国鉄史 (講談社選書メチエ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065341964

作品紹介・あらすじ

【"この国のかたち"を鉄路で描いた者たちの、栄光と蹉跌の全史】かつて日本には、国家の所有する鉄道があった。その組織は平時においては陸軍をしのぐ規模を誇り、列島津々浦々の地域を結びつける路線を構想することは、社会のグランドデザインを描くことそのものであった。歴代の国鉄トップは、政治家や官僚たちは、そして現場の人々は、この巨大交通システムに何を託し、いかに奮闘したのか。近代化に邁進する明治政府が新橋・横浜間を開設してから昭和末期に日本国有鉄道が分割民営化されるまで、「鉄道と国家」の歴史を一望する壮大なパノラマ!【本書より】日本の鉄道の歴史は大きく四つの時代に分けることができます。まず、明治時代の私鉄が主役だった時代、次に、日露戦争後に多くの私鉄を買収した政府が直営した時代、さらに、第二次世界大戦後、国鉄が公社化されて日本国有鉄道となった時代、そして現在のJRの時代です。(中略)本書ではこれから、日本の鉄道の歴史を、鉄道がいかにあるべきかというグランドデザイン、その実現のための経営体制、そしてそれを動かしてきた人物ということに焦点を当てて描き出していきます。それにあたって、この四つの時代区分という捉え方は、たいへん見通しをよくしてくれるので、これに従って議論を進めていきたいと思います。【本書の内容】プロローグ 「鉄道一五〇年」と国鉄[第一部  「国鉄」形成の道程]第一章 私鉄の時代(一八七二─一九〇六)1.官設鉄道の誕生 2.「鉄道の父」井上勝 3.鉄道敷設法と私鉄の繁栄 第二章 国家直営の時代(一九〇六─一九四九)1.鉄道国有法の制定2.「国鉄」の誕生3.初代総裁後藤新平の組織作り4.原敬と改正鉄道敷設法5.国鉄ネットワークの充実6.戦時下の苦闘とその遺産[第二部 日本国有鉄道の興亡─公社の時代(一九四九─一九八七)]第三章 「復興」の中で(─一九五五)1.占領期の混沌2.「公共企業体」の桎梏と総裁たち3.組織と人々第四章 「近代化」への邁進(―一九六五)1.新しい時代の鉄道像2.「改主建従」の夢第五章 光と影の昭和四〇年代(─一九七五)1.都市交通と国鉄の使命2.効率化がもたらすもの3.「政治主導」の時代4.国会とストライキと債務と第六章 再建の試みと崩壊(─一九八七)1.「後のない計画」2.分割民営化への道エピローグ JR以後(一九八七─)

感想・レビュー・書評

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     昨年2023年5月末に89歳で鬼籍に入った僕の父は,長く国鉄に勤めていた。分割民営化されてJRになる少し前に確か五十歳くらいで早期依願退職した。今ならJR四国の土讃線中村駅と高松駅の間を走る列車に車掌として乗務していた。(現在中村駅はJR線ではないらしい。ふむ・・・)
      当時の僕(小中高時代 づっと自宅から徒歩で通った)はあまり列車に乗る機会は無く 列車内で仕事をしている父親を見たのは一回か二回だけであった。当時は列車内で乗客のキップを拝見して『切符切り』で小さな穴を開けていた。

     という様な動機から本書を手に取って読んだ。その僕の父親の職種や路線い関係ある事が書いてあるかと云うともちろんそんなことは描かれてはいなかったw。
      当時国鉄には社員家族割引制度があって職員の家族なら国鉄全線の利用料がほぼ半額(だったと思う。3割引きだったかなぁーw)になるというかなりお得な特典だった。当時まだ存命だった伯母叔父が横浜や千葉や大阪に住んでいたのでよくその家族割引を使って四国は阿波池田駅から列車に乗って旅したものだった。

     本書の内容はもちろんそんな僕の個人的理由物語とは全く無縁で当時国内最大(なんと最大で50万人を超える社員が居たそうだ)の会社だった『国鉄』という読書欲誘発用語を使っていかにも数少なそうなw 読者を誘っている。

    著者は文学者。そして僕よりは随分若く1972年生まれで現在52歳。文章は書きなれている というか読者が読んで面白い書き方を心得てい,どっちかと云うと物語風に書かれた本書はかなり面白い。これが著者が技術屋だったり経済学者だったりするとまあこうはいかないだろうと嬉しく感じた。 面白かったが根が技術屋で本来天邪鬼な僕が読むと気になる事もあったので本文のページ指定をし如実に反文学的に?!指摘したい。すまぬ。

    本文204ページ。ここに一つのグラフが載っている。国鉄の総輸送人数が年度別の折れ線グラフにて表されている。横軸は年度。1970年から1985年まで一年刻みである。さて問題は縦軸。数字は最小で620,000 以降 一軸20,000で 最高は740,000。そして単位にはなんと「(億人)」と臆面もなくハッキリと書いてあるのだ。

    おい!一年間の輸送人数が740,000億人って・・・740兆人かっ!それは全宇宙の人口か?それともマーベル社かディズニー社のファンタジー映画の世界かっ! まあ文系の著者と講談社なんてのはこの程度の数字扱いとええかげんな校正なのだと僕は再認識し溜飲が下がったのであった。やれやれ笑う。 まあともあれかなり面白い本なので そこのてっちゃん は是非読んでみてくだされ。笑う。すまぬ。

  • ローカル線や新幹線など知らない話がたくさんあって読みごたえがあった。労組や政治にもしっかり触れている。
    国鉄総裁だった仁杉の説を紹介して、およそ40年周期で節目を迎えているという。
    ・鉄道開業~国有化(1872~1906)
    ・~戦後の日本国有鉄道化(1906~1949)
    ・~分割民営化(1949~1987)
    ・~現在(1987~現在)
    自分は最後の40年しかしらないわけだが、なるほどと思う。ただ過去に種をまかれた課題も多く、他の業種に比べると断絶よりもむしろ連続性を感じた。

    炭鉱が廃止になり高校生しか乗らなくなってバスにしたローカル線が、最近はさらに人口減少でバスの運行も厳しくなっていたり、リニア建設工事が取りざたされたりと、第四期も節目を迎えつつあるのだろうと思う。

  • 分かりやすくて読みやすい!"国鉄"中心に語られる日本の鉄道通史。シンカリオンで鉄道のみちに触れた者としては、ハヤトくんが言っていた鉄道知識や十河さん島さんの名前の元ネタ、都市と地方の格差の問題など、知りたかったことがたくさん載ってて嬉しかった。実際の現場のことも多く載っており、国鉄以後生まれには非常に具体的にイメージがわきやすかった。

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著者プロフィール

1972年、和歌山県生まれ。青山学院130年史編纂室員。専攻は日本近代史。著書に『近代日本の大都市形成』(岩田書院)、共著に『「大東京」空間の政治史』『都市と娯楽』(ともに日本経済評論社)など。

「2006年 『「開発」の変容と地域文化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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