あっけらかん よろず相談屋繁盛記 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087440713

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  • 〈よろず相談屋繁盛記〉シリーズ第五作。

    前作で刀を持った浪人を見事撃退した一幕を瓦版に書かれ、すっかり有名人になった信吾。
    実家の料理屋〈宮戸屋〉には見合い話が次々舞い込んだり野次馬もどきの上客が次々やってきたりして、その度に信吾を交えた宴会が行われる。〈宮戸屋〉としては商売繁盛でありがたいが、毎晩のように呼び出され同じ話を繰り返す信吾は堪らない。更には信吾に腕試しを挑む暇な部屋住み連中まで出てくる。

    相変わらず信吾のそつなく嫌みなく捌いていく姿が完璧。腕試しで信吾を襲った連中から江戸留守居役というお役人たちまで心を鷲掴みされ仲良くなっていく。話としては面白味には欠けるが、今回は何と言ってもメインイベントがある。それは表紙絵にある通り信吾の祝言。
    前作で二十歳そこそこの信吾に嫁取りなんて早いのでは?と思っていたが、三十歳で中年と呼ばれる時代、普通のことのようだ。
    それに信吾の妻となる波乃、何とも現代的な娘さんなのだ。

    正直な信吾は自分の病気…幼い頃の熱病の後遺症で時に記憶が抜け落ちること…を打ち明けても動じず、それどころか姉の祝言より先に家を出たい(この理由もまた現代的)ので信吾と一緒に住みたいと言う。
    この時代、庶民ですら祝言を上げずに同棲するなんて好奇の目にさらされていたらしいので、大店のお嬢様ならなおのこと考えられない爆弾発言だったろう。

    波乃お嬢様は勿論家事などしたこともない。そのため母親からお付きの女中を付けられ、新婚生活を送りながら家事を教わることにしたらしい。狭い将棋会所のどこに女中まで住む場所があるのか…と思っていたら、以前隣家が空き家になっていたことがここに上手く繋がり、そこを新居に出来た。
    びっくりすることが多い娘さんだが、信吾との相性はバッチリ。二人の丁々発止なやり取りは家族が聞いていても微笑ましい。波乃の性格はともかく、夫婦関係は上手くいきそうだ。
    この調子なら信吾の動物と話が出来る能力を打ち明けても大丈夫かも。

    結局家族が折れて仮祝言を挙げられたので祝言後の新婚生活となり、やはり順風満帆なスタートだ。

    その陰で少女棋士ハツちゃんの初恋は散ってしまった。このまま会所には来なくなるのか?と心配したが、気持ちも新たに将棋と向き合うようになってホッとした。
    しかし信吾の超能力、パワーアップしている?

    そしてもう一人、以前一方的に信吾を好きになりながら一方的に袖にしたももお嬢様の番頭が再登場。現金なももお嬢様は、瓦版の影響で一躍スターになった信吾が再び気になりだしたらしい。とはいえ信吾はこの時点で仮祝言が決まっている。番頭を通じてそのことを伝えたところで終わったが、次作でももお嬢様が逆ギレして嫌がらせを仕掛ける…なんてことにはならないかと心配。それでもそこは信吾のこと、上手いこと乗り切るのだろうが。


    シリーズ作品レビュー
    第一作「なんてやつだ」
    https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4087457753#comment
    第二作「まさかまさか」
    https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4087458288#comment
    第三作「そりゃないよ」
    https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4087458938#comment
    第四作「やってみなきゃ」
    https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4087440281#comment

  • よろず相談屋繁盛記の第5巻。武勇伝を瓦版に載せられたため、信吾にはいろいろなことが舞い込むようになる。大名の江戸御留守居役たちとの会食があったり、武家3人組に襲われたりするが、みんな上手いこと捌いてしまう。若いのに不思議な人物と言わざる得ないだろう。この信吾にとうとう妻になる女性が現れる。もちろん通り一編の人物じゃ信吾には釣り合わない。この波乃がとんでもなく面白い。巌哲和尚と対等に張り合うぐらいだから。次巻からどうなるか楽しみだ。

  • 202110/よろず相談屋繁盛記シリーズ・めおと相談屋奮闘記シリーズ既刊全10作まとめて。毎回平積で新刊を見かけ気になっていたので読み始めることに。最初は、設定てんこ盛り(幼少時に大病、生き物の声が聞こえ会話できる、老舗料理店の長男、鎖双棍の使い手、相談屋と将棋会所を経営)だな~と思ったけど、主人公は勿論、登場人物達が生き生きと描写されているのでこの世界に入り込んで楽しめた。最初は使い物にならずぼんやりしてた小僧の成長ぶりやちゃっかりぶりも微笑ましい。相談事の内容や解決手法等、物語としてパッとしないものや偶然の産物だったりも多いし、自分の好みではない話(将棋会所で皆が艶話や与太話をただただ話すだけとか)もあるし、時代物とはいえ書いている今の時代にそぐわない描写や設定も感じるけど、総じて面白かった。「主人公と話してたら何故か解決してしまう」のと同様、とらえどころのないなんかわからない面白さもあった。

    よろず相談屋繁盛記シリーズ(なんてやつだ/まさかまさか/そりゃないよ/やってみなきゃ/あっけらかん)
    めおと相談屋奮闘記シリーズ(なんて嫁だ/次から次へと/友の友は友だ/寝乱れ姿/梟の来る庭)

  • 前巻でお見合いをした信吾と波乃。押しの強い波乃に引っ張られるようにアレヨアレヨと話が進む。しかし、信吾の昔の大病の後遺症やら波乃の姉の婚姻のからみやら、問題が起こる。さらに前回、騒動を巻き起こした瓦版が元で訪ねて来るお武家様たちの相手で大忙しの信吾。
    まだ信吾には女っ気ない方が楽しいのに…なんて思ってたけど、この波乃、この時代には型破りな茶目っ気たっぷり、ユーモアも根性もありそうで信吾のお相手にピッタリ!!そして、最後にはアノ我儘なももお嬢さまの再登場で迷惑を被ったり。ハツの淡い恋心も良かった。
    今回は相談屋や将棋会所はあまり関わりなく、いつもと違う楽しみがありました。
    祝言の日で終わったので、次巻での2人が楽しみです。

  • 暴漢を捕らえた事件が瓦版で大騒ぎになり、

    信吾にひきもきらず縁談が舞い込み、

    生家の料理屋「宮戸屋」にも話を聞きたいと、

    次から次へと信吾を座敷に呼ぶお客が続く。

    ある日、江戸留守居役の面々が七人で信吾を宮古屋の座敷に呼ぶ。
    そんな機会から江戸留守居役二人と親しくなる。

    とうとう、瓦版が縁で嫁をとることに。

    素晴らしい女性であり、信吾と意気投合!
    信吾は、時折、記憶が飛んでしまうことも、包み隠さず話す。

    相手の「春秋屋」の次女「波乃」とは、

    両親が気に入っただけでなく

    信吾も気に入り、

    波乃も気にいる相思相愛になった。




    物語としても、面白いのはいうまでもないのだが、
    野口卓のこのシリーズは、読んでいて、人として大切なことをさりげなく盛り込まれているので、感銘するポイントが意外に多くある。不思議なシリーズだ。



    野口卓の本は「軍鶏侍シリーズ、新・軍鶏侍シリーズ」を含め

    物語の中に、生きる意味とは、人とは、、、と

    人生の中で、考えたことのあるテーマが

    主人公を考えさせるようにして、

    折り込まれており、読み応えがある。

    このシリーズ、完結篇かと思いきや、

    新しいターニングポイントとなるらしいから、

    またしても続編が楽しみなシリーズである。

  • 野口卓氏の よろず相談屋繁盛記のシリーズ物である。

    初めて読んだ野口卓氏の本は、「軍鶏侍」であった。
    これも、軍鶏を戦わせるのに、武士が、庭で、飼っているという本で、闘鶏で、編み出した流儀も、楽しんだ。

    この本も、信吾が、3歳の大病を克服して、改名した時の名付け親の和尚 巖哲から鎖双棍も伝授。

    今回は将棋会館と相談屋を開いて1年。
    そして、かわら版で、ならず者をやっつけた事が載り、話題となってしまった。
    縁談も、動物の声も聞こえる信吾だが、記憶が遠のくことを許嫁や、義父母に言って良いのか????と、悩んで
    しまうのだが・・・・
    許嫁の波乃が、又、お嬢様育ちなのに、いい味を出しており、信吾のお相手ぴったり!
    最後は、仮祝言。
    上手く納まった。

    最初の1巻から読んでいないのだが、面白く読み終えた。

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著者プロフィール

1944年、徳島市生まれ。さまざまな職業を経験し、ラジオ・ドラマ脚本・戯曲を執筆。1993年、一人芝居「風の民」で第3回菊池寛ドラマ賞を受賞。日本脚本家連盟会員、日本放送作家協会員。2011年、『軍鶏侍』で時代小説デビュー。同作で歴史時代作家クラブ新人賞を受賞、同シリーズにより多くの時代小説ファンを獲得。ほかシリーズに「ご隠居さん」「手蹟指南所『薫風堂』」「新・軍鶏侍」「よろず相談屋繁盛記」「めおと相談屋繁盛記」など、単著に『からくり写楽 蔦屋重三郎、最後の賭け』など著書多数。演劇にも造詣が深く、小説、戯曲、芸能、映画、音楽、絵画の多ジャンルでのシェイクスピア派生作品を紹介した著作『シェイクスピアの魔力』がある。

「2022年 『逆転 シェイクスピア四大悲劇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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