西洋医学が解明した 「痛み」が治せる漢方 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208320

作品紹介・あらすじ

漢方薬は西洋薬と同じように科学的なエビデンスに基づいて処方可能だ。本書ではその有効性を現代薬理学によって解説。また「痛み」に特化して、腰痛や頭痛など様々な痛みの症状別に処方を紹介する。

感想・レビュー・書評

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  • 難解で摩訶不思議な理論が障壁となっていて、本来は有用な漢方薬をサイエンスの観点で処方しよう、という考えを述べた本。一般向けよりは、やや専門的でしょうか。
    医療に対して完全な素人だと、自分の症状も誤解しそうなので、巻末に載っている医師リストの先生に伺ってみるといいかもしれません。

    前半は、漢方薬とはという基本的な話で、その歴史がもう医薬品開発でいう、phase 1~3までは完了している、という指摘はその通り。確か、一番新しい処方の漢方薬ができたのが、1000年前だというのをどこかで聞いたことがあります。なので、有効性・安全性は歴史が証明しているといっても寡言ではないでしょう。ただし、漢方薬にあった症状を正しく診断できたら、という条件が必要ですが。

    後半は、こむら返りには芍薬甘草湯とか、ぎっくり腰(腰部筋膜腰痛症)にも芍薬甘草湯とは効きますよ、と症状と漢方薬名の対比がたくさんあり、個人的にはサイエンス漢方をいうのであれば、もう少し薬品名を少なく、その作用機序(前半に痛みに対する記述はありましたが)を掘り下げて欲しかった。

    人が病気になって、その症状が出たときに4つに大別する考え方「免疫賦活・抗炎症」「微小循環障害」「水分分布異常改善」「熱産生」自体は面白くて、ピンポイントに作用させる西洋薬とは共存できるというのはその通りだと思います。
    面白いかったんだけど、不完全燃焼ということで、少し評価は低め。
    ということで肩が凝ってきたので葛根湯を飲みたいと思います。
    (ホントこれ効きます。肩こりに。風邪には効きませんよ)

  • 『漢方というと,現代医学とはまったく異なる摩訶不思議な医術と思っている人も多いと思います。それはとりもなおさず,従来の漢方では,「陰陽五行説」に代表される東洋医学の難しい理論を,伝家の宝刀として振りかざしてきたからにほかなりません。』と言う切り口は、面白い。なんとなく、感じてる胡散臭さを、一気に攻めこむ。そして、対峙するのが「サイエンス漢方」と立場をはっきりさせる。
    サイエンスになるためには、現代医学にのっとり、サイエンスになるためには、検証できなければならないし、再現性が必要であるとする。
    「西洋薬と異なるのは、薬剤の形が少量の多成分の集合体であり、その多成分が一斉に、または時間差で体に作用することによって、体内の複雑で動的なシステムが応答する。
    そして、痛みというのに対して、漢方薬がどう効くのかを説明している。
    発痛物質(ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン、アセチルコリン)は、神経の末端にある「痛み信号変換装置」であるポリモーダル受容器を刺激し、そこで生み出された痛み信号が、脊髄から大脳皮質に伝わり、痛みとして認識される。
    非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、痛みを引き起こす物質を作り出すシクロオキシゲナーゼという酵素を抑え込む。炎症の最終段階をブロックして、痛みを和らげる。
    急性の痛みには対応する。慢性の痛みは、違った治療法がいる。
    鎮痛剤トラムセット、リリカを使って処方する。
    身体の中で起こっている異常な状態を根底から正常に戻して行くことで、結果的に痛みが消える。

    手術の後の腸閉塞対策には 大建中湯。
    脳神経外科では、脳浮腫に、五苓散。
    日本のヒットは、エキス剤である。エキス顆粒、細粒、カプセル、錠剤。
    現在では、18社が製造している148処方が薬価収録されている。

    大建中湯は、サンショの主成分サンショールがすぐさま血中に入る。ショウガの主成分ジンゲロールが、徐々に血中に入る。 人参は、腸管側から作用している。
    「人参は入らない」と言っているが、人参が入るわけない。
    人参の主成分が書かれていない。

    少量の化合物(言葉の使い方がよくない)がたくさん集まると、明らかな薬効を発揮する。そのメカニズムを考えるほうが賢明である。
    そこで、薬が効くのか?ということは、どういうことかを考察する。
    一つ一つの成分を分析するのではなく、それがまとまって体に入った時に、応答としてどういうものが出てくるのか?と見ることが必要だという。
    漢方薬は、平常状態への修復能力。自分の力で治しているんであって、漢方薬はその助けをしている。
    身体のシステムの変調を病態と呼び、その病態をターゲットにしたのが漢方薬。
    漢方薬は、炎症、微小循環障害、水分分布異常、熱産生障害に効果を発揮する。
    4つの病態+心理的要因が深く関わっている。
    漢方薬を西洋薬と同じサイエンスの土俵にあげる。
    どうも言っていることが、自己矛盾してきているような気がする。
    そして、西洋医学の考え方で、漢方薬を処方する。
    なるほど、自己矛盾の本質がここにあるわけだ。
    病態ー応答ーキモー病名 記しているが、どうも西洋医学の土俵には載っていない。
    つまり、相変わらず 経験則の説明になっている。
    ふーむ。サイエンスを語りながら、サイエンスになり得ていない現実が面白い。

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著者プロフィール

1950年、北海道生まれ。医療法人徳洲会日高徳洲会病院院長・医学博士。北海道大学医学部卒業。専門は消化器外科、肝臓移植外科で日本外科学会認定登録医。1988年から3年間、オーストラリアで肝臓移植の実験・臨床に携わる。帰国後、独学で漢方治療を本格的に始め、現在、日本東洋医学会認定専門医・指導医。2012 年にサイエンス漢方処方研究会を設立、理事長として科学的根拠(エビデンス)にもとづいた処方を行う「サイエンス漢方処方」の普及に努めている。
おもな著書に『抗がん剤の辛さが消える 速効!漢方力』(小社刊)、『西洋医学が解明した 「痛み」が治せる漢方』(集英社新書)、『147処方を味方にする 漢方見ひらき整理帳』『救急初療室でも使える! 一撃!!応急漢方』『介護漢方: 排泄障害・摂食嚥下障害・運動器障害・睡眠障害・フレイル・サルコペニアへの対応』(以上、南山堂)などがある。

「2021年 『新型コロナと速効!漢方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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