- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087718102
作品紹介・あらすじ
「俺たち、一緒に住まないか? 」
恭平と章吾。正反対の同級生。
唯一の共通点は、1人で子どもを育てていること――。
シングルファーザーとして4歳の娘を育てる36歳の恭平。亡き妻に任せっぱなしだった家事・育児に突如直面することになり、会社でもキャリアシフトを求められ、心身ともにギリギリの日々を送っている。そんななか再会するのが、高校の同級生・章吾。シッターというケア労働に従事しながら、章吾もまた、1人で1歳半の息子を育てていたのだった。互いの利害が一致したことから2人の父と娘と息子という4人暮らしが始まるも、すぐにひずみが生まれて……。
「ケア」と「キャリア」のはざまで引き裂かれるすべての人に贈る、新しい時代のための拡張家族の物語!
【著者略歴】
白岩 玄(しらいわ・げん)
1983年、京都府京都市生まれ。2004年『野ブタ。をプロデュース』で第41回文藝賞を受賞しデビュー。同作は第132回芥川賞候補作となり、テレビドラマ化される。他の著書に『空に唄う』『愛について』『未婚30』『R30の欲望スイッチ――欲しがらない若者の、本当の欲望』『ヒーロー!』『たてがみを捨てたライオンたち』、共著に『ミルクとコロナ』がある。
感想・レビュー・書評
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「父親のふりをする」
男性には、なかなか突きつけられることの多い内容だ。母親に育児のメインとなる部分をなんだかんだ意味つけて押しつけるくせに、男ばかりではまともに動かなくなってきている社会のシステム。
誰にとっても生きづらくなってきていますよね…と。
父親二人と男女1人づつの幼児。4人の臨時的かつ大人の間に性愛のない家族、とても素晴らしいと思った。
家族は多様であってよい。
支え合える人たちが集団を形成して、ともに育っていく。それが家族なんだと思う。
現代日本のほとんどの父親(のふりをした者)は必ず読め。
♪Pretender/Official髭男dism(2019)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
性格も違う2人の同級生が、共同生活を始める。
それは、2人ともシングルファーザーだった為で、互いの利害が一致したことによる共同生活だった。
亡き妻あと、4歳の娘を育てる恭平は家事育児を全くしてなかった為、保育園の後はシッターさんにお願いしてたわけだが、営業職を離れ人事に回されても不満を言えるわけもなく心身ともにギリギリだった。
章吾は、保育士を辞めシッターをしているが、妻が単身赴任で海外へ行ったため1人で1歳半の息子を育てていた。
ちょいちょい恭平の元部下の女性である井口さんは、ズバッと本音を言うのだが、なかなか鋭いのである。
「世の中にはそういう無意識な偏見を持っている男の人がたくさんいるんですよ。そしてその偏見の集まりが男社会の大枠を作ってるんです。男は男同士で子どもを育てない、育てるなら夫婦関係にある男と女、しかも女がこのほとんどを担うのが子どもにとって望ましいって、どっかでそう決めつけてないですか?」
女は所詮、結婚や出産で仕事を離れる可能性が高いのだから、大きな仕事を任せたり、重要なポストを与える必要はないと下に見られている。と言うそれに対して違うと声を大にして言い返せる男っているだろうか?と思った。
これは仕事上でのことだが、子育てにしても誰が育ててるのかというより、子どもにとって大事なのは信頼できる大人が近くにいるかどうかで、子どもに対する愛情は誰が注いだっていいんじゃないと言った叔母さんにそうだよなぁと共感した。
最後に章吾が言った「子どもを持つことが、つらく苦しいことだって思う人が、少しでも減ればいいなっていう思いがあるからなんだ。まぁ、それが自分にできる唯一のことだったいうのもあるんだけど…なんていうか、子どもたちをみてると、たとえ親のエゴでこの世に生まれたんだとしても、彼らが大人たちから歓迎されない社会にはしたくないって思うんだよ。だって、自分が受け入れられることを疑わずに生まれてくるのに、最初から面倒な存在だと思われてたらあんまりじゃない?」
これは恭平だけじゃなく私にも響いてきた。シッターの仕事をこのように考えてるなんて凄いなあと感心しかない。
男の子育て、なかなか良いじゃないか。 -
育児に奮闘する二人の父親が交互に語る物語である。一方は、妻と死別後、4歳の娘を一人で育てる会社員の恭平。もう一方は、妻は海外勤務、自分は国内でシッターとして働きながら1歳の息子を育てる章吾。彼らは偶然の再会から共に暮らす中で、様々な問題に直面する。
すべてが二人の目を通して描かれた話なので、他の人々の気持ちがストレートに伝わってこないのがもどかしい。例えば章吾の妻「すみれさん」の本当の気持ちはどうなのか。章吾の「相手を利用していると思われるのが嫌だから」と言うのをきいて「かっこつけてんじゃねえよ!」と言いたくなった。彼女の本心をきいてみたい。彼が両親を反面教師として保育に関わる様子には、一貫した主張があって素晴らしいと感じる。本音と主義主張との葛藤を表した部分は読む側としても辛くなる。
一方、恭平の場合は成長物語の「王道」だ。一人育児、また父親として女児を育てる上で直面する問題が赤裸々に語られ、気づかされることも多い。「男女共同参画社会」が提唱されてかなりの年月がたっても固定観念が根強いことをあらためて教えられた気がする。 -
男性の目線でのこういった作品が書かれるようになって嬉しいなぁ…。
育児、家事、仕事、他者のケア。
基本的に血縁の家族単位、あるいは個人単位の責任ということに今の日本社会ではなってしまっているそれらは、実際そこで全て成立させるのは無理なのだ。
今作で描かれた一つの形のように、もっと広がりと緩さのある繋がりの中で行っていけることを願う。 -
色々と考えさせられる、内容だった。
家族とは、親とは様々な価値観が書かぶつかり合う。これからの社会で、家族のあり方を考えるきっかけになる一冊。 -
一年前に妻を亡くし、1人で4歳の娘を育てることになった恭平、中東に単身赴任した妻の息子を育てるベビーシッターの章吾。共に暮らすことになった2人が互いに助け合い、意見をかわし、それぞれが親として成長して行く過程を描くストーリー。
若いのにどこまでも古臭い家族観にとらわれた恭平の内面が描かれている部分は正直イラっとしたし、章吾の卑屈な面や、章吾の妻・すみれさんの身勝手さにもなんだかな〜だったけど、作品全体を通じて描かれる子育てをめぐる世の中のあるべき姿には頷けることばかり。
特に、
「子供たちをみてると、たとえ親のエゴでこの世に生まれたんだとしても、彼らが大人たちから歓迎されないような社会にはしたくないって思うんだよ。だって、自分が受け入れられることを疑わずに生まれてくるのに、最初から面倒な存在だと思われたらあんまりじゃない?」
という章吾の言葉には全面的に賛成。
子どもに安心感を与え、社会全体で子どもの成長を見守っていける環境を整える必要に迫られていると思う。
若い親たちが子育てを楽しいと思える世の中になるように、まず変えていかなきゃ行けないのは私たち古い世代の意識なんだろうなぁ。 -
この話、好きだ。
単調かもしれないし、多様性と騒ぐ世の中的に適度な距離感な本かもしれないが、誰かが始める、書く、という表現で表された良い本だと思った。
2人の男性、高校の同級生が、それぞれの子ども?を連れて同居する。章吾はシッター、恭平は妻を亡くしたシングルファーザー
その関係性から、男として育てられ、ろくに家庭をかえりみなかった恭平の成長記録でもある。
章吾も実は恋心を抱いた妻の連れ子を助ける目的の家庭を築いた、実の親ではない。
正に多様性。
男性作家だから、さらにいいのかも。口調も優しく、それぞれの葛藤がとても良かった。
子育てにはその場にいない人にいちいち言おうとは思わない些細な喜びや驚きがある。
よのなかにはそういう無意識な偏見を持っている男の人がたくさんいるんですよ。そしてその偏見の集まりが男社会の大枠を作ってるんです。男は子どもを育てない、育てるなら夫婦関係なはある男社会と女、しかも女がそのほとんどを担うのが子どもにとって望ましいって、どっかでそう決めつけてないですか?
子どもを作るのは親のエゴでも、生まれてきた子どもが歓迎されない社会にはしたくない。 -
ある番組で紹介していたので、手に取ってみました。
イメージでは、シングルファーザー同士が助け合う為に同居して、楽しいエピソードをみたいな話かと思っていましたが、全く違いました。
男同士で同居する事の世間の目の難しさ、妻を亡くし娘と向き合うことの大変さ、覚悟、家事。
周りから反対され、単身で働く奥さんを支え、他人の子供を育てる覚悟。
その2家族が少しづつ変わっていくのですが、細やかな気持ちの描写や、日本の男性の育児のかかわりかたの難しさなど、とても考えさせられる話でした。 -
男性の育児に対する当事者意識を高めるためにはどうしたら良いのだろう。中には何も言われなくても積極的に子育てに取り組まれている方もいるとは思うが、個人的な経験からすると夫はいつも妻のヘルパー(サブ)としての存在にいて、その先に一歩踏み出し積極的に子供と接しているように見受けられない。妻が子供の第一監督者である。という意識を無意識レベルで持っていることを自覚して、週末だけでも良いから積極的な父親の振りをするところから少しずつ変化してほしいと思う。その第一歩として本書を夫にも読ませたい!