- Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087466072
感想・レビュー・書評
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毎日新聞の記者である藤原氏による、アフリカを題材にしたエッセイ11編が収められている。
僕等はつい、アフリカという地域を一括りに考えてしまいがちだが、国や民族によってかなり気質の違いがあるようだ。実はゲバラが主導したコンゴ革命も、コンゴ人の意識があまりにも低いので、ルワンダ人が活躍したらしい。
そのルワンダの中でも王族を中心としたツチ族と、民衆を中心としたフツ族が対立し、悲惨な内戦を繰り返している。民族間の違いについて、地元の人はあまり多くを語らないが、きっと何か歴史的な背景があるのだろう。
本書では貧しい国や地域に対しての、援助の在り方にも触れている。受け取る側にも尊厳があり、まずは相手を知る事が重要なのだそうだ。
マスコミに切り取られた断片のような報道を鵜呑みにせず、自分なりの方法で調べ理解する事が大切なのだと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ハゲワシの前でうずくまる少女の写真を撮ったフォトジャーナリストの自殺の背景や、アフリカ南部の国々を歩いた著者の、とても興味深い一冊でした。
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「老鉱夫の勲章」が興味深かった。
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第3回開高健ノンフィクション大賞受賞作。アフリカ駐在記者の筆者による本作。知識として知らない事象も多く、また、「アフリカの国」というものに対して何も知らない上に、なんとなく画一的なイメージをもってしまっている先進国の私に、ひとつの示唆を与えてくれるような内容。文章は読みやすく、読んで何か残るという意味では◎。ルワンダ虐殺なんてつい最近のことなのに内容すらろくに知らかった自分が恥ずかしい。
著者もかいてあるように、タイトルもひとつのモデルケース。
「絵はがきにされた」少年(今は老人)は、決して被害者意識などなく、前向きに絵はがきになったことを喜んでいた。
慄然と存在する人種差別や貧困の複雑な実態に対し、先進国のマスコミに主導される勝手な先入観は、表面的な解釈のための自己満足でしかない。 ・・・ということを等身大の体験を通して伝えています。
>以下本文より引用
漠然と無数の人々への援助を考えるよりも、救うべき相手をまず知ることから始めなければならない。先進国の首脳会議などの会場を取り囲み、「貧困解消、貧富の格差の是正」を叫ぶ若者たちがいる。こうしたエネルギーを見ていると、一年でいいからアフリカに行って自分の暮らしを打ち立ててみたらいいと思う。一人のアフリカ人でもいい。自分が親しくなったたった一人でいい。貧しさから人を救い出す、人を向上させるということがどれほどのことで、どれほど自分自身を傷つけることなのか、きっとわかるはずだ。一人を終えたら二人、三人といけばいい。一般論を語るのはその後でいい。いや、経験してみれば、きっと、多くを語らなくなる。 -
大自然と野生動物に囲まれた雄大な大地。そして、それと対を
なすように語られる貧困と支援。アフリカ以外の国の人たちが
思い浮かべる典型的なアフリカのイメージ。
だが、それだけでアフリカを語っていいのだろうかという問題提起が
なされている。
先進国が考える援助が、本当にアフリカの為になっているのか。
現地で支援を受ける人たちは、本当にそれを必要としているのか。
例えば日本から自衛隊も出動したソマリア海賊の問題がある。彼らを
退治したり、彼らから輸送船を守るだけで問題は解決するのか。
そもそもは欧州から持ちこまれた産業廃棄物がソマリア沖に不法投棄
されたことで漁場が荒れ、漁民たちの収入が経たれたのではないか。
例えば子供の労働力の問題がある。学校にも行かず家計を助ける
為に働く子供たち。それを児童虐待だと先進国が騒ぎ出す。
子供たちは職場から締め出されるが、学校に戻るのではない。もっと
環境の悪い路上での商売を始めるのだ。
貧しいから可哀想。それはモノが溢れる地域の傲慢な思いなのかも
しれない。貧しくとも幸せな生活はあるのだろう。
著者が特派員生活の中で感じたことや、アフリカの人々から聞いた
話をエッセイ風にまとめている。読みやすいが読後には心にずしりと
重い何かを残す作品だ。 -
私たちが思い描く「アフリカ」から一歩踏み込んだノンフィクション。貧困や紛争そのものではなく、その中の人々について書かれています。読みかけを放置してたので、後半に印象が残ることになったけど、中でもルワンダについて、更に知りたくなりました。
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メディアなんかで盛んにアピールされていて、植え付けられた一般的なイメージが払拭された一冊。
当たり前だけど文化や思想の多面性、歴史的背景などなど、新鮮でした。あまりにも一辺倒な情報だけ垂れ流されていて、それでアフリカを理解した気になっていたのかもと気づかされた。 -
特派員としてアフリカで5年半過ごした新聞記者によるアフリカをめぐるエッセー。アフリカ=貧困、悲惨といったステレオタイプに陥りがちな報道ではない、筆者がその眼でみた現実にが淡々と綴られています。「絵はがきにされた少年」も、それだけ聞くと植民地時代に虐げられた少年の姿をイメージしてしまいますが、実際はそんな単純なものではありません。この本を読むと、私たちのアフリカに対する思いもより一層複雑なものに変わります。ピュリッツァー賞を受賞した有名な写真「ハゲワシと少女」をめぐる話、鉱山での労働について語る老鉱夫の話など、今まで漠然と抱いていたイメージが覆されることも多いでしょう。
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「アフリカ」を大きなテーマに著者の個人的な雑感をすくい取り、筆のおもむくまま書きつらねたような本書は、言ってみれば「誰にでも書ける」種類の作品だ——はるばる地球の裏側まで出かけていき、現地に根を張る行動力と経済力に、最低限英語もしくはフランス語を使いこなす語学力、それと他人に金を払わせるだけの文章をものせる筆力と感受性さえあれば、誰でも。
確かに散漫のきらいはあるが、それが逆に強みでもある。アフリカに何の興味も予備知識もない向きにも、バラエティに富んだ題材のどこかに、かねて自分が関心を抱くものとの何らかの縁を見出すことは、そう難しくないだろう。
私の場合は「自殺者」だった。どうしようもないメンヘラのジャンキーだった彼の親友による、「そんでもってポーンとピュリッツァー賞」の科白は印象的だ。
かくも良き友に恵まれていたのに、それでも、彼は死なねばならなかった。
読後の総括として、アフリカはやはり遠く、日本とは何もかもがかけ離れていた。ただアパルトヘイトでも、内戦でも、貧富の差でも、犯罪でも、エイズの蔓延でもないところでその結論に至れたことは、小さからぬ収穫だった。
私と同じく日本で生まれ、そのまま日本で死んでいくのだろうと思っている人々に、ぜひ一読を勧めたい。
2011/3/3~3/4読了