台湾の歴史 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065340325

作品紹介・あらすじ

経済発展と民主化を達成し、ますます存在感を高めている「台湾」は、どんな歴史を歩み、どこへ向かうのか。2024年1月の総統選挙を控えて、その歴史と現在を知る文庫版。その歴史は「海のアジア」と「陸のアジア」がせめぎ合う「気圧の谷間」が、台湾という場所を行ったり来たりした歴史だった。その動きから生じる政治・経済の国際的な激動の中で、多様な人々が織りなしてきた「複雑で濃密な歴史」を見つめることなしに、現在の台湾を理解することはできない。はるか以前から、さまざまな原住民族(先住民族)が生きていた台湾島が、決定的な転機を迎えたのは17世紀のことだった。オランダ東インド会社が初めて「国家」といえる統治機構をこの島に持ち込んだのである。短いオランダ統治の後、明朝の遺臣・鄭成功ら漢族軍人の時代を経て、清朝による統治は200年に及ぶが、1895年、日清戦争に勝利した日本の植民地支配が始まる。そして1945年に始まった中華民国による統治は、当時の民衆に「犬が去って、豚が来た」と言われるものだった。その中で、本省人・外省人の区別を超えて「台湾人」のアイデンティが育まれ、1990年、直接選挙による第1回総統選で「初の台湾人総統」李登輝が登場する。『台湾――変容し躊躇するアイデンティティ』(2001年、ちくま新書)を、大幅増補して改題し、文庫化。目次はじめに――芝山巖の光景第一章 「海のアジア」と「陸のアジア」を往還する島――東アジア史の「気圧の谷」と台湾第二章 「海のアジア」への再編入――清末開港と日本の植民地統治第三章 「中華民国」がやって来た――二・二八事件と中国内戦第四章 「中華民国」の台湾定着――東西冷戦下の安定と発展第五章 「変に処して驚かず」――「中華民国」の対外危機と台湾社会の自己主張第六章 李登輝の登場と「憲政改革」第七章 台湾ナショナリズムとエスノポリティクス第八章 中華人民共和国と台湾――結びつく経済、離れる心?第九章 「中華民国第二共和制」の出発結び補説1 総統選挙が刻む台湾の四半世紀――なおも変容し躊躇するアイデンティティ補説2 「台湾は何処にあるか」と「台湾は何であるか」学術文庫版あとがき参考文献 台湾史略年表索引

感想・レビュー・書評

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  •  2001年出版の旧版新書は既読なので、追加の補説を中心に読む。台湾総統選の意義を、内部的には「国民形成イベント」、国際環境の中では米中の狭間で「人民主権をパフォーマンスするイベント」と指摘。そして、七二年体制に矛盾するこのようなベクトルを育む一方で、現状維持を望む民意に沿うという点で同体制に順応するベクトルもビルトインしていると指摘。
     既読部分でも読み直すと新たな気づきがある。芝山巖にある、戴笠の顕彰碑も含め歴史の各時代を表す碑。台湾を周縁ではなく「海のアジア」と「陸のアジア」の境界と見る視点。二・二八事件で犠牲となった外省人の存在や、学校教育を通じた本省人・外省人の同化。大陸政策と政治改革が争点だった2000年総統選と、若年層の多くが民衆党に流れた2024年総統選の違い。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/570766

  • 東2法経図・6F開架:B1/1/2795/K

  • 「台湾というとに日本から気軽にいける海外ということもあり、なんとなく親しみがあるのだが、アジアに対する理解に乏しい日本人の事であるので、台湾の歴史についてはヨーロッパの主要な国よりも良くはしらないと言うのが一般的ではなかろうか。日本の一部であった時期もある国であるのだが。

    台湾にとって有史は17世紀オランダ東インド会社の統治からのようである。それ以前から勿論歴史はあったのだが記録されていないということだろう。本書も17世紀以降400年の台湾の歴史を政治的側面を中心に叙述されている。

    オランダの統治から明朝の遺臣・鄭成功らの反抗拠点、明王朝の支配。日清戦争の結果として日本の植民地化を経て中華民国の支配下に至る。本書の主題は、大陸からやってきた中華民国政府の元で、以前からの台湾で生まれ育った本省人と後からやってきた外省人が対立しつつ台湾人としてのアイデンティティを形成していく過程を描いていくことであろう。

    「四大族群」と呼ばれる台湾のエスニックグループが対立融合していくなかで、総選挙が行われ「初の台湾人総統」李登輝が選ばれる過程がつぶさに描かれ、そのなかでエスニックグループの意識の変化が語られている。
    本書は、2001年に発刊されたものに、その後の四半世紀を補説として追記、現代の台湾にいたるまでの政治的背景が判る。

    米中対立の中で、台湾は独立するのか、中華人民共和国に飲み込まれていくのか今後の台湾の行く末が気になるところである。」
    台湾というとに日本から気軽にいける海外ということもあり、なんとなく親しみがあるのだが、アジアに対する理解に乏しい日本人の事であるので、台湾の歴史についてはヨーロッパの主要な国よりも良くはしらないと言うのが一般的ではなかろうか。日本の一部であった時期もある国であるのだが。

    台湾にとって有史は17世紀オランダ東インド会社の統治からのようである。それ以前から勿論歴史はあったのだが記録されていないということだろう。口承、口伝と言ったものはあると思うので民俗学的なアプローチをすれば、もう漠然とした話にはなっても、もう少し歴史を遡れるようにも思うのだが、それは別の話。本書も17世紀以降400年の台湾の歴史を政治的側面を中心に叙述されている。

    オランダの統治から明朝の遺臣・鄭成功らの反抗拠点、明王朝の支配。日清戦争の結果として日本の植民地化を経て中華民国の支配下に至る。本書の主題は、中華民国政府の元で以前からの台湾で生まれ育った本省人と後からやってきた外省人が対立しつつ台湾人としてのアイデンティティを形成していく過程を描いていくことであろう。

    「四大族群」と呼ばれる台湾のエスニックグループが対立融合していくなかで、総選挙が行われ「初の台湾人総統」李登輝が選ばれる過程がつぶさに描かれ、そのなかでエスニックグループの意識の変化が語られている。

    本書は、2001年に発刊されたものに、その後の四半世紀を補説ついて追記され、現代の台湾にいたるまでの政治的背景が判る。

    米中対立の中で、台湾は独立するのか、中華人民共和国に飲み込まれていくのか今後の台湾の行く末が気になるところである。

  • 歴史っていうかほぼ選挙の話。年ま行くのでちょうど良かったが。

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著者プロフィール

若林 正丈(わかばやし・まさひろ):一九四九年長野県生まれ。東京大学教養学部卒業、同大学院社会学研究科国際関係論修士課程修了(国際学修士)、同大学院博士課程退学。社会学博士(東京大学、一九八五年)。在香港日本領事館専門調査員、東京大学教養学部助教授、同大学総合文化研究科助教授、教授を経て、早稲田大学政治経済学術院教授、早稲田大学台湾研究所所長、台湾・政治大学台湾史研究所兼任教授などを歴任。著者に『台湾抗日運動研究 増補版』(研文出版)。また『台湾──分裂国家と民主化』(東京大学出版会)、『蒋経国と李登輝』(岩波書店)などで一九九七年サントリー学芸賞受賞、二〇〇八年刊『台湾の政治──中華民国台湾化の戦後史』(東京大学出版会)でアジア・太平洋賞および樫山純三賞を受賞。

「2023年 『台湾の半世紀 民主化と台湾化の現場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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