赤ちゃんと脳科学 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087201949

感想・レビュー・書評

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  • 子を「育てる」ものと思い込んでいたが、よく考えれば子は「育つ」ものだということに気付かされた。
    大事なのは、親が自分自身に自信をもって子供と遊んであげること。親の不安の埋め合わせに、子「育て」を利用しないようにしたい。
    おおらかに見守ってあげるぐらいのスタンスにしたい。同時に、それって当たり前のことやんっていうことにも気付かされた。
    「木が上に伸びながら、同時に横にも葉を茂らせたり、花を咲かせたりするように」

  • 人間の赤ちゃんの、胎内での成長、乳児期の成長を知ることは、何か人類の発生から現在に至る進化をより深く想像させる材料になるのではないかと思って手に取ってみた。
    赤ちゃんは予め埋め込まれた人類の成長スペック(遺伝子情報)に基づいて受精卵から細胞分裂を繰り返し、目的地たる人間の姿に近づいていくのだが、その過程はスペック絶対ではなく、このまだ生後間もない生命は自らにふりかかる刺激に見事に反応して、その環境や、条件に適応して組織、器官の形成にドライブをかけて細胞分裂を調整していく。
    それらは、結果的な姿として(性格や能力、感性といった個性と言われるカタチで)目にすることは多いのだけれど、この部分や、時限的適応のバランスには神秘性を感じざるおえない。
    そしてもうひとつ、「原始反射」という赤ちゃんの仕草ですが、カワイイにかまけて赤ちゃんを眺めていると見えてこない、研究者の多くの観察事例を冷静に見つめてきた眼にははっきりと浮かんでくる共通事象があるのです。
    思わず、そうそうと唸ってしまった。
    この「原始反射」が人間を作り上げていくスペックの表象であることに気付かされた。
    人間の赤ちゃん、ニホンザルの赤ちゃん、チンパンジーの赤ちゃんによってその「原始反射」は違っていて、その後地上で生命を育み、種の拡大を図るために必要な種の特性を見事に移しているのだ。

  • 赤ちゃんの育て方に関する本は数多ありますが、そこに根拠があるのか……本書はそうした巷の噂レベルの内容ではなく、脳科学/発達心理学の研究者が書いた幼児教育に関する知見を述べた本です。
    中心となっている考えは、海外留学で著者が得た教訓、「これまでの発達観を見直し、広い視野で子どもを見る」です。親は子供に成長してほしい一心で、胎教をしたり勉強させたりしますが、必ずしも成長しなければいけないわけではないのだ、あるところでもし止まってしまったとしても、広げていくことを楽しめるのが人間、広い視野で見守ってあげることが大事だ、という考え方を提唱しています。
    これを読むと最近流行りの「脱成長」の文脈で見てしまう人がいるかもしれませんが、(わたしの見たところでは)「成長に対する期待をしない」という所が勘所ですよ、と言っているように受け取りました。

  • 育児・教育について過剰量の情報が氾濫しているけど、科学的な根拠はほとんどわかっていないことがわかった。裏付けのない情報に惑わされて、親から様々な刺激を与えるのではなく、まずは赤ちゃんの自発的な発達を注意深く観察することが大切。子供は「育てる」ばかりでなく「育つ」ということ。

  • 赤ちゃんの成長と脳科学という実践的なテーマは親にとって関心がある内容であるとともに、胎児の能力の不思議についての研究も興味深かった。胎教という概念の意味合いが更に納得できたように思う。この本を通して胎児も母の子宮の中で何と排泄しているというのは初めて知った。完全な1個体なのだ!新生児の微笑が親の愛情を獲得する目的であるという解き明かしも面白いところ。20世紀の子ども観が「かつては子どもは授かるものだったが、今は作られるものと位置付けている。また育つものではなく、育てるものとみなされるようになった」との紹介があり、著者は疑問を呈している。全く同感!絵本の読み聞かせの意味は「本を通じて親子が気持ちのやりとりをすること」との解題は凄い言葉だと思う。子どもの成長に関しては、自らの経験を顧み、反省させられることが多かった。

  • 所謂精神論ではなく、科学的に赤ちゃんを語る本。

  • 興味を持ったら何でもとことん調べてしまう癖で本書を手に。まさに我が子は「生後二ヶ月革命」の真っ最中とのことで、どおりで毎日の成長が面白すぎるわけか。
    読書MEMO
    ■子育ての誤解
    ・誤解や勘違いを埋めながら、親子の絆を作り上げていく作業が子育て。
    ・親の自信喪失が子どもへの過度な期待や不安となって表れているのも今日の育児の現状
    ・科学的情報に惑わされて育児をすることは、放任にせよ過保護にせよ、目の前にいる赤ちゃんからのサインを無視していることに変わりない。
    ・子どもは親の生き方を見て育つので、親である前に1人の人間としてどう生きるかということは大切な問題。親も育児を人生の中のひとつの仕事として考えるくらいのほうがいい。大切なのは、親が自分の生き方に自信を持つ人間になるということ。
    ■胎児の不思議
    ・胎児への語りかけの意味は胎児自身が聞き分けられるかということよりもそれを行うことで母親の気持ちがリラックスできる点にある。
    ・まだ会ってもいない赤ちゃんに成果を求めて胎教をするのは、右肩上がりの発達観にとらわれすぎていると言わざるを得ない。それよりも子どもは授かりものという考え方をもっと見直していい。
    ・生まれて間もなくから激しい教育競争に巻き込まれているかもしれない赤ちゃんをせめて子宮の中では静かにしておいてやりたい。
    ■生後二ヶ月革命
    ・生後二ヶ月というのはヒトの発達にとって大きな変わり目。
    ・筋肉の働きが変わったり脳のシナプスが急速に増える。
    ・生後二ヶ月は赤ちゃんの身体の中でバラバラに仕上がっていた機能が脳の指令を受けてうまく連携し始める非常に重要な時期。
    ■テレビと育児
    ・新生児は人の語りかけに同期して手を動かす。語りかけた大人の方も無意識に頷き等の動作で反応する。乳児はその過程を通して、自分が人声を聞き取ったことを確認する。テレビは赤ちゃんの反応とは無関係に情報だけが垂れ流され、語りかけた側の反応が一切ない。
    ・極端に生活からテレビを排除したり、逆に生後間もなくからテレビを長時間見せることは避けるべき。
    ・語りかけには語り返しがあることが大切。語りかけや本の読み聞かせ、玩具遊びも赤ちゃんと親が一緒に楽しむためのもの。大切なことはそれを使いながらどうコミュニケーションをとるか。
    ■育児の目標と目的
    ・立派な親でなくてもいい。大切なのは親が子どもの良いところを、こどもが親の優れた点を理解し合うこと。
    ・母親が父親のことを、父親が母親のことを子どもに「人生の目標にしなさい」と言えたら本当に素晴らしい夫婦、家族になる。
    ・非行に走る子どもたちに共通していたのは「安易に子どもに謝る親」の存在。子どもを思って叱ったことに自信を持つべきで叱ったこと自体を悔いてむやみに迎合すべきでない。

  • 科学的な見解で赤ちゃんの脳の発達と子育てについてわかりやすく書かれています。
    他にも子育て本を読んだけど、一貫してるのは、子供の発達過程を理解して、親が子供の成長を楽しむ。逆に、発達過程を知らないと、成長を喜べなくて、ちょっと損する!そして、一緒になって、本気で子どもと遊ぶ。与えて終わりではなく、与えてからが本番!

    子どもを育てるのではなく、勝手に育つ、という感覚は大事だと思った。
    親があれこれするのではなく、子どもが何をしようしているかを、しっかり観察する。しかし、結局は時間との勝負になるのよね。時間で動いている大人の世界は、なかなか子どもに合わせられない。周りの理解を得つつ、どこまで子どもと同じ目線になり切れるかは、難しい課題やね。

    子どもの成長を楽しめる社会をつくりたいなー。

    印象に残ったメモ
    ・まだ赤ちゃんの発達についてはちゃんと解明されてないこと。
    ・赤ちゃんは自発的に行動するので、育てるというより、行動を見守り、少し助けてあげる、くらいで良い。
    ・本気で遊んで、手加減しない!ハンデ戦にして、対等さをなくす。
    ・テレビ等のメディアとの付き合い方はよく考えよう。
    ・お母さんが子育て楽しい、と思えるような周りのサポート環境大事!

  • 胎児~生後2ヶ月の赤ちゃんがどのような成長をするか。早期教育、テレビについて、育児の目的と目標。などなど。
    初の子育てについてそんなに心配してないけどまじで親になってしまうので試しに読んでミマシター。自然に育てましょってことね。

  • ☆3
    読んで良かった本だよ。
    赤ちゃんとの関わり方について、重要な見解が書かれている気がするよ。

    とくに「神経ダーウィニズム」と言う仮説。脳で過剰に作られた神経細胞の自然淘汰が行われるという「シナプスの過形成と刈り込み」は、赤ちゃんの正常な発達にとって重要みたい。
    ADHDの患者のシナプスは健常児より多い、つまり刈り込みがちゃんと行われないことが原因かもしれない、という著者の話はかなり納得できる。

    そして、刺激が過剰な現代の弊害も、興味深い。
    テレビ過剰で言葉が遅くなる、という見解に納得。テレビは受けとるだけの刺激だから、言葉や視覚と体との連携がとりづらくなる。
    それを防ぐには、親の語りかけとこどもの反応の相互作用が重要。これも覚えておくよ。

    こどもの教育に関する情報が多くて焦る気持ちもある。でも、教育の目的を設定しないまま、良さそうなことを言われるまま過剰にこどもに与えることには問題があるらしい。
    そうではなく、赤ちゃんを一人の人間として尊重し、ありのままの状態のこどもを観て、気づき、親が反応することがいいんだな、ということがわかったよ。

    赤ちゃん研究はデータが取りにくそうで全体的に根拠に乏しい感じがするけど、ひとつの意見として知っておくのは良いと思う。

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著者プロフィール

小児科医。日本赤ちゃん学会理事長。1947年香川県生まれ。京都大学医学部卒業。1990年より、文部省在外研究員としてオランダのフローニンゲン大学で発達行動学を学ぶ。2001年、赤ちゃんをまるごと考える”日本赤ちゃん学会”を創設。2008年10月より同志社大学赤ちゃん学研究センター教授、センター長。2013年4月より2017年3月まで、兵庫県立子どもの睡眠と発達医療センターのセンター長(2017年6月現在、参与)。著書に『赤ちゃんと脳科学』(集英社新書)、『今なせ発達行動学なのか――胎児期からの行動メカニズム』(診断と治療社)など。

「2017年 『赤ちゃんの脳と心で何が起こっているの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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