男女交際進化論 「情交」か「肉交」か (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087203363

作品紹介・あらすじ

最初にお伺いしましょう。あなたは「男女交際」に興味がありますか?あれ、どうしてモジモジされるのですか。ニヤニヤしている方もいらっしゃいますね。「男女交際」という言葉の本来の意味は、辞書を引いても決して理解することはできません。「男女交際」とは、単に「男女」と「交際」という単語が結合しただけの熟語ではありません。明治の始めに、あの福沢諭吉が作り上げた、文明開化の薫り高い言葉なのです。そしてこの言葉の置かれた状況や歴史を見ていくと、「男女同権」を実現し、近代社会を構築していく手段に他ならなかったことが見えてきます。不思議で真面目な「男女交際」ワールドを一緒にお楽しみください。

感想・レビュー・書評

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  •  福沢諭吉は「男女交際」という言葉を創作し、「健全な男女交際においては"情交(精神的文化的交わり)"と"肉交(肉体的な交わり)"、このどちらも重要である。」と説きました――。
     なぜ学校には男女交際に厳しい校則があるのか。なぜ性教育で「セックス/性行為」を教えることに反発が起きるのか。その大元は明治時代の近代教育制度にあった! 
     当時の教育者や知識人によって醸成されていった、男女交際思想の成り立ちを解説した著書。

     平たく言うと、彼らなりに生徒の健全なる成長と社会秩序のために男女交際を制限する理念、つまりは校則を設けて、更に「肉交」を下位視し「情交」を上位視する教育者や知識人が多数派だったことが現代の性教育にまで影響していて、そしてその根本には武家的男尊女卑思想の名残だったり仏教やキリスト教といった宗教思想の名残だったりが含まれている、と。
     しかし現実には「肉交」を排除する教育は所謂「無知シチュ」的な性犯罪を助長する要因にもなったわけで(「大野博士事件」など)、現代日本でも情交と肉交をセットにした性教育に反対する人がいますが(「性教育反対運動」「はどめ規定」)、そろそろ文部科学省は方針を転向してもいいのではないでしょうか。
     ということで、校則の成り立ちや近代日本の恋愛史観に興味がある人に薦めたい本です。

    ※併せて読んでほしい本
    (大正時代の性教育論)
    ・アリエナイ医学事典/亜留間次郎
    (地方から見た性風俗の実態)
    ・夜這いの民俗学/赤松 啓介
    ・盆踊り 乱交の民俗学/下川耿史

  • [ 内容 ]
    最初にお伺いしましょう。
    あなたは「男女交際」に興味がありますか?
    あれ、どうしてモジモジされるのですか。
    ニヤニヤしている方もいらっしゃいますね。
    「男女交際」という言葉の本来の意味は、辞書を引いても決して理解することはできません。
    「男女交際」とは、単に「男女」と「交際」という単語が結合しただけの熟語ではありません。
    明治の始めに、あの福沢諭吉が作り上げた、文明開化の薫り高い言葉なのです。
    そしてこの言葉の置かれた状況や歴史を見ていくと、「男女同権」を実現し、近代社会を構築していく手段に他ならなかったことが見えてきます。
    不思議で真面目な「男女交際」ワールドを一緒にお楽しみください。

    [ 目次 ]
    第1章 二つの恋
    第2章 福沢諭吉と『男女交際論』
    第3章 恋人たちの文明開化―女性知識人階層の登場
    第4章 恋愛神聖論
    第5章 恋愛哲学と『青春』
    第6章 「オールドミス」から「新しい女」へ

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 明治以降の男女交際の概念の変化を追ってる

  • 「男女交際」の歴史

  • 4月21日購入

  • 明治期以降(おもに明治について)から現在の「男も女も好きになったら相手を追っていくという対等な相互の駆け引きが可能」になった現在の状況になるまでのプロセスをわかりやすく説明した一冊。
    男女交際によって、男女同権となり、それが浸透することによって近代国家ができたきたと・・。
    男女交際が「導入」されたものだとは、それに悩んでいる私からしてみれば腹立たしいような、おもしろいような。社会学っていうのかな?やっぱり楽しい。

    タイトルどおり「情交」か「肉交」かについての主流の考え方の移り変わりをわかりやすくまとめてありました。

  • 男と女が恋愛をするために、これだけのプロセスを経ているのだ、と思うと感動するような、呆れるような気分になる。

  • 中上流階級の書生文化&女学生文化をコンパクトに整理しつつ、明治期輸入された「恋愛」という哲学概念が、男女交際という実践に於いてどのように解釈されていったかの系譜をたどる。

  • 読みやすい本だった。男女交際という言葉の意味というか変遷が良く分かった。硬派と軟派の意味やらプラトニックラブというのは、何もできない恋愛なんかじゃなく、最高級の恋愛の形であること、女性の立場のおかれ方やら、よ〜く分かる一冊。情交か肉交かという鶏か卵かのような世界をあーだこーだ議論している。結局は片方だけでは愛は語れないんだと思う。ただ、情があっての肉だと思ってるけどね。

  • んー意外。男女交際がこんなに奥深いとは。自分の身辺もこの観点から色々考えさせらされました。

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著者プロフィール

神戸女子大学文学部教育学科教授,京都大学博士(教育学) 1953年 神戸市生まれ 1977年 同志社大学商学部卒業
1988年 京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学
1996年 金沢経済大学経済学部助教授(1999年3月まで) 2000年 村尾育英会学術奨励賞受賞 教育史学会,教育社会学会,日本教育史研究会所属

「2000年 『「視線」からみた日本近代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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