フラミンゴの村

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (136ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714401

作品紹介・あらすじ

19世紀末のベルギー。農夫のアダン氏は、ある日突然「妻がフラミンゴになる」という不条理に陥る。忌み物扱いされるのを避けるため村人の目に触れぬようひた隠しにするが、幼い息子の発言で村中に知れわたってしまう。しかし、司祭の口から驚きの事実が告げられ…。極限状況での人間心理を暴く。第35回すばる文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 男が眠りから覚めると虫になってしまったのはカフカの変身、男が自尊心と羞恥心を拗らせて虎になってしまったのは中島敦の山月記。そしてこのフラミンゴの村では、女たちがフラミンゴになってしまう。有名な変身譚と比較してみると中島敦の「山月記」とは違って、村中の女達が何故フラミンゴになってしまったかという理由には触れられていない。カフカの「変身」のように、変身してしまった理由は明かされず、ただただ不条理な状況下での人間心理が描かれている。赤い鳥『フラミンゴ』というのは作中でも出てくるメーテルリンクの『青い鳥』との対比なのだろうか?カフカの変身と大きく異なるのは、変身してしまったものの目線ではなく残された男たちの目線で進行するところだ。フラミンゴ(女たち)の内面は描かれずに、男たちの狼狽している様子や、不条理な状況にいかに対応するかが描かれている。特に村八分などの極限状況での人間心理や疎外に重点が置かれているように思えた。

  • この先どんな結末がまっているんだろうかとドキドキしながら読んだ。しかし意外性のある結末というわけでもなく、散りばめられていた謎も何一つわからないまま。ちょっと消化不良感が否めない。マジックリアリズムだからと言われれば、そういうものかぁ、とも思うが、百年の孤独が現実離れした描写も含めてすごく面白かったので、なにかもの足りない。
    フラミンゴにエロティシズムを見いだしている点においては斬新な作品だなと思った

  • 結局一体何だったんだ

  • ベルギーの小さな村に住むアダン氏は、ある夜、寝室で妻がフラミンゴに変わってしまったことを目撃する。彼はいくつかの思考を巡らすうちに、その事実を受け入れるも、村人にはひた隠しにしたまま生活を続けるのです。そんな密かな暮らしも、ある日彼の息子が放った一言により、秘密を村中の人々に知られてしまうことになったのをきっかけに、終わりを迎えるのですが…。

    妻がフラミンゴに変わってしまうという不条理な世界。やはり思い浮かべるのは、カフカが書いた『変身』で毒虫に変わってしまったグレゴール・ザムザです。不条理な世界を、ごく当たり前のように受け入れ、変わらぬ日常を送ろうとしたザムザとは対照的に、アダン氏の日常は激変してしまうのです。
    しかし、ザムザと同じように不条理な世界においても、こちらの『フラミンゴの村』が描く世界には分かりやすい価値観が存在するようです。それは、フラミンゴになってしまった妻を守ろうと奮闘するアダン氏の様子によく表れています。家族と秘密を守るべく、止むに止むれず闘うアダン氏の姿は、この物語の見どころの一つではないでしょうか。

    本作を読んで、物語の結末もアダン氏の村に表れた突然の兆候も、すべては「業」によるものではないか…と、僕は思っています。
    それは、受け入れがたい事実を目の前にした時の非力さや、秘密を抱えて生きる人々の持つ罪悪感といったものなのですが。本作では絶望的な状況にも、日常の暮らしを平静と変わらず送る人々の姿が描かれており、業というものを肯定的に捉えるより他のない物語であるように感じました。

  • 「19世紀末のベルギー。農夫のアダン氏は、ある日突然「妻がフラミンゴになる」という不条理に陥る。忌み物扱いされるのを避けるため村人の目に触れぬようひた隠しにするが、幼い息子の発言で村中に知れわたってしまう。しかし、司祭の口から驚きの事実が告げられ…。極限状況での人間心理を暴く。第35回すばる文学賞受賞作。」

  • ラストちょっと気持ち悪いというか…怖いというか…ヤベーぞこいつら…

  • 取材をした人が淡々した語りと、人の心の動きの描写とのコントラスに、フラミンゴの鮮やか色があいまっか、スルスルと読み進められた。

  • 友人の薦めで読みました。
    突然村中の女性がフラミンゴになった中で
    語り手によって伝えられる様々な出来事が緊迫感持って説明される。人の細かな心理描写や行動が実際に起こりそうなものが多く、スラスラと読み進められる。
    けど結局よくわからなかったのは自身の想像力が足りないからなんだろうなぁと思う。

  • 第35回すばる文学賞受賞作品。

    文章は重厚だがリーダビリティに優れている。文章そのものも味わうことができる小説。
    ある事件が起こった村に対する取材をもとに、その事件とも村とも関わりのない第三者が想像を交えながら事件について語り進める、というスタイル。このため真相は定かではない。「藪の中」を若干思い出させる。
    この小説を読んで私のフラミンゴの認識がすっかり艶めかしいものになってしまった。今度動物園に行った時改めてじっくり眺めてみたい。

    村人たちはフラミンゴを家族として愛し続け、全力で守ろうとする。なんて愛が深い人々だろう、と思った。フラミンゴになったところで愛があっさり冷めるとか、フラミンゴになるならない関係なく愛のない夫婦もいてもいいと思うのだが、村人は皆家族を強く愛しているようだ。そこに感動と奇妙さを同時に覚えた。真相は「藪の中」スタイルなので、実際はそんなにひたむきに愛を貫いた村人ばかりではなかったかもしれないと想像をひろげることもできる。
    良いマジックリアリズム、ですね。

  • ベルギーの田舎町で起きた珍事件。

    町の女性たちが、次々とフラミンゴになってしまう非常事態に
    残された男たちは狼狽るばかりだった。

    誰もがフラミンゴたちを守ろうと必死になり、
    一致団結していたもの最初のうちだけで

    不安と疲労から徐々に村人たちの分裂、
    のちに証言されることになる男たちとフラミンゴたちの戯れ。

    突然、空の上で燃えて消えたフラミンゴたち。

    奇怪で艶かしい話し。
    どうして女の人はフラミンゴになってしまったの?
    フラミンゴはどうして消えてしまったの?

    そこは読者の想像力で補って、
    窮地に立たされたときの人間たちの行動がこの話では肝心なところ、なのかな?

    災害が起きたときのことを思ったよ。
    でも、フラミンゴの謎はやっぱり気になるよ

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著者プロフィール

2011年、「フラミンゴの村」にて第35回すばる文学賞受賞(集英社より書籍化)。その他の著書に『別府フロマラソン』、『文字の消息』(いずれも書誌侃侃房)、共著『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短編29』(ジェイ・ルービン編、村上春樹序文、新潮社)、共編訳書『芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚』(柴田元幸との共編訳、岩波書店)などがある。京都在住。

「2019年 『雨とカラス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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