Masato (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087456486

作品紹介・あらすじ

親の都合でオーストラリアに渡った小学生の真人。異文化の中でのいじめや衝突に苦しみながらも、やがて自分の居場所を見つけ出していく……。少年と家族の物語。坪田譲治文学賞受賞。(解説/金原瑞人)

感想・レビュー・書評

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  • 見知らぬ土地で、言葉の壁の前に放り出されたマサトの気持ちが、行動も併せてとても丁寧に描かれている。
    投げやりで、後ろ向きで、でもそれをうまく親にも吐き出せない・・・それが、サッカーをきっかけに少しずつ変わっていく。気持ちが変われば行動も変わり、友人ができ、言葉も変わる。少年のやわらかさがまぶしい。
    対照的に、マサトの母親は移住そのものへの拒否感からすべてにおいて態度がかたい。義務感、無力感、孤独な気持ち。そうしてマサトとすれ違っていくのが悲しい。息子が英語を話せるようになったらいい、という思いが反転していくのが、自分に経験もないのによく分かる。しゃべれるようになったのに、日本語で言えなんて、と憤るマサトの気持ちも。それほど引き込まれて読んだ。
    ワトソン・カレッジに願書を出したマサトを、父が褒めるところがいい。マサトが母をかわいそうに思いながらも、東京に帰ることは選べない、と思うところも。
    13歳、大人じゃないけど、子どもを脱しつつある時期なんだな、と思う。

  • オーストラリアの現地校に転校した5年生マサトの話。真人がどんどん英語がわかるようになっていくと同時にどんどん成長して、親とは違う自分の世界を作って、最後は進路を自分で決めて、母の反対を振り切ってオーストラリアに残る決断をする。真人ではなくてマットになっていき、マシュー・アンダーソンみたいな目立たない名前なら良いのに、と思いながらも、それでもMasatoと書くところに、アイデンティティと自我の確立を見た気がする。日本から連れてきて、ずっと友達でいてくれた柴犬のチロが死んでしまうくだりは感情移入して辛かった。犬は一番の友達だよな。

  • 「Matt」が面白かったので、いつか読みたいと思っていた。異国に暮らす小学生の葛藤、成長、友情。親子、夫婦の理想と現実。共感できることがたくさんあった。「Matt」も読み返してみたい。

  • 子どもの時に海外で暮らすことに対して、どちらかというとプラスな(華やかな)イメージしか持っていなかったので、苦労やストレスなどをリアルに感じられることができて良かったです!
    特に海外の暮らしに馴染めなかったお母さんの気持ちが、すごく伝わってきました。

    困難にぶつかりながら、マサトがオーストラリアでの生活を選び、これだけは譲れないと13歳で決断できるってすごいことだと思います。

  • 外国で暮らすことになった子どもとその家族の描写が良いのはもちろんのこと、プロットもとても良いのでちゃんと小説として楽しめた。
    子どものストレスも、母親の焦りもわかりすぎて、もっと早く読んでいたら辛くなっていたと思う。渡米から一年経って、自分もマサトと同じような経過をたどった今の時期に読んで良かった。数か月前に買っていたけど、今読んで良かった。
    子どもは吸収が早いから、英語ペラペラになった?、何か英語しゃべってみて。悪気なく子どもに言う人には、子を守るべき親として逆に問い返したい。ペラペラってどういう状態ですか?あなたは日本人にも、何か日本語しゃべってみてと言いますか?
    親がブレない信念を持っていること、変化に適応する子どもを否定しないこと、どちらの文化も否定しないこと、子どもと同じように苦労し努力すること、本当に大事だと思った。
    ぼくはイエローでホワイトで〜で描かれた移民二世とはまた違う、外国で暮らす日本の子どもの葛藤を伝えてくれる作品。これがもし、ぼくはイエローでホワイトで〜のような、よりキャッチーなタイトルだったらもっと多くの人に読まれているのではないかと思う。

  • 帰国生の気持ちをあまりにうまくとらえていて感動しました。大人になった元帰国生にとっては、共感しすぎて、辛すぎて、休み休みしか読めませんでした笑
    帰国生の華やかで恵まれた面と常に対をなす、混乱や欠落感、自分が何者かわからない孤独をぜひ、いろんな人に知ってほしい。。!

  • 2月に図書館で借りた本が文庫になったので入手。
    父親の仕事でオーストラリアの小学校の5年生に編入した少年の成長物語。帰国子女というと漠然といいイメージがあるが、苦労をしながらも少しずつ現地に馴染んでいく少年と、いずれ日本に戻るからなかなか馴染めない母親、そして仕事にいそがしい父親の思いのすれ違いや葛藤が生々しく、現地にいる別の家族の話や学校で出会う他の国から来たこどもの例もあわせて、現実の駐在家庭の課題やストレスが伝わってくる。
    先日借りた『ジャパン・トリップ』をいっしょに読んだ中学生の娘がこちらも読んでくれるといいな…思春期の子どもの気持ち+異文化に生きる葛藤(大人も子どもも)が混ざり合っていて、これから多文化共生社会を生きることになる子どもたちに…いやいや留学や外国ぐらしなんてまったく縁が無いよというごく普通の日本の(窮屈な学校生活に倦んだ)中高生にも、そして子を持つ大人たちみんなに、一度は出会って追体験してほしい物語だと思うので。
    解説は金原瑞人。この前作『さよならオレンジ』と次作『ジャパン・トリップ』までまとめて推薦してくださっている。

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著者プロフィール

大阪生まれ。2013年『さようなら、オレンジ』で第29回太宰治賞を受賞し、デビュー。同作で第150回芥川賞候補・第8回大江健三郎賞受賞・2014年本屋大賞4位。2015年刊行の『Masato』(集英社文庫)で第32回坪田譲治文学賞受賞。他、『ジャパン・トリップ』(角川文庫)、『Matt』(集英社)、『サンクチュアリ』(筑摩書房)の著作がある。

「2022年 『サウンド・ポスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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