ギンカムロ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087453294

作品紹介・あらすじ

12年前の花火の爆発事故で、両親をなくした昇一は、突然の祖父の電話で故郷に呼び戻される。そこには、一人の女性が花火師の修業をしていた。鎮魂の花火に込めた思いとは……。(解説/北上次郎)

感想・レビュー・書評

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  • 花火師という特殊な職業故に起こる衝突、苦悩を軸に主人公の成長を描いたお仕事小説

    花火師は一瞬にその人生の全てを賭ける。
    この本の主人公は過去のある事件がきっかけで家業である花火師から逃げ続けている。そんな彼が、だんだんと逃げ続けていた過去と向き合っていく姿が花火と共に描かれていく。
     物語の中で大きな役割を果たす、花火の描写は音や光、色のみではなく、振動といった部分まで含まれ描写されている。その為、過去に見た花火を思い浮かべることができる。さらに、普段知ろうともしない花火の雑学もわかりやすく、また自然に解説され、物語の背景が容易に理解できた。
     主人公の回りを取り囲む登場人物たちもそれぞれに思いを抱え、それぞれが主人公と関わり合うことで成長し、また主人公を成長させていく。この本にはドラマでいうエキストラは不在だが登場人物の多さで悩まされもしない。背景にある物語の奥深さがそう感じさせているのだろう。
     しかし、話ができすぎているとは言えるだろう。職人7年目に高難易度の花火を作らせて良いのか、またその玉貼りを素人同然の主人公に任せて良いのだろうか。などなど疑問を感じる箇所はいくつかあった。しかし、花火師という題材の斬新さ、魅力ある登場人物など考えれば、荒削りに思えるストーリー展開も許容範囲ないだろう。

  • 夏に読むのにぴったりの一冊。
    久しぶりに花火大会に行きたくなった。
    ちなみにタイトルは「銀冠」という花火の種類だそうです。そして美しい銀色の花火を作るのは難しいそうな。

    主人公の昇一は花火作りを生業とする家の四代目。だが12年前に花火工場の爆発事故で両親を亡くした彼は高校卒業後、故郷を出て、東京でフリーター生活を送っていた。そんなある日、細々と花火作りを続けていた祖父から帰郷するようにと連絡が入る。久しぶりに訪れた実家の工場。そこには一人前の花火師を目指して修行する女性、風間絢がいた。昇一は彼女に引っ張られるように、これまでずっと背を向けていた花火作りと向き合うようになり・・・。

    序章+4つの章+終章からなる作品ですが、花火の名前が付けられた4つの章ではそれぞれにエピソードが展開されています。一つ一つエピソードを積み重ねていくごとに話に深みが加わっていくところが、とても良かったです。恋愛ネタが変に織り込まれることもなく、ただただ愚直に花火と向き合う花火師たちの姿を描いたところが潔い。

  • 死亡事故を起こし廃業同然だった花火会社に風間という女性が職人として頑張る姿を、会社の4代目となる青年の目を通して描く。はじめは、クライアントからの依頼に基づいた花火を作るといった感じの話だてだったのだが、最後は風間のおいたちに焦点が当てられ、まあどうなのかな、感動的なのか、そうでもないのか、まあまあというところか。

  • 『 星降プラネタリウム』がおもしろかったので気になっていた作家さん。これまた大好きな花火がテーマということで読んでみました。

    花火が美しく見えるのは、花開いたその数秒間の裏にある、関わった人達の目に見えない想いがあるからなんだろうね。
    芯の強さを感じる物語。
    カバーのイラストも美しい。
    これも出会えたことに感謝の一冊です。

  • 花火の季節になったら読もうと思いながら5年以上積んだまま。今年こそ!と思ったのに、コロナのせいで花火大会ないやん。

    花火工場の息子として生まれながら、訳あって家を飛び出した主人公。祖父に呼ばれて戻ってみれば、そこには自分とさほど歳の変わらない女性の花火職人がいた。

    花火を見られなかったところで死ぬわけじゃなし、なのになぜ人は花火を見たがるのか。打ち上げ花火の演出を求める個人客の想いがちょっとした謎、かつて村で起きたことにこの花火職人がどう関わっているのかが大きな謎。ちょっぴり軽めの遠田潤子作品のようにも思えます。

    せめて本の中だけでも打ち上げ花火。

  • 小説はいかに読み手に情景を想像させるかが面白さの鍵となっていますが、これに出てくる花火の描写はリアリティを伴って脳裏に映像として浮かびあがりました。天頂に到達するまで五秒間、開いて消えるのは二秒間、花火の見方が少し変わった気がします。

  • とある町の花火工房の、花火師の話。
    ひとつの花火に突き動かされた女性と、事情で花火を直接見れなかった主人公が、客の求める花火を、そして自分たちの求める花火を求める話。

    先輩社員たる女性のキャラの勢いが良い。物語を強引に突き動かす勢い。それを最後の話で主人公が勢いを持つところが、好きなところ。

    花火には二つしかない。一瞬で消えるか、永遠に残るか。

  • 凋落した花火工場を舞台に、花火職人たちが奮闘する物語。作者さんの文章やテンポが好きです。 かつて両親を奪った事故から逃げ出すように一人暮らしをしていた主人公。祖父からの連絡で帰郷し、花火職人として修業していた風間と出会います。彼女と花火の依頼をこなしていく中で、自身の中にあった花火への思いに気付き、また風間の思いに触れていく連絡短編集です。 花火の色や作り方、仕組みなど様々な方向から物語を描き、感動へと繋がっていく魅力的な作品でした。

  • 花火師のお仕事小説。
    個々の花火にそれほど注目したことなかったけど、名前の由来とかわかってなるほどと思う。
    ともかく花火を見に行きたくなる。

    謎もあるけど、大体予想通りの展開で登場人物もそれぞれよくあるタイプではある。

  • 夏の風物詩・花火。夜空に大きく咲いて、散る。それは一瞬であるからこそ、儚く美しいのだと思う。
    ただ、その花火を打ち上げる花火師の仕事はもちろん一瞬ではない。様々な下準備があり、いろいろな想いがあり、狂おしいほどの情熱と覚悟がある。
    そこに登場人物を取り巻く謎が相まって、物語に力強さを与えている。

    きっと、大切な人と花火を見にいきたくなると思う。
    一面の花火――できるなら、濁りなく白銀に輝くギンカムロを。

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著者プロフィール

1983年千葉県生まれ。 第16回電撃小説大賞≪金賞≫受賞作『ヴァンダル画廊街の奇跡』(電撃文庫)でデビュー。著書に「特急便ガール!」シリーズ、「ドラフィル」シリーズ、『キーパーズ』『スプラッシュ!』『美の奇人たち』(いずれもメディアワークス文庫)。『ギンカムロ』『弾丸スタントヒーローズ』(共に集英社文庫)など。

「2018年 『星降プラネタリウム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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