天龍院亜希子の日記 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.28
  • (3)
  • (19)
  • (25)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 187
感想 : 18
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087440782

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あなたの『苗字』は、『すごい苗字』ですか?

    天皇陛下以外、日本人なら誰もが持つのが『苗字』です。そんな『苗字』は10万、30万というおびただしい数にのぼるとも言われています。お隣の韓国では280程度しかないと聞くと、この国の『苗字』の多さに驚きもします。

    そんな『苗字』で多いのが”佐藤”、”鈴木”であるというのは多くの方が知るところだと思います。このレビューを読んでくださっているあなたも”佐藤さん”、”鈴木さん”である確率が高いというわけですね。一方であまり聞かない『苗字』というものも当然にあり得ます。そんな珍しい『苗字』をまとめたサイトさえも存在します。私たち人間が人と人とのコミュニケーションで生きている以上、『苗字』というものに関心が湧くのは当然なのだと思います。

    さて、ここに『すごい苗字に憧れていた』と語る男性が主人公となる作品があります。『小学生の頃、野球選手と同じくらい戦国武将が好きだった』というその男性は、『俺が出会った人間の中で、ずば抜けてやばい苗字だったのが、亜希子だった』と語ります。この作品は、そんな『やばい苗字』の持ち主を『もう何か、とんでもない神獣を操って、街だの城だのを破滅と滅亡に向かわせるような名前の女子だ』と思う物語。そして、主人公が大人になったその先に、そんな女子が日々更新するブログに魅かれていく様を見る物語。そしてそれは、主人公が夢中になる「天龍院亜希子の日記」を、読者のあなたも読むことになる物語です。

    『八月イッピの朝に飛び込んで来た』『元プロ野球選手・正岡禎司の薬物スキャンダル』のニュースの話題に『出社直後のオフィス』で一緒に盛り上がるのは主人公の田町譲(たまち ゆずる)。『田町くん野球やってたんだっけ』、『高校までな』という話に続いて自然と今日の予定に話が変わっていく中に『島の外線が鳴』りました。『おはようございます。岡崎です』という電話の主は先輩の岡崎からでした。『十時半から港南口でカワヤユイさん、面談引率なんだけど。もし出れたら、お願いしてもいい?』と言う岡崎に『輪島さんには言っときます…いいすよ大丈夫です』と電話を置くと『何?また子供が熱出した?』と尋ねる ふみか。そんな時、上司の輪島が来たため『また、子供が、熱、出したって』と岡崎からの伝言を伝える田町。その横で仏頂面の ふみかは『誰が皺寄せ分かぶってると思ってんですか?先月の私の残業時間、見ました?』と不満を訴えます。それを、『見てるよ、当然見てる』といなす輪島。そんな輪島がいなくなった後も『彼女の穴、埋めてんの私なのにあの人感謝ゼロなんですよ。性格、やばくないですか?』、『結構やばいわね』と盛り上がる女子たち。そんな中、時間になり田町はオフィスを後にしました。そして、岡崎の代わりに派遣スタッフの紹介を終え、一人になった田町は『いま静岡にいる』早夕里(さゆり)のことを思います。実家に帰ることになった早夕里とは別れることになると思っていたものの、『物理的な距離だし、そういう意味で譲と距離を置くつもりはない』と言われ繋がったままの今の二人。そんな田町は、『このまま有耶無耶に結婚コースいったらやばいな』と思います。そして、iPhoneを見る田町は『亜希子のブログを読み始めて三ヶ月くらい経つ』今を思います。『すごい苗字に憧れていた』という小学校時代の田町の前に現れたのが『天龍院亜希子(てんりゅういん あきこ)』でした。『顔は特に特徴がなく、目鼻口のどれもが印象に残らない』という中に『名前だけがべらぼうに派手だった亜希子は、当然からかいの対象にな』ります。そんな中で積極的に何かをしたわけでもない中に教師から叱責を受ける羽目になった田町は『天龍院が苦手にな』りました。そして、時は流れ、友人がフェイスブックでかつて同級生だった女の子に片っ端から手を出している話を聞いて、覚えている名前で検索を繰り返します。そんな中に、『akktnryn/memo…』と始まる表示に行き着きます。『タイトルをクリック』すると、『板橋の日 久々の板橋。板橋にいた頃は小学生だった…』と続くブログが表示されました。『こいつが誰なのか』気になる田町が画面をスクロールすると『鰆の日 飯田橋で待ち合わせ、合流。神楽坂方面から出てぶらつく…』という内容が出てきます。『誰にも読ませるつもりのない日記なんじゃないかと』思う田町は『akktnryn』が、『亜希子・天龍院』であることに気づきます。そして『穏やかエッセイに飢えていたわけではなくて、自分の昔の知り合いがいまこういう風に生きてるんだって知れるのが面白かった』と、『帰宅すると、すぐにパソコンをつけ』『亜希子の日記の更新を確認する』毎日が始まりました。日々更新される亜希子の日記と、それを日々読み続ける田町の日常が描かれていきます。

    “人材派遣会社に勤める田町譲…問題だらけの職場で奮闘しつつも報われず、恋人とも煮えきらない…ひょんなことから小学校の同級生「天龍院亜希子」のブログを見つける。派手な名前とは裏腹に地味な女の子だった彼女のブログに綴られていたこととは…”と内容紹介に綴られるこの作品。第30回小説すばる新人賞を受賞した安壇美緒さんのデビュー作です。そんな作品は、単行本と文庫本で別物にも感じる位に表紙のイメージが変わっています。果たしてどちらの世界観がこの作品を言い表しているのか?、そんな視点からも興味がそそられます。

    そんな作品は内容紹介に”問題だらけの職場で奮闘”とある通り、人材派遣会社の社員として働く田町が主人公となります。となると、これは”お仕事小説”とも言えます。派遣社員として働く側を見る物語は、例えば山本史緒さん「絶対泣かない」などが思い浮かびますが、派遣する側が描かれる作品は珍しいと思います。そして、そこには派遣をする側の人間ならでは生々しい吐露がなされてもいきます。少し見てみましょう。

    『派遣社員が自分の職の獲得のために頑張る機会はあまりない。初回登録時の年齢、学歴、職歴、スキル、面接時の印象がデータになって、その段階でこいつにはこのレベルっていうのが大体もう決まってしまっている』。

    派遣される側も想像がつかないことではないとは思いますが、派遣する側の描写でこんな風に語られるのは痛烈です。しかし、そんな中に人としての心を田町は垣間見せます。

    『この仕事をこの条件で人に紹介するのかよと気が滅入る時はある』。

    そんな田町は、こんな風に思います。

    『俺が誰かを推してやって、そいつがちょっとは人生マシになるならそれはすごくうれしいし、そういうことがあったなら、俺は自分の仕事を肯定してやることが出来るだろう』。

    しかし、人材派遣の現実はそうは甘くはありません。

    『でもそいつが回避したしょうもない案件は、結局は別の誰かに押し付けてやらなくてはならない』。

    実にリアルな”お仕事”の現場を見る場面です。一方で、この作品の”お仕事小説”にはもう一つ大きな特徴があります。それこそが、『元々女性が多い職場』という田町が働くオフィスの日常を赤裸々に描く点です。この点で衝撃を受けたのは、『時短で働』く社員への読んでいて不快になるような『バッシング』の数々です。この作品は全体としてリアルな会話の場面が多数登場します。そんな場面を抜き出してみましょう。上記でも少し触れている岡崎からの電話を受けた後のオフィスの会話です。

    『いま岡崎さんから電話ありました』
    『おう何て?』
    『また、子供が、熱、出したって』
    『何時に来るとか言ってた?』
    『いま病院並んでて、混んでるらしいです… 十時半に岡崎さんが入れてた商社の引率、俺出ます』
    『忘れるからシステムで共有だけしといて。で、な~んで千葉ちゃんがまたキレてんの』
    『輪島さんがそおいうこと言うと私に非があるみたいじゃないですか』
    『言ってない、言ってないでしょ』
    『誰が皺寄せ分かぶってると思ってんですか?先月の私の残業時間、見ました?』
    『見てるよ、当然見てる』

    もう一つ、こちらは岡崎に対する悪口を言い立てる場面です。

    『そんなにとっつきやすいタイプじゃないわね。人を見下す系っていうか』
    『横柄ですよ、基本女に』
    『協調性、ないわよね』
    『岡崎さん今週遅刻二回目なんですよ』
    『彼女の穴、埋めてんの私なのにあの人感謝ゼロなんですよ。性格、やばくないですか?』
    『権利はよろしくあとは頼んだ、ってなんだよそれって』
    『他人がね、やってくれて当然だと思っちゃうらしいわね』

    …という感じで極めて生々しい会話が続きます。その場にいない人間の悪口、悪口、悪口…。この辺りは会社の風土にもよりそうですが、それにしてもリアルです。『時短』を取る側、『時短』によって何かしら影響を受ける側それぞれの思い、主張が赤裸々に綴られるこの作品。職場というものは、そこに集まる人たちの利害が日々ぶつかり合う場でもあります。私は今までにさまざまな”お仕事小説”を読んできましたが、”お仕事”の内容ではなく、”お仕事”の現場のリアルな会話をここまで赤裸々に描写した作品は初めてです。上記したやり取りの他にも、オフィスの日常にさまざまに語られていく不満、不満、不満…。読んでいて気持ちが悪くなるくらいにリアルな職場の光景を描いた作品だとも思いました。

    また、この作品では安壇さんが各所に使われている比喩表現にも要注目です。

    ・『始業に合わせてベルが鳴り、フロア中の従業員たちがぞろぞろと起立していく。まるで逆向きに打たれていく杭のようだ』。
    → オフィスの始業時の光景をまさかの杭に比喩します。こんな視点、どうやったら思いつくんでしょうか?

    ・『俺がもしモーゼだったら、あの人ごみをふたつに分けてやれるのに』。
    → 駅構内を急ぐ岡崎を見送る田町の心の内を、まさかのモーゼが海を割る場面に比喩します。これも凄いです。

    ・『閉まっていく自動ドアの隙間をぬって、あばれた風がびゅひゅうと鳴いた。嵐が騒音を巻き起こす。騒音は静けさに似ている』。
    → 嵐の巻き起こす騒音を『静けさに似ている』と書く安壇さん。この感性は尋常じゃないと思います。こんなこと私には1万年かけても書けないです!

    その他にも多々登場する比喩表現の数々ですが、ポイントはそんな表現の一方で上記したようにオフィスの生々しい描写がなされていくことです。全体的な文体がこういった比喩表現が使われる感覚ではなく、場面によっては極めて下世話な会話が続きます。そんな中になんの前触れもなく、これらのハッとするような表現が唐突に登場する違和感、それが、逆にこれらの表現の存在感を高め、不思議なギャップがやけに引っかかりを生んでもいきます。そんな効果を狙ってのことなのかどうかは分かりませんが、この作品の魅力の一つであることには違いないと思います。これから読まれる方には、是非作品全体に散りばめられた比喩表現の数々も楽しみにしていただければと思います。

    また、この作品では書名にある通り「天龍院亜希子の日記」が登場します。この書名だけ見ると『日記』で綴られた作品という印象も持ちます。実際、書名に『日記』とつく作品には、例えば永井するみさん「秘密は日記に隠すもの」など、日記体で綴られた文章の中に物語が展開するものがあります。また、そうではない作品、例えば原田ひ香さん「一橋桐子(76)の犯罪日記」では、各種の犯罪を犯していく桐子の日常が描かれることをもって『日記』とする作品もあります。そのような作品の描き方を考えるとこの作品の異質さが際立ちます。物語には、字下げした上でこんな風に「天龍院亜希子の日記」が唐突に登場します。

    『鉢の日  鉢をもらう。バラの鉢。青山ブックセンターの帰り、お花屋さんの前を通ったのでこれがいいあれがいいと言っていると何故か鉢を買って貰った。切り花がいいと説得するも、切り花は縁起がよくないと押し切られた…』

    なるほど、これは紛れもない『日記』です。しかし、前後の文脈にどう関係していくのかわかりません。そもそも『日記』をブログに綴っている亜希子は、主人公の田町がそんな『日記』を毎日見ているなどとは夢にも思わないでしょう。その内容はあくまで亜希子の日常を綴ったものに過ぎません。そんな『日記』は、全編に散りばめられて登場します。『板橋の日』、『鰆の日』、『鉢の日』、『LEDライトの日』、『鰻の日』、『お能の日』、『かわうその日』、『金の日』、『動物園の日』、『No Title』と、十日分登場する『日記』は謎が謎を呼ぶといっても良い雰囲気感を読者に感じさせていきます。しかし、この作品の書名は「天龍院亜希子の日記」であり、こちらの内容こそが主とも言えるものです。これらの『日記』をどう読んでいくのか、こちらもこれから読まれる方に是非意識いただきたいと思いました。

    そんなこの作品は兎にも角にも主人公の田町を感じる物語です。主人公が田町なので当然と言えば当然ですが、二十七歳という時代を生きる一人の男性の素顔を強く感じさせます。上記で触れたように、この作品では生々しい会話のシーンが多数描写されます。そんな生々しいしい会話にある時は絡み、ある時は黙ってもいる田町、そこに田町という二十七歳のリアルな生を強く感じさせながら物語は進みます。仕事に、恋に、そして当たり前の日常を生きる田町。そんな田町を強く感じさせる物語は十代の青春ともまた違った独特な青臭さを感じさせながら、それでいて生きていく力を強く感じさせもします。私の脳裏に浮かび上がったのは、綿矢りささん「インストール」や「蹴りたい背中」の感覚の先にある物語です。物語を包み込むなんとも言えない牽引力。この作品は特にその前半にぐだぐだ感があり、読んでいてイライラさせられるものがあります。それが後半になるに従って物語に勢いがついてきます。それこそが主人公・田町の生き方であり、そんな田町の生き方に物語が引っ張られ、さらにそんな物語を読む読者をも引っ張っていきます。一方で、「天龍院亜希子の日記」は物語に10回分差し込まれてきます。そんな『日記』の差し込みを読者はどう感じるか、それを読む感覚も間違いなく変化していきます。淡々と日常を書き記した「天龍院亜希子の日記」。この作品にこの『日記」が差し込まれている意味、この『日記」の有無によって作品の説得力がどう変化するのか。読後、このような構成を思いつかれた安壇さんの発想に驚きました。

    『別に俺は穏やかエッセイに飢えていたわけではなくて、自分の昔の知り合いがいまこういう風に生きてるんだって知れるのが面白かったんだと思う』。

    人材派遣会社に勤める二十七歳の主人公・田町が仕事に、恋に、日々の日常を生きていく中に、かつての同級生が日々更新し続ける『日記』をチェックする姿を描くこの作品。そこには、二十七歳の今を生きる一人の男性の赤裸々な日常が描かれていました。絶妙な比喩表現が、雑多な日常の描写の中に突然登場する妙な違和感が癖になるこの作品。人材派遣会社の”お仕事小説”の側面も見せてくれるこの作品。

    “今は「希望がない時代」って言われますけど、そもそも「希望」とは何なのかが分からないなって、私自身疑問に思っていたんです”とおっしゃる安壇さん。そんな安壇さんがこの小説を書くことで見つけたという『希望』の形を勢いのある物語の中に見る、そんな作品でした。

  • 20〜30代の若者達が社会の中での立ち位置を模索する様を当事者の如くリアルに描かれてます。
    デビュー作との事ですが読む人が読めば傑作なのでしょう。その後発表の2作品に比べるとストーリーの面白さは及ばないものの、キャラはやはり立っている。

  • 以下ネタバレ含むので、気をつけて。


    とは言え。
    タイトルにハッキリと掲げられている「天龍院亜希子」が、実はほとんど〝登場〟しないと言ったら、これはネタバレになるんだろうか?

    主人公・譲と天龍院亜希子は、小学校のクラスメイトである。
    facebookで同級生との出会いを楽しむ友人に倣い、かつて泣かせた女の子を検索する。
    そして、見つけた亜希子の日記を、まるで日課のように読み続けている。

    譲の、なんとなく波長が合う人への、ちょっとした優しさをしたい気持ちが、分かる。
    勝手に共感して、そうなると、邪険に出来ない。
    そして、そんな優しさは一方通行になってしまって、期待した分、裏切られた思いまで、する。

    そうして、そんな絶望に浸っているときは、身近な人ほど見えなくなるのだ。

    さて。
    では、天龍院亜希子にとって、譲はどのような存在だったのか?
    結末で明かされる日記に、人とつながることの、希望を感じさせてくれる。

    このパーツがあって、少し楽になった。

  • 読者層(世代)によって、面白さはかなり異なるだろう。50歳目前の私は、20代の頃の心模様を思い返しながら、その可能性が眩しく、しかしキリキリと心が傷んだ。

  • ラブカは静かに弓を持つ、金木犀とメテオラと新しい作品から読み始め、このデビュー作にたどり着きました。

    どの作品も登場人物の描写がすごく良くて、ほぼ全員に感情移入してしまった。そして自分自身何度も仕事で関わってきた派遣社員業界の大変さも身につまされた。

    解説にも書かれていたけれども、自分が誰かを信じることで、自分が信じ得ない誰かからの善意を信じることができる。自分がほんとうに辛くて、どうしようもない時に、何の証拠がなくっても、もしかしたらこの世の誰かがどこかでひそかに自分を応援してくれてるかもしれないって呆れた希望を持つことができる。

    そういうことを信じられたら、我々は生きるのが少し楽になるかもしれないね。

    願わくば、この呆れた希望が人生を硬く貫いて、このしょうもない人生をあかるく照らしてくれますように。

  • ドラマチックな展開があるわけでもないのに、読んでいて楽しく、ページをめくる手がとまらない、そんな小説だった。
    人はそれぞれ違うことを考え悩み生きている。周りの人がどんなことを思いながら生きているかなんて、結局のところわからない。自分以外の人が自分のことをどんな風に思って生きているのか。知った気でいるだけで、まわりがどう思ってるかなんて自分の想像の範疇でしかない。
    自分の気持ち次第な所もあるように思う。だけど、その自分の気持ちをつくるのにも、周りの人達との出会いやかかわりが大切なのだとも思う。
    生きるヒントを伝えてくれるようなそんな本だった。読んでよかった。

  • 安壇美緒『天龍院亜希子の日記』
    2020年 集英社文庫

    第30回小説すばる新人賞受賞作でデビュー作。
    昨年読んだ『ラブカは静かに弓を持つ』がとてもおもしろかったので、安壇美緒さんの別作品が読みたくて購入しました。
    驚いたのは主人公は天龍院亜希子ではなく、同級生だった青年の田町譲。この田町と職場や恋人との日常を描いた物語。
    まさに自分たち(僕にはかなり過去の年代になるけど)の身近な日常の幸せや憤り、不安や人とのつながりなどが紡がれています。
    解説にもあったけど、それら日常の希望を感じる作品でした。
    日常や希望は人ぞれぞれで、もちろん田町の描くものと僕の希望は違うのに、この物語を通して自分のそれと置き換えられるような感覚になるのも新鮮でおもしろかったです。

    #安壇美緒
    #天龍院亜希子の日記
    #集英社文庫
    #読了

  • 「鬼龍院花子の生涯」?と誰でも連想するだろうけど、でもって著者自身がそこから思いついたタイトルだと言ってるけど、このタイトルでこのストーリーって、その違和感がそれだけで何だか妙な存在感。

    ストーリーは、少ぅしブラック目の派遣会社に働く社員(スタッフを派遣する側の役割の人)の何てことない日常なんだけど、何と言うか、、、沁みる。

    静岡の彼女のご両親と主人公とのやり取りが特に好き。

    表紙の絵は、単行本の線路の写真の方が納得感が高い気がする。

  • 今どきな感じの軽いお話し。

  • 「鬼龍院花子の生涯」みたい・・・。
    でもそれはタイトルだけで、内容はまったく違ってとってもおもしろかった。
    田町くん、いいな。

全18件中 1 - 10件を表示

安壇美緒の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×