からくりサーカス (22 完結) (小学館文庫 ふD 44)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091933874

作品紹介・あらすじ

最後に笑うのは人間、それとも!!!?

仲町サーカス一行は、追撃してきた自動人形たちと相まみえる。勝はカピタン、仲町親子はレディ・スパイダー、パンタローネとアルレッキーノはハーレクインとブリゲッラ。勝機は限りなく少ないものの、誰ひとり諦めることはない。彼らに守られ、鳴海とエレオノールを乗せた列車は目的地へと近づいていく。

【編集担当からのおすすめ情報】
藤田和日郎の長編第2弾「からくりサーカス」が、待望の文庫化。各巻にポイントを振り返るコラムを掲載し、複雑な物語をわかりやすく解説していきます。また、カバーを外した表紙には、著者の制作ノートからラフイラストや初期設定画などを本邦初公開! サーカス、人形、からくり……3つのキーワードが、時代を超えて絡まり合う冒険活劇を、余すところなく収録する全22巻。ゾナハ病を止める最後のチャンスに向け、残された人々が自動人形との最終決戦に挑みます!!

感想・レビュー・書評

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  • 藤田先生、この『からくりサーカス』を描いてくださり、本当に、ありがとうございます
    ただただ、感謝しかありません
    これまで、散々、長~~~~~~~~い感想を書いてきた私ですけど、この(22)に関しちゃ、この一言に纏めるしかありません
    凄かった、何もかもが
    既刊や、他の良い漫画の感想を書き、漫画読みかつ感想書きとしてのレベルを着実に上げていたつもりでした
    しかし、この(22)を読んで、その自信と実力は未熟であった事実を思い知らされました、嫌が応にも
    これまでで、最も重く、鋭く、エグく、キツく、激しく、厳しく、愛のある拳がどてっぱらに突き刺さりました
    ブリゲッラが喰らった崩拳レベルですよ
    素晴らしすぎる少年漫画、それしか言えません
    あまり断言はしたくありませんが、この『からくりサーカス』が見せてくれた大円団に匹敵するラストに匹敵する作品は、しばらく出逢えないかもしれません
    真島ヒロ先生の『FAIRY TAIL』や、鈴木央先生の『七つの大罪』、羽海野チカ先生の『ハチミツとクローバー』、秋本治先生の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』など、反対意見が出ようもない良作のラストも素晴らしかったです
    けど、私の中じゃ、この『からくりサーカス』を凌駕してくれないんですよね
    もちろん、ジャンルが違い、『からくりサーカス』にはない良さが、それぞれの作品にあった、それは事実で、そこに私がグッと来ていたのも現実です
    その感動と感謝をすっ飛ばすんだから、やっぱり、藤田先生は半端じゃないんですね
    ただ、悔しいって感情もあるんですよね、実際
    この(22)の感想を、「長すぎる」、「濃すぎる」って言われるくらい書ければ、ほんの少しだけ、藤田先生に近づける、と自分で勝手に思っていたもんですから、余計に
    結局、最初から最後まで、藤田先生に殴られっぱなしで、パンチを打ち返すも、避けられるどころか、当たっても倒せず仕舞い、そんな感じです
    なので、もっと、良い漫画を読んで、感想を書きまくり、今度こそ、この(22)の感想で、藤田先生をKOできるよう、努力を続けていきます
    とりあえず、小学館さん、週刊少年サンデー編集部さん、じっくりと鍛えていきたいんで、『月光条例』の文庫化、早急にお願いします。もちろん、カラーページの入った「完全版」も大歓迎ですよ
    まぁ、我儘をもっと言っても構わないなら、『月光条例』の文庫版、完全版より先に、この『からくりサーカス』のアニメを作り直してほしいんですけどね
    正直、初めてですよ、あんなガッカリしたのは、アニメに対し
    小学館さんや週刊少年サンデー編集部さんが悪くないのは分かっちゃいるんですけど、アレは酷くないですかね?
    絵も声も歌も良いのに、ほんと、残念でした
    もし、仮に、今、私の手元に10億円あったら、アニメ会社を買い取って、「からくりサーカス」を原作通りにアニメ化してもらいますね、絶対に
    あと、藤田先生に会えて、イラストのリクエストが出来たのなら、鳴海としろがね、勝とリーゼのW結婚式を描いてもらいたいです、えぇ

    この(22)もグッと来る台詞ばかりでした
    まず、一つ目がこちら
    鳴海の拳法の師匠であり、パンタローネを追い込むだけじゃなく、大ダメージを与えた男だけある、と感じるものです
    懸命かつ地道に重ねた正しい努力は、その時が来れば、必ず、最高の形で花開く、と教えてくれますね、この言葉は
    当然の話ですが、この時点で、師父は鳴海の四肢が機械仕掛けになるとは思ってもおらず、極端な例を口にしただけでしょう
    しかし、同時に師父は信じていたんだと思います、鳴海には武の頂点に到達できるだけの努力を続けられる才能がある、と
    憎悪と嚇怒を以て、人から悪魔と化し、その上で、あらゆる雑念を捨て切り、ついに、鳴海はその境地に入りました
    人形ゆえに多くの技を体得できたブリゲッラ
    彼の敗因が、自身が後悔と共に認めた通り、ミサイルで敵を破壊する快感を知ってしまった事であるのは間違いありませんが、地道な努力を怠った事も大きいんじゃないんでしょうか
    ブリゲッラは、武が自分に強さと勝利を捧げたと思い込んでいたかも知れませんが、逆に鳴海は武に自分の全てを捧げて、努力し続けていました
    勝敗が分かれるのは、当たり前ですよね
    藤田作品が「面白い」のは、藤田先生が練習をしまくっているからだ、とも気付かせてくれます
    この言葉が、まだ、私の薄っぺらい胸に突き刺さるから、私は小説家になりたい、って夢を諦めずに済んでるんですよねぇ
    小説家になるための努力、それは正直なとこ、判らないですが、少なくとも、良い小説や漫画を読み、多くの事を経験し、毎日、コツコツと自作を書き続け、多くの人に読んでもらう事は努力と呼べる、そう信じているので、続けていきたいです
    改めて、藤田作品は、高齢者がカッコいい、と震えます
    「練習だ、練習をしまくれ、鳴海。型の反復を体に刻みつけ、体の全ての動きを、ただの一発に込められれば良い――――そうすれば、たとえ、頭が悪かろうと・・・・・・おまえが――――フフン、木石で出来た手を持っておったとしてもな――――技は通じる!」

    これもまた、藤田イズムが詰まっている名言です
    勝の強さとカッコよさを示してくれているってのもありますが、同じくらい、藤田先生の信念を、弟子たちが受け継いでくれている事も感じさせてくれます
    藤田先生のところからは、多くの凄い漫画家が巣立っています
    きっと、それは、藤田先生に鍛えられたアシスタントさんが、「伝統」を受け継げる強さを手にしたからでしょう
    過去を変えられないからこそ、受け継いだ「伝統」を、次の世代に引き継ぐ役目を果たさんと、全力で今に、笑顔で立ち向かえる
    人間は、負けっぱなしじゃいないんでしょうね、やっぱり
    逆に言えば、「伝統」を受け継ぐことを蔑ろにした時、人は衰退していくのかも知れません
    きっと、なってみせましょう、私も藤田先生の信念を受け継げる男に
    「過去が・・・なんだ・・・ぼくは、過去を憎む。悲しい昔を憎む!今に生きてる人をがんじがらめにして、幸せをもとめる気まで奪っちゃうのは、過去の糸だ!現在“いま”を生きるためには、過去の糸にあやつられちゃダメなんだ!」
    「こ・・・小僧、どこから・・・そんな力を・・・・・・そうか・・・お前は、祖父の武芸を〈転送“ダウンロード”〉したのだったな・・・何が、『過去を憎む』だ!お前は人間の過去―――伝統の力で戦っているではないか!自分の言う伝統は、そういう偉大なものだ!そして、自分をほめたたえるためのものなのだ!!」
    「ちがう!形なんかじゃない。人間の『伝統』は、きっと、心の姿勢だ!!」
    「死んでから、ほざくがいい!『血と雷“サングレ・イ・フエーゴ”』!!」
    「悲しい昔を、もっとマシにするためにがんばる心なんだ!!」(by才賀勝、カピタン・グラツィアーノ)

    もう一つ、これも外せません
    『からくりサーカス』のファンは、この告白がずっと聞きたかったんですよ
    白銀の記憶と感情を視た鳴海と、フランシーヌの記憶を受け継いでいるしろがねが、教会で愛溢れる接吻をする、もう、グッと来ない訳がないですよ
    その後に、しろがねが鳴海を見て、幸せそうに笑う、これが最高で、もう、こっちも笑っちゃうんです
    私に限らず、全てのファンが知っている事ですけど、藤田先生は恋愛漫画の名手でもありますよね
    いつか、一切のバトルもオカルトもない、純粋にキュンキュンさせてくれるラブコメを読んでみたいもんです
    「しろがねぇ!どこだァ、しろがねえぇ!!しろがねえぇ~」
    「ナルミ、私はここにいます!
    ナ・・・ナルミ・・・」
    「宇宙には・・・別の強いヤツが行った・・・
    オレは、おまえに会うために、ここへ来たんだ。
    サーカスのテントで、はじめて会った時からずっと、しろがね、おまえを愛していた」(by加藤鳴海、しろがね)

    これも、読み手の胸をぶちぬく名言です
    あくまで、私は、って話になりますが、基本的に、藤田作品の基盤になっているのは、「泥なんてなんだぃ」の思想だ、と信じています
    その信念が、勝のこの言葉には凝縮されているように感じます
    誰だって、死にたくはありません
    死にたくはない、けど、自分の大切な人が笑顔でいてくれるのならば、笑ってくれるのであれば、自分の一つしかない命は懸けられる、とびっきりの笑顔で
    これぞ、藤田作品お決まりの、辛い事も苦しい事も乗り越えて、笑顔で立ち向かえるほど強くなった主人公だからこそ言える名言じゃないでしょうか
    「あんたは・・・好きな女を地上に置いて・・・自分は死んでも・・・それで・・・・・・満足かえ?」
    「ぼくは、しろがねが幸せなら、それでいい!」(byアルメンドラ、才賀勝)

    そして、最後がこれです
    他のファンの方も同意してくれると思うんですが、この台詞があったからこそ、『からくりサーカス』は最高の先に到達しているんですよ
    言うまでもありませんが、悪役が強烈だからこその藤田作品
    そんな悪役が、最期の最期で、自分が間違っていた、と認める
    カッコいい、とは言えないにしても、スッキリはします
    もし、白金が命尽きる一瞬まで、非を認めないままでいたのなら、『からくりサーカス』は台無しになっていたでしょう
    あんだけの悪人だった白金の考え方を正し、懺悔させた勝は、人間として、彼に勝利したのかも知れませんね
    年齢、性別、人種に関わらず、人間は誰だって、間違ってしまいますし、誰かを傷付けてしまう事はあるでしょう
    だからこそ、悪い事をした、と自分で気付けたのなら、素直に謝らなければいけません
    謝ったからと言って許して貰える訳ではありません
    けど、謝らなきゃ、何も良い方向に変わらないのも確かじゃないでしょうか
    心から願います、この兄弟が天国で仲直りできることを
    「本当にバカだよなァ・・・あのガキ。
    僕の大きな計画の、ほんの小さな歯車にすぎなかったヤツが・・・結局、全部、ぶち壊してしまった・・・・・バカのくせにさ・・・でもな・・・弟を助けるのが、兄だもんなァ。
    銀“イン”・・・兄さん・・・僕が、まちがっていたよ」(by白金)

    それでは、改めて、最後にもう一度だけ
    藤田先生、ありがとうございます、そんで、次は負けませんから!!

  • 傑作だった!200年に及ぶ因果の糸を、丸盆の上で結びあげた大団円。
    過去に最も縛られていたあの男ですら救った勝が最高だった!
    アルレッキーノとパンタローネには泣かされたな。
    1巻からすぐ読み直したくなるね!

  • 最後に笑うのは人間、それとも!!!?
    仲町サーカス一行は、追撃してきた自動人形たちと相まみえる。勝はカピタン、仲町親子はレディ・スパイダー、パンタローネとアルレッキーノはハーレクインとブリゲッラ。勝機は限りなく少ないものの、誰ひとり諦めることはない。彼らに守られ、鳴海とエレオノールを乗せた列車は目的地へと近づいていく。 (Amazon紹介より)

    途中の展開はすごくワクワクしました。だからこそ、最後の方で「??」となる部分が多かったのが残念。個人的には、アルレッキーノ・パンタローネが徐々に人間を理解していくところがとても好きです。

  • あの、名シーンがついによみがえる! もう、それだけでいいです。

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著者プロフィール

北海道旭川市出身。1964年生まれ。88年、『連絡船奇譚』(少年サンデー増刊号)でデビュー。少年サンデーに連載された『うしおととら』で91年に第37回小学館漫画賞、77年に第28回星雲賞コミック部門賞受賞。ダイナミックかつスピーディー、個性的ながらエンターテインメントに徹したその作風で、幅広い読者を魅了し続けている。他の代表作に『からくりサーカス』(少年サンデー)がある。

「2007年 『黒博物館 スプリンガルド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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