作品紹介・あらすじ
浅田結弦には、後悔がある。
それは中学生時代の恋人、水野藍衣のことだ。
自由な藍衣が、好きだった。でも、彼女の自由さに、苦しんだ。
過ぎ去った中学時代の恋。
二人の恋はゆるやかに過去となり、思い出になってゆくはずだった。
しかし、高校一年の夏、藍衣は再び、結弦の前に姿を現す。
「結弦、好きだよ」
……以前と変わらぬ、むき出しの好意を携えて。
言葉にしないと伝わらない。でも、言葉だけでは分からない。
正反対の二人が、ぶつかり、すれ違い……ようやく見つけた答えとは。
後悔を抱えた少年少女の、恋と対話の物語。
感想・レビュー・書評
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これぞ王道の学園青春ラブストーリー。自由奔放な藍衣が見せる一途さはとても微笑ましいのだけど、相手を顧みないところに怖さも孕んでいて、受けきれなかった結弦の気持ちも良く分かる。一方、「後悔」で先に進めない結弦にとって、薫の存在がとても大きかったですね。彼女にもぜひ幸せになって欲しい。素敵な物語でした。なお、野暮な話ですが、読了後の最初の感想は、こんなに想い合っている二人が、再会できなかったらどんな人生を送っていたのだろうか、ということでした。「この二人でいること」以外の幸せな姿が想像出来ない…。
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2021年7月刊。読み友さんが本作の2巻目を絶賛していたので、興味を惹かれ、お取り寄せ。筆者の本は初めて(筆者の原作によるアニメ版『ひげを剃る。そして女子高生を拾う』は観たが)。
中学時代に付き合っていた、いわゆる「不思議ちゃん」系の彼女・藍衣(あい)の奔放さに付いていけなくなり、別れを告げた直後、彼女が引っ越ししてしまい……。以来、後悔と未練を引きずっていた少年・結弦。その結弦が通う高校に、藍衣が転校生として現れる……!
結弦と藍衣が互いの想いを改めて確認し、正しい距離感を見極め、「友達」として新たな関係性を築いていくまでの物語。
特に大きな事件が起きるわけでもなく、衝撃的な事実が明かされるでもない。極めて地味でパーソナルな物語なのだが、結弦視点で紡がれる文章は瑞々しく、時に切なく胸に迫り、するすると読めてしまった。このリーダビリティの高さは、やっぱり筆者の筆力が高いからなのだろう。
主な登場人物は、結弦と藍衣の他には、同学年の男女の二人だけだが、それぞれの人物が魅力的に描き出されている。終盤で、結弦と藍衣は互いの気持ちを確認し合ったから、本書一冊で終わっても問題ないと思うが、結弦の同級生で、何やら家庭の事情を抱えているらしい薫(♀)の問題がまだ解決していない。おそらく2巻では、薫がフィーチャーされるのだろう。次巻は、陽気に振る舞っているが、実はかなり闇が深そうな薫を、結弦と藍衣が救い上げる物語になるのだろうか? 気になるので、次巻もなるべく早く手に取りたい。
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