獣使い エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

  • 集英社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087607413

作品紹介・あらすじ

極寒のスウェーデン。森の中から突然現れ、通りがかった車に轢かれて死んだ少女。その目はくりぬかれ、鼓膜は破られ、舌も抜かれていた。世界で2000万部超の人気シリーズ第9弾!(解説/大矢博子)

感想・レビュー・書評

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  • エリカ&パトリック事件簿、第9作。
    全世界で2000万部を売り上げているという人気シリーズです。

    幼い3人の我が子の世話に忙しいエリカは、作家。
    刑務所に収監中の女性に、取材を始めたところです。
    少女の行方不明事件が起きていて、夫で刑事のパトリックは捜査に奔走していました。
    しかし、ついに殺人事件となってしまいます。

    馬術を習っている少女たちの一人が被害者だったため、周辺に捜査が及びますが。
    異なる環境の登場人物たちを鮮やかに描き分ける手腕は、いつもながら、レベルが高い。
    いくつもの家庭で起きる虐待の描写があり、そんなに多いのかと思わせます。そして、それがどう事件につながってくるのか‥

    スリリングと言えばそうだけれど、むごい事件で、今回は解決とまで言えない状況で引っ張られるので、いやこんなひどい話でいいのかと思うほど。
    骨太な構成とリアルな共感も呼ぶ緻密な描写で、特異な人物を描いて読み応えはありますが~怖すぎ。

    前作で大変な目にあったエリカの妹アンナにも、ようやく復活の兆し? いや、既に3度目ぐらいの大危機ですよ。
    そろそろ幸せにしてあげてほしい(笑)

  • エリカ&パトリックシリーズ9巻目。期待に違わず面白かった。
    シリーズは読んだことがあるけれど・・・と読むのを止めてしまうのはもったいない。ぜひ再会してもらいたい。

    読み続けなかった人の理由はだいたい二つである。

    エリカが活躍しない。
    あの巻が面白くなかった。

    大丈夫。エリカは活躍する。
    妊娠や出産で、動けない状態もあった。
    動いたら動いたで、妊婦がそんなことするなんて! と、よけいにハラハラするはめになった。

    もうそんなことはない。三人の子に手を焼きつつも、彼女は、事件に鼻を首をつっこんでくれる。
    そんな彼女に、夫のパトリック刑事は? その心境と反応も面白さの一つである。

    そして「あの巻」こと4巻目『死を哭く鳥』だ。
    申し訳ないが、私もあれは好まない。
    「なんかこのシリーズ、面白さが下降線だなあ」との印象を持ってしまっても無理はない。

    ざっくりした私見だが、このシリーズは4巻目で面白さが落ち込んだ。
    しかし、次から上がってきている。

    長らく、私は3巻目『悪童』が一番だと思っていた。
    けれども、近頃は悩む。8巻目『死神遊び』がきて、そして、この最新刊『獣使い』があるからだ。

    北欧に根強くある問題は、家庭内の暴力である。
    「自由と平等、男女同等の国、スウェーデン!」
    夢の社会を思い描いていたむきには、衝撃の事実かもしれない。
    シリーズを通して、著者は家庭内に存在する非道を非道として描いてきた。
    この巻でもまたそれを描く。

    ではこれは、いたましく、暗く、笑ってはいけない、重いばかりの物語かというと、ところがそんなことはない。
    スウェーデンには、極寒の冬だけでなく、まぶしく明るい夏もあるのだ。
    非道をはらんだ家庭もあるいっぽう、
    愛と尊敬とユーモアに満ちた家庭も、当然だが、存在する。
    そんな家庭のあれこれも差し挟んで、社会の問題をつきつけつつ、読者にはちゃんと「読む楽しみ」として、物語を提供しているのだ。

    そして、この『獣使い』は、サーカスのイメージが印象的だった。

    今でこそ、動物の芸は虐待の温床になりがちだと、問題視されている。けれども、1970年代、生活にあまり楽しみもない田舎には「異国の動物を直に見る」という役割もあったのだと知った。
    そして、人生の後々になっても、あの時見た珍しい動物や、美しい衣装、曲芸の数々を、走馬燈のように思い描く。

    それが、暗い日々に、どれだけの楽しみになったことか。

    その明暗が、この一冊には、様々に描かれている。

    どうぞその目でご覧あれ。

  • エリカとパトリックがそれぞれ追っている事件がリンクするのが定番だけど、今回はあまりにかけはなれててどうなのと思いましたがやはり繋がっていました。
    親はやっぱり子供を守りたいものなのですね。色んな子供への愛情がある。
    最後の最後まで驚かされる。そして後味が悪いです。
    エリカとパトリックの結びつきの強さが羨ましい。

  • シリーズ物。

    本書でも感じられる、北欧ミステリー特有の土臭さや薄曇りな感じは結構好きだ。

    パトリックとエリカが別々に追っている事件が交差する展開は予定調和だが、読後感は充実している。

  • エリカ&パトリックシリーズの第9弾。

    刑務所に収監されている女性の取材に通うエリカ。
    とうとう死者が出た少女誘拐事件を追うパトリック。
    途中まで残りのページ数の少なさに、解決できるんだろうかと心配になったが、急転直下、終わりを迎えられた。

    とはいえ、少女たちの誘拐事件が、その妹たちの馬術大会の日に起こってることに、
    何年も誰も気がつかない、しかもそれに警察ではないエリカが気がつくというのは、
    さすがに不自然では。

    救われるかと思えた女囚が最後に突き落とされる恐怖がかわいそうだった。
    アンナとダーンの仲が修復できると良いな。
    そして今度こそ無事に赤ちゃんが産まれるのも。

  • いつもの流れ。終わり方も褒められるものではない。

  • エリカ&パトリック
    スウェーデン、フィエルバッカ周辺の連続少女誘拐事件の顛末
    救いは次の部分: p. 526、「彼女は、(略)親は自分を守ってくれるとわかっていた。」

  • エリカアンドパトリックシリーズ第9作。

    あらすじ
    行方不明だった少女が発見される。眼はくりぬかれ、舌が切られ、耳は聞こえなかった。少女は馬術クラブの会員だった。オーナーの女性は、獣医の夫との間にできた娘に愛情が持てず、厳しさでクラブを運営している。獣医の父親は暴力で妻を支配し、車椅子になった今も同じ。
    エリカは本の執筆取材で、夫殺しの受刑者と面会している。当日子供が二人いたが、娘を地下の鎖につないでいた。受刑者は新聞の切り抜きを保管しているが、全て少女が行方不明になった事件だった。さらに、事件が発覚する数日前には絵はがきが届いていた。
    受刑者の娘は恐ろしい凶暴性を持っており、父親を殺害したのだった。さらに受刑者だけではなく、息子にも被害が及びそうなため、罪は自分がかぶり、息子は姉夫妻に預け、外国に移住させた。残された娘は里子に出され、同居していた少女と意気投合し、さらに凶暴性を加速させていく。二人とも溺死を装い、成人していた。それが馬術クラブのオーナーだった。 
    獣医の夫もまた凶暴性を持っていた。父親が昔から誘拐を繰り返していたのだった。馬術オーナーたちは父親の後を継ぎ、少女たちを殺害していた。

    しばらくコージーミステリみたいになっていたこのシリーズ。久しぶりにごつくなっていた。シリーズの特徴として現在に過去の回想がはさまれる。受刑者の夫はサーカスの獣使い。てっきりこの夫が悪の根源かと思ったら、騙された。家庭思いの父親だった。
    それより獣医家族の狂気が底なしだつた。
    楽しかったのは、ユスタかな。老刑事で、シリーズ当初はやる気のないイメージ。でも、家族をなくした経験とかあって、思いやりがある。そして有能。年を重ねるのに出来る限り自分で動こうとしてよかった。

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