- Amazon.co.jp ・マンガ (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784091885579
作品紹介・あらすじ
松本大洋が到達した少年期作品の金字塔。
星の子学園――様々な事情を持つ子供たちが、親と離れて暮らす場所。陽光が燦々と降り注ぐ園の片隅に放置されたポンコツサニー。其処は彼らの遊び場であり、彼らの教室だった。『鉄コン筋クリート』『ピンポン』『GOGOモンスター』――未来、スポーツ、異界…あらゆる世界で、その体と心を躍動させる少年たちを描き続けてきた松本大洋が、自らの少年期に思いをはせつつ、その最高峰を目指す渾身の作品。
【編集担当からのおすすめ情報】
通常版に加えて、限定特装版として、特製ヨーヨー付きのプラス・アンコミックスも登場!!当時、コカコーラヨーヨーのウルテクを競い合った方々も、今回、初めて手にする方も、松本大洋監修による、その名も「TAIYO-YO」をゲットして、作品世界の手触りを確かめてほしい!!
感想・レビュー・書評
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松本大洋をさがしていて「Sunny」にたどり着きました。
「オレがおるやんけ‼オレがめぐむ見つけてごっつい墓つくってやるやんけ‼誰か知らん人とか言うなや‼オレがめっけたる‼」
もう、このセリフに巡り合っただけで、納得しています。
ブログにもあれこれ書きましたが、蛇足です。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202302140000/詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
保育の現場に関わったことがあり、この本の世界観に共感。そう、そうだよね、お母さんが良いんだよね。理屈抜きで、お母さんが良い、お母さんが一番。谷川俊太郎さんがおっしゃっていた、母に愛された、それが土台にある、というエピソードを思い出しました。
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児童養護について勉強していた時に偶然見つけたマンガ。
あの「ピンポン」などで有名な松本大洋の作品と知ってへーと思いつつ読むと、大変な名作だった。
両親が養育できない子供達が集まって暮らす「星の子学園」の子どもたちの日々や思いをとつとつと語るストーリー。
片田舎に建つ古い民家に、ベビーから思春期までいろいろな子が暮らしている。
賑やかでおだやかでユーモラスな場面と、悲しみや荒廃や絶望に立ちすくむような暗い光景が交錯する。
素朴画のようでいて、背景まで丁寧に描かれた大洋タッチの絵が子どもの世界を描くのにピッタリ。
廃車になったサニーのハンドルを握りしめて、空想の中で旅をする子供たち。複雑な、ちぎれそうな子どもたちの不安や思いが痛いほど伝わってくる。
それを暖かく受け止める所長さんやスタッフ大人たちの懐がまた、深い。
松本作品の顔の描き方が、リアルな日本人の顔で、良いと思う。
松本氏が詩人の工藤直子の息子さんと知ってビックリ。しかも松本氏自身が養護施設にいたことがあり、その時の体験を元にして描いた作品というから興味深い。
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「もはや、漫画ではない」というコメントがありましたが、全く同感です。漫画という概念を打ち破る、そうですね、「景画」とでも言ったらいいのかしら。もう少しいい命名ができたらいいのですけど、絵をうっとりと眺めて情景に浸れる作品です。
江戸時代浮世絵はそれほど高価なものではなくて、品物の包み紙として使われて、それが輸出品に交じっていて海外で「アート」としての評価を得たといいます。この「SUNNY」はアートでしょう。ああ、生きててよかった。 -
せつなくなる。
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子供たちひとりひとりが切ない状況の中、自分らしく頑張ってるのが健気過ぎる。強がったり憎まれ口叩いたりしてる子の裏の気持ちはどれだけ親の愛に飢えていることやろか、、でもみんな魅力的でおもしろくてかわいい。見守る大人もステキ。まだまだ心の狭い私。色々気付かされたな。絵も大好き。四日市なんや!?とも驚いた。親戚も居て子供の頃はよく行ったから、すごくこの話しが近くで起きてることのように思えたな。
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異世界のような地続きの現実
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母親に愛されたいだけなのに叶わず行き場のない感情を元に幾つものトラブルを引き起こす春男。
「必ず迎えに来る」という言葉を残して、来る気配のない母親からの手紙を健気に待ち続ける静。
体調がなかなか優れず長期入院した母親の健康を祈って四葉のクローバーを集める純助。
恋愛に奔放な母親とアルコール依存症を持つ怠惰な父親に挟まれ、幼いながら自由と自立を願う研二。
両親を事故で亡くし、自分一人で幸せになることに対して罪悪感を感じてしまうめぐむ。
星の子であることに劣等感を常に感じるきい子。
そして、宛てもなく自己を探しては彷徨い続ける牧男さん。
画面の中で、絵の中で彼らは苦しんで叫んでいた。
どうして自分じゃ駄目なんだろうか、
どうして愛してもらえない、どうすればいい。
外から見たら星の子園そのものが
安全な場所で、愛をもらえる場所で家族なのに。
それは彼らが子どもだからじゃなくて、
親から期待する愛を貰えない全ての人が抱く
願望のようなものだと思う。私もその一人。
幸せな環境に気付いていないわけじゃない、
それでも、それでも家族という血の、
名前の、縁の繋がりを崇高に今日も思う。
最後が、最後だけが本当に曖昧だった。
溢れんばかりの愛情を受けても星の子では
『更生』できなかった春男。
それを、寂しいと思うのは園長の言うように
他人のエゴなのだろうか。そして、
更生は必ずしも正義なのだろうか。
みんなそうして大人になっていく、なんて
あまりにも味気なくてさみしすぎる。
それが、大人になるということなのだろうか。