木内語録 甲子園三度優勝の極意 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087442250

作品紹介・あらすじ

高校野球史に燦然と輝く経歴を残した名将・木内幸男。人情味溢れる語りと独創的な采配で沸かせた「木内マジック」の神髄に迫る。

感想・レビュー・書評

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  •  常総学院の故・木内監督と言えば、「木内マジック」と呼ばれる絶妙な采配で有名だ。試合後のインタビューでの話し方もユニークで、大らかなイメージが強い。だが本書を読むと、選手たち一人一人の個性や適性を見極め、緻密に練られた作戦で勝ちに行っていたことがわかる。
     野球は単純なチームの強さだけでは勝てない。運・不運、試合の流れ、選手が緊張しているかどうかなど、心理的な面が大いに影響する。それらと天候条件、グラウンドの状態、相手チームの特徴を加味して試合の局面ごとに判断を下し、勝ちパターンが来ているなら子どもたちを勝たせてやるための采配を振るうのが監督の役割なのだという。その指導は非常に厳しかったと聞いているが、選手のためを思って叱っていることは読んでいれば十二分にわかる。とても愛情の深い人だったのだと思う。

     茨城県民は野球好きの人が多い。私は常総学院の卒業生で、在学中にクラス単位で県大会の応援に何度か行ったが、帰りに土浦駅や水戸駅を通ると道行く人が皆「常総勝った?」「良かったね!」などと声をかけてくれた。県内でほぼ一強状態でも、「また常総かよ」と言われることはまずない。それだけ木内監督の人柄が愛されていたのだと思う。
     各章の中で取り上げられる試合の時間軸が94年春、03年夏、84年夏などと行き来するのは少し読みにくかったが、面白いエピソードばかりだ。「夏の甲子園は観客が多く、監督がベンチから指示を出しても選手に聞こえない」(だから自主性を育む)という話は衝撃だった。そうか、聞こえていないのか!(笑)
     セカンド、ショートは頭のいい子、上手な子にやらせるというポジション決定法もわくわくしながら読んだ。

     今は木内監督の生前の願い通り、茨城県全体のレベルが上がり、常総以外の甲子園出場校も増えてきた。そのチームの監督が木内監督の教え子であるという話もよく聞く。かつて監督が蒔いた種が花を咲かせているのだから、喜ばしいことだ。
     私は千葉県民なので、卒業したら茨城なまりをほとんど忘れてしまった(在学中は同級生も先生も8割方なまっていたのでよくつられた)。この本はぜひ茨城弁のイントネーションで読みたかったが、それができなくて残念だ。

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著者プロフィール

田尻賢誉(たじり・まさたか)スポーツジャーナリスト。1975年12月31日、神戸市生まれ。学習院大卒業後、ラジオ局勤務を経てスポーツジャーナリストに。高校野球の徹底した現場取材に定評がある。『智弁和歌山・髙嶋仁のセオリー』、『日大三高・小倉全由のセオリー』、『龍谷大平安・原田英彦のセオリー』、『明徳義塾・馬淵史郎のセオリー』、『広陵・中井哲之のセオリー』(小社刊)ほか著書多数。

「2023年 『聖光学院・斎藤智也のセオリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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