放課後レシピで謎解きを うつむきがちな探偵と駆け抜ける少女の秘密 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087443561

作品紹介・あらすじ

周囲と衝突しがちな高二の夏希は、内気な同級生・結と校内の事件を解決するようになって・・。少女達の友情がきらめく青春ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 学園の日常の謎のミステリーですね。
    高校二年生の荏田夏希と落合結は同じクラスメイトで、調理部を専攻する。
    自己主張と猪突猛進でいささか短絡的な行動に出る夏希。
    反対に引っ込み思案で人見知りが激しい結。
    かなり性格の違う二人が、調理部の部活動でコンビを組むことに、そして事件が巻き起こる。8話の短篇連作。

    友井さんの作品は、人と違う何らかの障害を持つ人物が、それを自覚し乗り越えようと試行錯誤する物語を得意とされています。
    夏希の場合は発達障害を、結は極度の人見知り。その他にも様々な障害を持つ人物が登場する。
    なかなか認知されにく問題を根底に置いて、友井さんの思いも綴られています。
    もちろん、調理部が舞台ですから、もうひとつのお得意の料理のレシピもしっかり楽しめます。
    高校生の成長物語、友情物語、そしてきらめく青春物語も共感を持って読み進めました。

  • 時折、激情に駆られては人間関係に支障をきたす夏希と人前で話すことが苦手な結。
    同級生の二人は調理部で一緒に焼いたパンが膨らまなかった謎に挑む

    謎解きで、固まった心や人間関係をほぐしていく。
    二人の視点を交互に一話ずつ全8話。

    「膨らまないパンを焼く」
    「足りないさくらんぼを数える」
    「慣れないお茶会で語らう」
    「固まらない寒天を見逃す」
    「落ちない炭酸飲料を照らす」
    「食べられないアップルパイを訪ねる」
    「熟してないジャムを煮る」
    「かけがえのない誕生日ケーキを分け合う」

    ○主人公二人も含め、不器用な登場人物たち。
    謎やキッカケはちょいと力業を感じる所もあるが、それぞれの抱える悩みがメインに思うので良いかと思う
    グレーゾーンの辛さ
    料理と化学
    章タイトルがステキだ
    一人、まだ作中ではけりをつけられていない子がいるが、遠くない未来で自分と向き合えるかな

  • どんどん読み進めていくうちに、ああそうなんだろうなと。
    人間誰しも完璧じゃない、けどいかに〈普通〉ってものに囚われているのか。
    普通が出来ない自分を責めることは誰しもありそう…。

    意外にも食の謎がすごい深くて驚きました!

  • 二人の女子高生が主人公の青春連作ミステリー。
    レシピというだけあって、いくつかの料理が登場し、料理が化学反応で成立していることがわかる。難しいことはおいておいても、食欲を刺激されるのは確かです。
    主人公は出っ張り引っ込みの強い二人で誤解を受ける事も多いのだが(私としては話のメインはこの出っ張り引っ込みだと思うが)いくつかの謎を解き明かしていくことで、友達が増えていく。これは二人が自分のためだけでなく誰かのために動いたから。
    【普通】ってなんだろうと考えさせられました。

  • 料理だけではなく、ひとの表には見えない悩みや困難についての話。学生のころは、こんなこと思いもよらなかったなあ。でも、今そこで生きているひともいろいろ持っているのかも、自分の「できないこと」ってこういうことかも、と思います。自分にも苦手なこと、たくさんある。だから、できることで手助けしたいです。

  • ほんのりミステリ風味青春小説
    だと思って読み始めたらとても大切な要素があるシスターフッドだった
    狭い学生世界の中で発達障害はとても重大な問題だ
    年若い彼らの悩みは私たちが想像するより遥かに深い
    しかしそれを何とか理解し寄り添おうとする友人たちや周囲の人々も居るんだという事もこの本は教えてくれる
    (もちろん現実はここまで歩み寄ってくれる人達ばかりではない事も知っている

    発達障害だけではなく人はそれぞれ何かしら他人にはわからない“障害”を持っている
    例えば食べ物の好き嫌い・香りへの過敏さ・忘れ物の多さ・とうしても直らない遅刻癖などなど
    そして皆「それ」と(克服するのではなく)どう折り合いをつけて生きていくのかを模索している
    隠すのではなく矯正するのでもなく「それ」を含めた自分なのだと自他共に認識するまでがとてつもなく辛く難しい
    認識したあとも周囲の無理解や偏見に晒される未来を考えるとうんざりするがどうかこの子たちが真っ直ぐに生きていける世の中であるように願ってやまない

    *解説と著作リストで前作があるのを知ったのでそちらも読む予定

  • 前作のファンです。
    前作の菓奈と今作の夏希。
    ふたりの持つものと同じ、当事者なので首が取れそうなほどうなずきたくなるポイントが多くありました。
    前の話よりこっちのほうが好きかも…。
    登場人物が多すぎなくて読みやすいからです。
    前回と違ってしっかり参考文献があるのでそこも勧めたいポイントです!
    前作は吃音の本やお菓子の本も参考文献に入れてほしかった…
    この作品、夏希の設定に力を入れすぎて社交不安障害についてはあんまりわからなかったかな…。
    もちろんこの本読んで知った気になるようじゃダメだけど、もっと、そういう描写が欲しかったなぁ。
    話全体はすごく良かった。

  • 「スイーツレシピで謎解きを」の姉妹編
    時系列的には前作のその後だけど、単体でもこっちを先に読んでもいい
    でも、前作を読んでいると「おおっ」と思う箇所がいくつかある

    計8つの連作短編
    今回はスイーツに限らず料理や食べ物に関した謎

    前作の主人公たちが卒業した後の同じ高校が舞台
    主人公は社交不安障害の落合結と、「猪突猛進」「頑固一徹」という言葉が似合うが故にトラブルメーカーな荏田夏希

    二人の周囲で起こる食べ物に関する不思議な出来事
    その理由を探る過程で培われる友情と周囲との人間関係
    お料理×日常の謎×青春小説


    ・膨らまないパンを焼く
    ・足りないさくらんぼを数える
    ・なれないお茶会で語らう
    ・固まらない寒天を見逃す
    ・落ちない炭酸飲料を照らす
    ・食べられないアップルパイを訪ねる
    ・熟していないジャムを煮る
    ・かけがえのない誕生日ケーキを分け合う




    パンが膨らまなかった理由は伏線もあるのでわかった
    それにしても、先生の態度が何だかなぁと思う

    さくらんぼが消えた謎に関しても、アリバイ崩しに関しては他の方法を知っている
    でも、そんな方法もあったとはねぇ
    ただ、そこまでちゃんとしたアリバイか?とも思う

    齧られたマドレーヌに関しては、ハウダニットやフーダニットよりも、ホワイダニットの方が重要ですね
    ミラクルフルーツという味覚を甘味に変える食品の存在は知ってたけど、そんなものもあるのですねぇ
    夏希の友達思いというか、食いしん坊っぷりというかもいい感じに物語にアクセントを加えている

    固まらない寒天というかゼリーの原因も伏線があるので容易に想像がつく
    アレの酵素は強力ですからねぇ
    この話で注目すべきは、結の判断かな
    夏希のためにという意志を感じる
    友達のためだから行動できる、友達のために口を噤む
    何でもかんでも明らかにする事が友情の全てではないわなぁ

    なくなった五千円と炭酸飲料のアレ
    ブラックライトを当てると光る仕組み
    それを知らないと、何だか気味の悪いものに感じる人がいるかもしれない
    やはり、知識って大事ですよね

    夏希がシナモンを嫌いな理由
    昔は食べていたアップルパイ
    そしてもう姻族ではなくなった義理の叔母
    結は夏希に踏み込んでいっている姿に安心感がある

    妹の秘密基地の場所に関してはミスリードにまんまとやられたぜぇ
    エチレンガスだろうし、いい匂いとので同じく果物関係の場所だと思ってしまった
    ただ、エチレンガスに肉の色を変えるような効果ってあったっけ?と疑問には思ったものの、もう一方の伏線を見逃してたー

    なくした誕生日プレゼント
    どうしても探したい理由
    これまでの二人の関係性の積み上げがあったからこその展開だなぁとしみじみ思う
    二人の行動でできた知り合い
    相手のためという行動原理
    うーん、青春ですねぇ


    前作もそうだけど、料理は化学というのがよくわかる
    何故膨らむのか、柔らかくなるのか、固くなるのか、色が変わるのか等々
    謎そのものは料理を多少知っている人ならある程度の想像はつくけど、その原因に誰かの意図を混ぜることで人間ドラマに仕立てる作者の妙


    前作を知っていると、あんなに自らの存在に怯えていた菓菜が、結の視点ではとても勇猛果敢な人物のように見えていたという多面性
    先生の意見にしてもそうだけど、人からどう見られているかは本人はなかなか気づかないものですよね



    姉妹に関しては、早く帰る理由がありそうとか、定番としてはミスリードなので逆だろうなと予測はしていた
    でもこれは夏希視点の物語も読んでいて、尚且つミステリだとわかっているからこその気づき
    もし現実でそんな状況に出くわしたらそう思うのも仕方がない


    「障害」を抱える人の苦悩
    人々の理解と無理解による傷つき

    やはり前作同様にこれが大きなテーマの一つなんだな
    まったく、してやられたぜぇ
    前作を読んでいたからこそ物語のテーマは障害を抱えた人だなという思い込みで見逃してたー
    確かに、今回は二人の視点が交互に描かれているんだよなー

    病気の受容はどの立場にしても難しい問題ですね

    本人としては総診断されて納得が行く人もいれば、否定したい人もいるだろうし
    周囲の、特に親の場合は自分の子供がそうだとは認めたくない気持ちになるのはわかる
    親戚やその他の人からどう見られているかというプレッシャーもそう思わせる一因なんでしょうね

    油断していたところにさくっとこんな仕掛けを入れてくるあたりが、作者さん流石ですねぇ

  • 食べ物の化学を楽しみながら学べました。また、結と夏希が親友になっていくのがほっこりできました。勉強になるし、The青春という感じです。謎解きが好きな方はぜひ読んで見て下さい!

  • 【収録作品】膨らまないパンを焼く/足りないさくらんぼを数える/慣れないお茶会で語らう/固まらない寒天を見逃す/落ちない炭酸飲料を照らす/食べられないアップルパイを訪ねる/熟していないジャムを煮る/かけがえのない誕生日ケーキを分け合う

    直情径行で周囲と衝突しがちな高二の夏希と、「極度のあがり症」で人見知りの同級生・結の事件簿。
    『スイーツレシピで謎解きを』の姉妹編。前作の最後に出てきた結が今作の主人公の一人という以外はかぶらないが、テイストは同じ。温かくてほろ苦い。
    「障害」を抱えた少年少女がなんとか頑張る姿が描かれている。料理と化学の話は興味深い。

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著者プロフィール

2011年、『僕はお父さんを訴えます』で第10回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞してデビュー。14年、『ボランティアバスで行こう!』が名門ミステリファンクラブ「SRの会」13年ベストミステリー国内第1位に選ばれる。著書に“スープ屋しずくの謎解き朝ごはん”“さえこ照ラス”“レシピで謎解きを”の各シリーズ、『映画化決定』など。

「2023年 『無実の君が裁かれる理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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