- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087211092
作品紹介・あらすじ
西洋音楽史の常識を覆す、衝撃の真実!
モーツァルトは二度「殺された」。
●内容説明
今日、「アマデウス」と言えば、多くの音楽ファンが、夭逝した18世紀の天才作曲家・モーツァルトのことを思い浮かべるだろう。
しかし当の本人は、生前「アマデウス」と呼ばれたことも、名乗ったことも、まして署名などしたこともなかった。
嘘だと思うなら、本書をご一読いただきたい。
モーツァルトは、ある時期から自筆の楽譜に「アマデーオ」と、書簡の類には「アマデ」とサインし、その名を死ぬまで大切に使い続けた。
それはなぜか。なぜなら、それはモーツァルトにとって唯一の宝であり、自身を支える矜持だったからだ。
にもかかわらず、生涯大切にした最愛の名前を、死後、誰が何のためにモーツァルトから引き剥がし、似て非なる「アマデウス」に改竄してしまったのか……。
著者は、不遇のうちに35年の短い生涯を終えた天才の渇望と苦悩に寄り添いながら、その謎を解き明かしていく。
さらに、返す刀で西洋音楽史の欺瞞にも切り込んでいく。
●目次
序曲 名前の話
第1章 親からもらった名前
第2章 ヴォルフガングとアマデーウス・モーツアルト的
第3章 悪夢への前奏曲
第4章 悪夢のドラマ
間奏曲 第1《バスティアンとバスティエンヌ》の怪/第2 ジュゼッペ・アフリージョ
第5章 イタリアの陽光
第6章 アマデーオ降誕
第7章 ドラマの終わり
第8章 ウィーンの亡霊たち──陰謀・噂
第9章 モーツァルトの死
第10章 ドイツ語圏に家がない
フィナーレ アマデーオ、孤高の王国
アンコール だれがアマデウスを作ったか
あとがき
蛇足
巻末付録 モーツァルトの生涯の署名一覧(作品における署名/手紙における署名)
●著者プロフィール
石井 宏(いしい・ひろし)
1930年、東京生まれ。音楽評論家、作家、翻訳家。東京大学文学部美学科および仏文科卒。
主な著書に、山本七平賞を受賞した『反音楽史 さらば、ベートーヴェン』をはじめ『素顔のモーツァルト』、『誰がヴァイオリンを殺したか』、『帝王から音楽マフィアまで』、『ベートーヴェンとベートホーフェン 神話の終り』、『チョッちゃん』、『ホタル帰る 特攻隊員と母トメと娘礼子』(共著)などのほか、主な翻訳書に『モーツァルト』、『モーツァルトのオペラ』、『グスタフ・マーラー 愛と苦悩の回想』、『モーツァルト 音楽における天才の役割』など。
感想・レビュー・書評
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映画『アマデウス』によって、モーツァルトの名前は“ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト”とぼくの頭にインプットされてしまったので、今更“それは違う”というタイトルの本書を見て目が点になった。種を明かせば、生前モーツァルトはアマデーオ(もしくはアマデ)という名を使っており、アマデウスという名は彼の死後から使われるようになったらしい。なぜそうなったかは、本書を読んで納得できた。映画とは異なる本当のモーツァルトの姿がわかった気がする。
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・モーツァルト自身が使っていたのは、イタリア語のAmadeoもしくはAmadeで、Amadeusは生前嫌われていたザルツブルクやウイーンの方からドイツ語風に替えられたもの。
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面白い人には,とっても面白い本だと思うけど,興味がない人にはまったくつまらないだろう.文章はくせのない平易な文体で構成もしっかりしていて,よかった.
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762-I
閲覧新書 -
ヴォルフガング・モーツァルトのミドルネーム「アマデウス」が本来の名前ではなく、イタリア旅行以降にイタリア語風の「アマデオ」ないしフランス語風の「アマデ」と自称したのに由来する、という事実自体は、過去の伝記や書誌にも記述されていることで、一般には洗礼名「テオフィリス」のラテン語訳と捉えられているが、本書では「アマデウス」はドイツ語で、その伝播・定着要因をドイツ国民国家形成過程の文化人らによる「創られた伝統」に求めている。モーツァルト研究の大家であったヤーンやケッヘルが「ヴォルフガング・アマデ・モーツァルト」と表記していたという指摘は重要だが、他方モーツァルトが「アマデ(アマデオ)」の名に固執した背景や、ウィーンの楽壇事情などの分析は、文学畑だからで済ますには史料操作が恣意的で「思い込み」の激しさが気になる。サリエリによる「毒殺説」やコンスタンツェとジュスマイヤーの「不貞説」など、今日ではほぼ否定されている旧説に無頓着な点も問題だろう。
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モーツァルトはなぜ自身が名乗らなかったアマデウスの名がついているのか。
なんでか分からないまま読み始めてしまったが、意外に読み進むほどに面白くなってく本だった。
モーツァルトの不遇の人生を振り返りながら彼の名前の秘密に迫っていく。モーツァルトが神童だったということは知っていたが、そこには彼をプロデュースしようとした父の努力と妬みや不運による障害があったことは知らなかった。
若くして亡くなった後に決して良妻と言えなかった妻が家を立て直し、その過程でモーツァルトが不遇だった故郷ドイツで名声を得ていくというのは興味深かった。 -
あっという間に読み終えた。モーツァルトが不遇であり続けながら、それでもへこたれず名曲を生んだのは、何が彼のモチベーションだったのだろう。アマデウスという言葉からドイツへの嫌悪感、というか人との関わり合いが下手?というか負けん気があの優れた名曲を作り上げたかと思うと不思議な気がする