- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087812190
感想・レビュー・書評
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櫻の季節に間に合うようにと読み出しました。
まぁ、面白いこと興味深いこと。
櫻についてとことん無知な自分を発見しました。
佐野藤右衛門さんは、京都・嵯峨にお住まいの桜守。
桜守と呼ばれるようになったのは、明治7年生まれの祖父の時代からだそうです。
それまでは、仁和寺の植木職人さんだったのです。
代々庭の仕事をしてたから、櫻の寿命というものを知っているのですね。
花の頃に見に行くことばかり考えていたけれど、櫻の寿命については考えもしなかったひと、ほとんどではありませんか?
そして、櫻のことを考えるということは、人間と同じ生き物だということを今一度知ることでもあるのです。
難しい哲学でもなんでもないけれど、その中身は深く、話題も多岐にわたります。
それについていくのが、楽しくてたまらない本です。
この桜守の佐野さんは、ソメイヨシノが嫌いなのですよ。
たまたま全国のどの土地にもなじみ、接ぎ木が簡単で生育が良いというだけ。あれは個性のないクローンだ、花に物語りがない、というわけです。
では物語とは何かというと、その土地になじんで、その環境のもとだからこそ咲くのが、物語のある櫻なのだそうですよ。
本の中にも続々と登場します。
千島の櫻、広島・江波山の被爆櫻、仁和寺の御室の櫻、富士山の麓に咲く富士桜などなど。
自分の足で現実に出向いているひとの話なので、説得力もあります。
ところで「正しい花見の仕方」とはなんでしょう?
タイミングが良いので、少しだけお伝えしておきます。
正しい花見とは、人間が櫻に合わせること。
たとえば、根元にビニールを敷いて座るのはやめましょう。
そして、カラオケで大騒ぎするのは、やめましょう。
そのわけは?すべてこの本に書いてあります。
花が無いときの、ヤマザクラと大島桜と彼岸桜の簡単な見分け方も載っていますので、櫻のビギナーさんにもお勧め。
もちろん、さっそく近所の山桜の葉をしげしげと見てきました。
咲いたときがはじめではない、葉が落ちていくときからが、櫻の一年の始まりなのです。
今度は、夏の葉の茂りも、秋の枯れゆく様も、しっかり見届けましょう。
櫻が満月に向かって咲くということさえ知らなかったわたしですが、もっと櫻を大切にしたくなったのは確かです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今年もまた桜の季節がやってきた。
人々が桜の花を愛でるのは、わずか5日間ばかりのことだそうだ。残りの360日を誰も見向きもしない桜に気にかけ世話をしているのが桜守の佐野藤右衛門さん。
この本には「植藤造園」16代目として日本全国の桜を見守り続けてきた人の桜への愛と含蓄のある言葉がぎっしり詰まっている。
桜守として銘木を守って彼が一番好きなのは、人知れず咲く山桜だという。山桜を一人愛でるのが最高の花見だという。昨今の花見の在り方にも言及している。
「花見は一人でするもんや」その言葉をかみしめながら、今年は一人ゆっくり桜と対峙してみよう。 -
2018年4月1日
表紙絵;鍔:桜に網文透し鍔(小窪コレクション)
表紙絵;櫛:銀疑甲入歯流水桜花文透彫櫛(サントリー美術館蔵)
別丁扉;題字/佐野藤右衛門
桜の写真/岡田克敏、永野一晃、宝田康雄 -
背表紙の、『花見の作法』というのに惹かれて手に取りました。
中身は聞き書きなんだけど、藤右衛門さんの語り口調がさばさばして
面白いし、はっきりしているから分かり易くて面白い。
手に取ったとき予想した内容とは大きく違ったけれど、
藤右衛門さんの桜への愛情がひしひしと伝わってきました。
そして、読み終わった頃には染井吉野に興味が無くなる。(笑)
確かに昔と違って、今は花見の仕方も違ってきている。
人間としての生活の仕方とか、いろいろなことを考えさせられた。
やっぱり今一度振り返って、万物に魂が宿っているという考え方を
見直した方がいいんじゃないのかと。
私は桜は、枝垂桜が一番好きです。
でも、ここ、という場所はあってもこれというお気に入りの木は、確かに無い。
現代人は、代々そこに定住するっていうのも少なくなっているし
今年見た同じ桜を来年見に行かないこともあるだろうから
やはりそれは寂しいことでもあるなと思いました。 -
文庫版:集英社文庫