他人と暮らす若者たち (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087205183

作品紹介・あらすじ

若年貧困層やプレカリアートに関する様々な議論が交わされる中、一人暮らしでもなく、恋人・家族との同居でもない、第三の居住のかたちが、若者たちの間で試され始めている。本書は、ロストジェネレーション世代の社会学者である著者が、ルームシェア、またはシェアハウジングと呼ばれる「他人との同居」を数年間にわたり調査した記録であり、居住問題に焦点を当てたユニークな論考である。安い家賃で快適な住まいを獲得できるシェアハウジングが、日本ではなぜ欧米ほど広まらないのか?家族と他人との境界線とは。

感想・レビュー・書評

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  • 他人と暮らす若者たち。
    内容は至極真面目で、

    ・これまで日本ではあまり見られなかったシェアをする若者に対象に、インタビューを踏まえた実態を検証

    ・日本社会でなぜこれまでシェアが広がらなかったかの理由を家庭事情や住宅事情、制度上の軋轢から考察

    ・諸外国との事例と比較することによって、今後日本におけるシェアのあり方などの展望

    などレポートされている。2009年に出版された本で、インタビューに至っては2005年頃行われていたものらしい。
    今の日本から考えるとかなり早い段階でシェアに目を付けていたため、シェアの広まる段階としてもかなり初期のもののようだ。
    その分事例も少なく、当時なので内容としては完結していないが、導入から最後まで、とてもうまくまとまっていて読みやすかった。

    内容をかいつまんで

    ・なぜ彼らはシェアを選んだか
    差し迫った理由は少なく、多くは外国での体験を元に、日本へ帰国してからも同様の生活体系を希望するようになった。

    ・シェアをうまくこなすコツ
    気配りや気遣い、生活レベルや気にする度合いなどが近しいほどうまくいく。その場合、ルールづくりは意外といらない。

    ・シェアの関係
    一人暮らしでも家族でもない、役割から離れた対等な関係と責任。第三の生活体系。

    ・一人なら楽か?家族なら安心か?を問い直す
    単純にコストで言えば分散したほうが安く無駄がない。家族関係から生じる役割や危険、わずらわしさ。必ずしも家族との生活が気楽とは言えない。

    ・共同生活で得られるもの
    一人暮らしで生活力がいるのとはまた違った方向で、他人と向き合った社会生活を営むに必要なスキルを養うことが出来る。それはもうひとつの自立と呼べる。

  • <図書館で借りた>

    これを読んでいて思い出したことは、整理の秘訣が、自分のスペースをもたないこと、ということだ。

    そういう意味でシェアハウスしている人が、一人暮らしよりもきちんと生活されているという指摘は、納得できる。

  •  シェアハウス(及び単に「シェア」)というものに対する認知度は上がってきていると思いますし、それも現在(2014年)ではWebサービスやアプリの登場によって一部の人を中心に加速していると思います。
     ただその上でも、(現在の日本だと比較的顕著なのでしょうが、)居住形態として「家族暮らし」または「一人暮らし」以外の、「他人との生活」というものの認識が人々にあまりない状況であるため、一般的になるのはまだ時間がかかりそうです。
     「シェア」が一般的になるためには、人の意識が更新されていく必要があるので、世代が1つ進む程度という意味で数十年単位で時間がかかるでしょう。(本書は2009年発行ですが2014年現在でもあまり一般への浸透具合が変わっていない感覚があります。)


     本書の内容について少し。
     家族も共同生活をする相手であることを意識する次の一文は自分にとって新しい見方でした。

    (※シェアと家族暮らしの面倒さを比較している項で)「もし、あなたが家族との共同生活に面倒を感じていないとすれば、家族の中の誰かに面倒を押し付けている可能性はないだろうか。」

  •  若い社会学者が実体験も交え、シェアハウスの現在と未来を語る。

     シェアハウスとはどんなものか、どんな利点や問題点があるかといった現実的な点に始まり、世界でどんなシェアハウスが行われていてるかという将来の展望まで幅広く書かれている。シェアハウスの問題を考えることは家族制度優位な社会を改めて考えることになるのが興味深かった。

     シェアハウスは間違いなくその重要性を増すはず。

  • 意外とこの本以降もこの手の内容について書かれた本が少ない。

  • 単なるシェアハウスの紹介かと思ったら、そこはさすが社会学者の卵?、他人と暮らす、という家族社会学?のまじめな本でした。
     家族、夫婦、友人、近隣関係などなど社会の基礎的構成単位を考えるきっかけとして、面白いよ。

  • プレカリアート、無縁社会、絶対的貧困…現代社会が受胎する問題の処方箋としてハウスシェアを提唱する論考。

    それは、独り暮らし、家族や恋人との生活とはことなる第三の居住スタイル。


    ハウスシェアは、規模の経済による家賃、水道光熱費の軽減という経済的な功利だけでなく、視野の拡大に寄与したり、自由について考えるきっかけや他人との衝突についても教えるととかれる。

    加えて、ハウスシェアの歴史、問題点、さらなる可能性についても議論する。

    ハウスシェア万歳!!
    と要約できるけど、セーフティネットとしては不安定だし、人々のハウスシェアへのまなざしも芳しくない。
    ネカフェの次の、雨宿り場所とした思えないというのが率直な感想。

  • 一人暮らしや家族・恋人との同居でもない第三の居住の在り方についての論考。実際にシェアをしている人へのインタビューを交えながら、他者との暮らしの実態を紹介するに留まらず、家族制度や社会制度にまで考察を拡げている。私も現在友人とルームシェアをしているため、非常に興味深い内容であった。
    他者との暮らしは経済的メリットだけでなく、「自由」「自立」「親密さ」を再考するきっかけとなり得る。他者との暮らしという居住の在り方を通して、社会制度や家族の在り方を変革することができるとすれば、直接的ではないかもしれないが、昨今話題になっている若年貧困層やプレカリアートといった問題に対する一つの回答になりうるのではないだろうか。

  • 欧米ではルームシェアとか当たり前ですけど、日本はまだまだその域には到達していないようで。しかし、同居するのに肉親なら安心で、他人なら不安、という考え方はやはり徐々に崩壊せざるをえないんじゃないかと思ったりします。

    ●どれほど一人の世界に引きこもっても、家族のなかに閉じこもっても、生きていくうえでは、結局のところ異質な他者といつかどこかで接しなければならない。だとすれば、衝突しない他人を探し求めるのではなく、なるべく他人を避けて生きるのでもなく、どうやって他人とうまく衝突するか、いかに円滑に衝突するかを考える必要がある。

  • 私を含む共同生活を送る者の実態を、世に広めよう
    という最新作であるので、うれしくなって第一版購入。
    私が将来実現したいと思っていたのは、この本の表現を借りると
    「コーポラティブハウス」そのものであり、なんとか日本でできないものか、
    と思うのです。
    事例はたくさんあるのに、量的調査をかけてほしかったな~。
    質的な面で考えても、サンプルに偏りがあって、、、
    もっと分析をかけてほしかったので、厳しめに星3つ。
    著者はまだ博士課程とのことで、もっとたくさん研究して
    よいものを、よいムーブメントを先導してほしいです。

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著者プロフィール

1976年生まれ。日本大学文理学部社会学科教授。家族社会学、福祉社会学、政治哲学。
著書に、『他人と暮らす若者たち』(集英社新書)、『家族を超える社会学──新たな生の基盤を求めて』(共著、新曜社)。訳書に、スーザン・オーキン『正義・ジェンダー・家族』(共訳、岩波書店)、エヴァ・キテイ『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』(共訳、白澤社)、エリザベス・ブレイク『最小の結婚──結婚をめぐる法と道徳』(監訳、白澤社)など。

「2022年 『結婚の自由 「最小結婚」から考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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