」と表されているようにイジョル二人のレーエンデ人に対する差別が公認となり、店には「レーエンデ人お断り」の張り紙。
    おいおい、これじゃあナチスだよ!
    特にウル族への抑圧が酷い、酷すぎる…。

    今回の舞台の始まりはジャックザリッパーが横行していた頃のロンドンのスラム街を彷彿とさせる歓楽街。娼婦の元に産み落とされた美形の双子が主人公です。
    全く同じ容姿なのに他人の事を優先ばかりするアーロウと、天才的な劇作家の才能を持つ不器用で口の悪いリーアン。
    リーアンが差別を越えて全ての民に自分の作品を発表する機会を得た事で、歴史から消されようとしているテッサの本当の姿を調べようとする為に旅に出ます。

    お陰で我々読者は最早懐かしく思えるユリアとトリスタン、テッサ達革命軍と再会する事が出来ます。
    特に今作はとある仕掛けのお陰で常にテッサの命を懸けて戦った姿を追う事になり、度々『月と太陽』を思い出しては胸が熱くなるのですが、この構成が素晴らしくてレーエンデ国から戻れずに気付けば一気に読了してしまいました。

    今回は戦争ではないし劇作家のお話だから前よりはヘビーじゃないだろうと高を括っておりましたら、レーエンデ国はやはりそんな甘い場所ではありませんでした。
    どんどん不穏な空気になって行き、中盤を過ぎた頃には「そうだよね、思想を持って戦うのも命懸けだよね!!」と後半に差し掛かって暫くはずっと洟をすすりながら読んでいました。

    独り部屋の隅でヨギボーに埋まって泣きながら本を読んでいる姿は怪しい事この上ないですが、上級市民のイジョルニ人に負けてはいられないと紅茶だけはお高いのを飲んでいました。

    このシリーズも何も前情報無しで読んだ方が世界に入り込めると思いますので、100回目記念ではありますがこれ以上書くのは控えておきます。

    ユリアが始めてテッサが繋いだ物語を果たしてリーアンとアーロウは全ての民に届ける事が出来るのか。ぜひぜひ皆さんもレーエンデ国へのパスポートを入手してみて下さい。
    彼の戯曲は世界を変えるかも知れない。

    最後まで読み終えた後、暫くは感動のあまり呆然として帰って来られなくなりましたので、皆さんもご注意を。
    続編は2024年、あと2冊…もう今から待ち切れません!!

    そして図書館で借りた本にはやはり特典の小冊子は付いていませんでした。残念…。

    余談なのですが、知人が「デモとかしている暇があったら、自分磨きをすれば良いのに」と言っていた際に、革命の話をいくつか読んでいた私は、自分磨きよりも何よりも譲れない時があるんだよ…!!と言いたかったのですがチキンなので飲み込みました。(こんな事では革命家になれない…)

    • yukimisakeさん
      おびのりさん、ありがとうございますー!(*^_^*)
      そしてみんみんさんのコメント欄で言うの忘れてたんですがおびのりさんも読んで下さい、孤島...
      おびのりさん、ありがとうございますー!(*^_^*)
      そしてみんみんさんのコメント欄で言うの忘れてたんですがおびのりさんも読んで下さい、孤島の鬼笑
      2023/12/17
    • おびのりさん
      了解!
      了解!
      2023/12/17
    • yukimisakeさん
      やっほーい(о´∀`о)\( ˆoˆ )/
      やっほーい(о´∀`о)\( ˆoˆ )/
      2023/12/17
  • 第三部。今回の物語は第二部を抜きにしては語れない。(『月と太陽』を過去の英雄譚として)詳細を知らず読んでも話の内容は十分に伝わるが、どうにも面白みのないものになるだろう。個人的には今作が一番ハマり込んだ。正確に言うと、第二部までの物語が再び息を吹き返すような今作に一番ハマり込んだ、かな。革命の話は剣をペンに変えて語られる。第二部までは革命の話を読む読者であったが、今回は読者でありながら芝居の観客のひとりになったような感情の高ぶりを感じた。

    今作は前作の約120年後の物語。聖イジョルニ帝国は安定した平和を取り戻し、文化と産業が発展していく。一方で、レーエンデの民は身分的に虐げられ、誇りを失い抵抗を諦めていく。英雄テッサの活躍は歴史から消され、声高に叫ぶようなら『犠牲法』の生贄として幻魚に生きたまま食い殺される。そんな世界でも細々と受け継がれる革命の火。武力による革命ではなく、文化による革命で人々の心に訴えかけようとする双子のリーアンとアーロウ。読み進めるほどに熱量が増して全力で駆けていくかのようだが、真実と運命を知った時の過酷な現実は無慈悲である。それを踏まえて選んだ2人の未来は、大喝采を受け広がっていくだろう。リーアンの最後の決断は兄としてずるいほど素敵だ。



    読み終えてない方はここで閉じて、この先のつぶやきは気にせずに読み始めてください。





    ひとつだけ。
    「開幕」の場面でこんなセリフがある。
    「(省略)後はアーロウに任せて、(省略)」

    あれ?
    この時のこの舞台描写の時は…?
    読み違えてるのか?
    でも、「いくぞ、リーアン!」という気合いの言葉があるから、やっぱり…?
    もし、読み違えてないなら、言葉通りの意味ではなく、気持ち的なことで声をかけたのか?
    もう、いいんだよ。というような?
    ちょっと、読み返してみよう。

  • レーエンデ3の一冊。

    ため息が出た。
    称賛の。
    それぐらいとても好きな巻になった。

    あの苦しみからさらに時が経ち、若き兄弟が新たな歴史を刻んでいくストーリーは自由という言葉が葬り去られた地、上級と下級に区別され生きるレーエンデの民の苦しさに心寄り添わずにはいられないほど。

    これまでの時間が思い出されるだけに悔しさと怖さが絶え間なく続く。
    と同時に光を求めて捲るページ。

    そして全てを見届けた一人の観客という自分がいた。

    自由への一歩にどれだけの血と熱が注がれるべきなのか。

    喝采か沈黙か。

    人の心を動かすのは紛れもなく、人の熱。

  • 今までの布石が効き始めた。

    英雄譚は遂に語られた。

    次は民が立ち上がり革命を起こす番ではないかしら?

    次巻楽しみ

  • 前作の英雄譚が揉み消され、忘れ去られ、しかし戦争が終わったことにより仮初の平和を手に入れたレーエンデ。前作までが凄まじい戦いと弾圧の様相を見せていた分、今作は穏やかに読める。

    産業と芸術の発達した世界で、芸術の持つ力の大きさを実感した。多くの作品に囲まれた私たちでさえ、芸術作品に心を動かされるのだから、今まで芸術作品に触れたことのない人々にとって、その影響力は絶大なものだと思う。

    相変わらず社会の動きや人々の心理、世界観の作り込みが素晴らしくて、本当に地球のどこかで起こっているのでは?と錯覚してしまうほど。

    そしてシリーズものの楽しみ、前作との繋がりを見つける面白さもあって、よかった。ファンタジーだけれど歴史物でもあるので、これからも年表をつくりながら、キーワードを押さえながら楽しく読んでいきたい。
    一言でいうと、どハマりしている作品。

  •  喝采か沈黙か──全てを読み終えたあとその意味が明らかになるでしょう。
     天才劇作家リーアンと、レーエンデの俳優であり男娼のアーロウは、ノイエレニエの下町で双子として生を受ける。母に捨てられた天才と凡人は愛を知らない。自由奔放に身を任せているかのようで天才がゆえの葛藤に兄は苦しみ、生きている意味を見い出せないまま運命に抗えずに演じ続けて名を馳せる弟。しかし不器用ながらも真実の愛に辿り着いていく勇姿は舞台の上で輝かしく、生きた証をしっかりと歴史に刻んだのだと思いました。魂と魂の戦いを熱く書ききった作者に敬意と親しみを覚えました。物語に沿うように進む戯曲にも心を奪われます……拍手喝采!

  • レーエンデ国に入国するたびに感動して、その革命の話を読む度に涙する。
    今作もめちゃくちゃ面白かった。好きだった。感動したし人に勧めたいと思った。
    兄弟や他人と比べては相手のその才能に嫉妬して羨望して、生きていくことを考えるほどに自己嫌悪と希死念慮に襲われる感覚が痛いほど分かるからローアンへの感情移入が止まらなかった。
    兄弟愛も見どころで、旅の途中お互いを褒め合うシーンは胸に来るし、ニヤけてしまう。個人的に一番好きな場面。

    自分には価値がなく才も何も無いと思うと生きていくのが苦しい。けれど凡庸でいいのだと、凡庸だからこそ感じられる幸せもあるのだと気づけた時の晴れやかな気持ちは絶対忘れない!

    また、差別とは身分が高い方が一方的にしてるのではなく、低い方が自ら自分達の価値を下げて卑下しているだけなのかもなと思考した。
    「政治家は」「お金持ちは」「男は」「女は」「親は」と主語を大きくしても、中には理解してくれる人もいるし、信じてた人ですら裏切ることだってある。あくまで人間は一人一人違うことを思い知らされた。

    「愚かな自分を正当化するために、誰かの善意を疑う馬鹿」にならないようにしたい。

    次回作も楽しみ早く読みたい!!!

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著者プロフィール

2006年、『煌夜祭』で第2回C・NOVELS大賞を受賞しデビュー。著書に「〈本の姫〉は謳う」、「血と霧」シリーズなど。

「2023年 『レーエンデ国物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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