- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087754520
作品紹介・あらすじ
孤独で辛くて怖いのは、この世で自分だけだと思っていた。
東京生まれの秀才・佳乃と、完璧な笑顔を持つ美少女・叶。
北海道の中高一貫の女子校を舞台に、やりきれない思春期の焦燥や少女たちの成長を描く、渾身の書き下ろし青春長編。
北海道に新設されたばかりの中高一貫の女子校・築山学園。進学校として全国から一期生を募り、東京生まれの宮田佳乃は東京からトップの成績で入学した。同じクラスには地元生まれの成績優秀者・奥沢叶がいた。奥沢はパッと目を引く美少女で、そつのない優等生。宮田はその笑顔の裏に隠された強烈なプライドを、初対面のときからかぎ取っていたーー。
【著者略歴】
安壇 美緒(あだん みお)
1986年北海道生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。2017年、『天龍院亜希子の日記』で第30回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。本作は2作目の著書。
感想・レビュー・書評
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「ラブカは静かに弓を持つ」を読んで面白かったので、その前の作品も読んでみようと手にしました。
北海道に新設された中高一貫の進学校、築山学園がこの作品の舞台になっている。主人公は2人、出身は東京で成績優秀でピアノの才能もある宮田佳乃、もうひとりは地元でやはり成績優秀かつ美少女の奥沢叶…。この2人の入学年と高校2年生になった年が描かれている…。
女子学生の気持ちが伝わってきます。2人はライバルだけれど、どこか似たもの同士…強いようで弱く、いつも誰かの助けを求めている…『人が思うよりずっと、この世で奇跡は起きるから。』 この言葉に救われました!この2人の今後がすごく気になります。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
金木犀の匂いがどこからともなく漂う時期に、この本を読みました。
この年代特有の感情の機敏さが丁寧に書かれた本です。
2人ほど勉強はできなかったけど、運動も楽器もできなくてかわいくもない私には勉強しかないと思っていた時期がありました。
ほかのことなんか見えないくらい勉強に捧げたあの頃。
しっかりと挫折も経験したのですがね…
女の子同士の友情が今の私にはまぶしいくらいでした。
みなみも馨もいいキャラしてます。
どんなに完璧に見える人にもきっとその人孤独や辛さがあるものですよね。
もし、宮田さんが、私もここにいていいって思ってくれているんなら、それは絶対に宮田さんもここにいていいってことなんだよ。
杉本さんのこの言葉が心に刺さりまくりました。
Miracles happen to me more than I think.
I have my fear and calamity. Other people have their own, too. -
288ページ
1700円
4月15日〜4月16日
宮田と奥沢は、家庭環境も性格も全然違うけれど、どこか似ている気がする。中高生時代の特有の空気感に浸れた。あの頃は、キラキラした未来を思い描くことはできても、自分がおばさんになることは想像すらしていなかった。二人の中高の5年間を通して、自分も同じ高校生に戻ったような不思議な読後感を味わっている。二人の卒業後が気になる。 -
『ラブカは静かに弓を持つ』が良かったので、2冊目の安壇美緒さん。
北海道に新設されたばかりの中高一貫の女子校・築山学園。東京からトップの成績で入学した秀才・宮田佳乃と、地元から通う優等生な美少女・奥沢叶。二人それぞれの視点から、入学したばかりの12歳の時と、高校最後の学校行事である合唱コンクールに臨む17歳の時が描かれています。
それぞれ家庭に事情を持つ主人公二人。誰しも自分が一番辛い、自分の辛さは誰にもわからない、そんなふうに思ってしまう時期ってありますよね。そんな思春期特有の悩みだったり焦燥だったり嫉妬だったり、そして葛藤しつつも成長していく過程が、とても繊細に瑞々しく描かれていました。
メテオラって何かと思って検索してみたところ、ギリシアの世界遺産で深く険しい峡谷に切り立った奇岩の頂上に建設されているキリスト教の修道院群なんだそうです。ふ〜ん、なるほど…と思いつつもいまいちしっくりこなかったので、さらに検索してみたところ…安壇さんは「メテオ」という「流星」を意味する英語から名付けたとのこと。すごい。この二つの意味がそろって、タイトルがめちゃめちゃしっくりきました。
こちらはすでに文庫本になっていて、なんとスピンオフの短編が収録されているとのこと…えぇっ読みたい!
装画もすごく素敵だなぁと思っていたら、『こいいじ』『おとなになっても』の漫画家・志村貴子さんでした。
ちなみに私はたけのこ派です。
安壇さんのデビュー作もぜひ読みます!
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「だから絶対大丈夫。人が思うよりもずっと、この世で奇跡は起きるから」「私が思うよりもずっと、私に奇跡は起こり得る」(281頁) -
「ラブカは静かに弓を持つ」が面白かったので、安壇美緒さんの他の小説も読もうと思い、まずこれを読みました。
第一印象は氷室冴子みたいだなーと思いました。エバーグリーンな少女たちの友情と成長の物語ですごく読後感が良かったです。作中の人物の親よりも年上になってしまった自分でもすんなり読めました。マンガでもドラマでもなく小説の良いところが全部あるとても好きな作品でした。
彼女たちのこれからの人生に幸あれと願わすにはいられないです。そして続きも読んでみたい。 -
新しくできた中高一貫女子校の一期生たちの話。
なんて簡単に説明できるわけではないけれど、それぞれ違ったキャラクターの登場人物たちが交わす会話のリズムがよかった。
成績ツートップの二人がそれぞれお互いに対して抱く感情と現実のズレもうまく書かれていて、それぞれの気持ちが痛いほど伝わってきました。
最後にいろいろな種明かしのようなものもあり、でもすべてが明らかになったわけでもなく、読者にそれぞれのその後を想像する余地が残されたのも、悪くないと思いました。
タイトルにある「金木犀」といえば、10月、秋の到来を感じさせてくれる木ですが、最初に出てきた季節が春だったのには違和感を感じましたが、そもそも「寒い土地には咲かない花が咲くのは奇跡」なのだからこういうこともある、ということなのでしょうか。
「人が思うよりもずっと、この世で奇跡は起きる」
「私が思うよりもずっと、私に奇跡は起こり得る」
そんなふうに声をかけたい、思ってほしい、YA世代におすすめ。 -
繊細で壊れそうな心をいろんな鎧で包み込みそれぞれのやり方で闘い続ける宮田と叶。
お互いにお互いを敵対視し、嫉妬し、全身から突き出すトゲを隠したまま過ごす6年間。
寮を備えた中高一貫の女子高。親から追い払われるように、親から逃れるために、あるいは自ら望んで、理由はそれぞれ異なっていたとしても、そこで過ごす6年間にはとても大きな意味がある。
ピアノと頭脳で他人を圧倒する孤高の宮田と、恵まれない環境から逃れるため必死で勉強をし「いい子」の笑顔を張り付ける美貌少女の叶。二人の表に出せない叫び声に胸が痛む。
世間的に見たら恵まれた中高生活なのだろう。新設校の第一期生。自分たちが自分たちの手で新しく作り上げていく交友関係、学校、伝統。そんな中できれいごとではない少女たちの苦悩が際立つ。自分の今まで、とこれから。どこに向かって進んでいけばいいのか。二人が自分が壊れてしまわないように、すがりついてきた「芯」を失ってしまったら、この先どうやって生きていけばいいのか。その答えは、意外と身近なところにあったりもする。
入学式からなぜか宮田のそばにいつづけるみなみ。宮田に無視されようが冷たくあしらわれようが、ずっとそばいにる。宮田にみなみがいてよかった。みなみ、グッジョブ、と思わずハグしたくなる。そして叶にとって時枝がいてよかった。その一言一言が小さな光となって暗闇を照らす。そんな存在がそばにいてよかった、と心から思う。クールすぎる宮田にみなみが思わず叫んだ言葉に、暗闇のそしてどん底にいる宮田に叶がかけた言葉に、自分自身が救われた気がする。多分多感な時間を過ごす全ての十代の心にも響くだろう。
そう、絶対大丈夫。人が思うよりずっと、この世で奇跡は起きるから。
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寮母さんの言葉が暖かくて、唯一の救い。
この2人が救われたのか、救われてないのか、分からないけど中高時代って代え難い一瞬の思い出を作るために過ごしてたのかもなぁと今更懐かしくなってしまった。
2人がもし盛大に分かり合えて友情を築いてしまったら感動したかもしれないけど、お互い心の底で何となく相手を理解して少し心の距離が縮まるだけだったのがきちんとリアルで感情移入した。
自分自身はここまで辛い家庭環境でもなく、完璧な美少女でもなく、自分を追い込む努力を出来る人間でもないけど、それぞれの地獄を抱えながらも人に共有して軽くなる方法を知っているほどは大人じゃないところ、どうしてもすれ違ってしまう友情とか、学生時代を過ごした人の多くが共感できる感情が散りばめられていて胸が締め付けられた。