しょったれ半蔵

著者 :
  • 小学館
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864893

作品紹介・あらすじ

俺は忍者などにはならない。武士になる!


高名な忍び、服部半蔵の長男として生まれた正成。だが、忍びは闇に紛れて騙り、偸み、殺す……まさに「影」の仕事だ。ある日、父から下された初めての任務は、あまりに非情なものだった。そのうしろ暗さに耐えられなくなった正成は、家を飛び出してしまう。忍びにはならない、正々堂々と戦う武士として生きると心に誓って。
時は流れ、渡辺守綱家人として武士修業を積んだ正成は初陣を迎えた。この戦場で、密命を帯び急襲にあたっていた父・服部半蔵保長と、正成は十数年ぶりの再会を果たす。しかしその直後、父は謎の忍び・梟に襲われ命を落としてしまう。さらには正成までも梟の恨みを買い、命を狙われる羽目に。さらに、屋台骨を失った服部半蔵家の家督を正成が継ぐようにというお達しが出る。主君である徳川家康からの命とあっては断ることはできない。本人にとっては実に不本意ながら、二代目服部半蔵が誕生したのだった。
武士にも忍びにもなりきれない半端者(しょったれ)は、それでも乱世の人々と縁を結び、運命に抗い、仲間と共に修羅場に挑む。父、その仇である梟との奇妙な因縁を乗り越え、忍びの世の終わりに「しょったれ」が見出す未来とは――。

感想・レビュー・書評

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  •  時代小説を読むには、私の歴史の知識ではかなり厳しいものがあるが、ハマったらこれほど面白い小説はないのではないかなと思う。

     今回も言葉や文化に苦戦しながら読んだ(8割くらいは理解できていると思う)が、やはり面白かった。

     時代小説、歴史小説を読むと、信じられない能力を持つ者たちが登場する。忍者だ。この物語は忍者が主人公である。こう言ったら服部半蔵(物語の主人公)に私は忍びではないと怒られるかもしれないが。

     さて、この物語の主人公は服部半蔵正成。二代目服部半蔵である。正成はことあるごとに自分は忍びではなく武士だと言う。史実からもその辺は窺うことができる。

     その正成。武士として徳川家康に従事していくわけだが、生まれ持った忍びとしての才も現れるようになる。正成は武士として生きるのか、それとも忍びとして生きるのか。

     他の小説などでは、忍者とは、冷酷で万能な身体能力であるように描かれることが多いが、正成の人となりを見ると、やはり忍者も人間なんだと思えてくる。心の葛藤もあるし、できないこともたくさんある。そして、何より優しい。人間臭いのだ。

     正成だけではなく、登場する人物がみな魅力的だ。いつも正成のことをそっと支えている霧。情に厚い守綱。バケモノじみた強さの梟。

     このバケモノの梟とは因縁があり、最終的には決着を付けなければならないのだが、まさかそんなカラクリがあるとはと驚くばかり。

     いやぁ、面白かった。ラストは切なくも爽やか。これだから苦手な時代小説がやめられないわけだ。

  • この小説は時代小説と言うより歴史小説だ。服部半蔵のこれまでのイメージを根底から覆す。謎の忍びなど仕掛けがはりめぐらせてあり、謎解きの面白さもあります。徳川信康の切腹のシーンでは史実について人物関係など調べてしまい、これはまさにミステリー歴史小説と言っても過言ではないと思います。そういえば昨年の大河ドラマ「おんな城主直虎」でも信康の出てくるシーンがあり思い出しながら読んでいました。しょったれ半蔵かっこいい
    これからの作品がますます期待大の谷津矢車さんでした。

  • 入院生活 3冊目。
    時代小説だけれど、登場人物の過去や忍者の超人的な活躍がコミカルに描かれていて面白かった。表紙がアニメ的な絵なのも相俟って頭の中でもアニメ的なイメージを浮かべながら読んだ。

  • 半蔵の人間味あふれるところがいい~~
    信康へのそしてすべての者への
    「某にはできませぬ」 は最高の言葉です!!!

     「諦めぬぞ」半蔵は言い放つ。「諦めれるか」
     そう怒鳴った瞬間に、三ッ者の一人が閃光のごとく飛び出してきた。
     狙いは、半蔵であった。
     ふと、脳裏に冷たい目をしてこちらを見据える霧の姿が浮かんだ。
    死ねぬ。心中でそう叫んだ半蔵は思わず身をよじり槍を繰り出した。
     その時、半蔵の視える世界が変転した。
     すべての動きが止まった。目を見開いて恐懼の色を浮かべている軍兵衛の顔も、絶対絶命の死地で覚悟している武者たちの顔も。そして、己に飛びかかろうという、三ッ者の姿も。それどころか、三ッ者の瞳に映っている己の顔すらも見えた。敵の瞳の中にいる己は、明鏡止水、薄く微笑んですらいた。
     半蔵の繰り出した槍は、ゆっくりと三ッ者の胸に近づいていく。忍びならばこの一撃を射せるはずであった。だが、目の前の三ッ者は避ける動作を見せることなく、槍先を受け入れる。
     時の流れが元に戻った。
     確かな手応えがある。見れば、飛びかからんとしていた三ッ者が半蔵の繰り出した槍先の餌食になっていた。「お、お前~~~!」
     軍兵衛の声が上がる。
     半蔵は、ふと、
     「見える。敵の動きが見える。運足の切れ間が、俺には見える!」

  • 服部半蔵の小説は初めて読んだ!半蔵というとどうしても忍というイメージが強い。でも、最近は忍ではなく武士だったという説が有力である。そんな忍のイメージがある半蔵と本当は武士であったという半蔵を上手く取り合わせてくれた谷津先生は上手いと思う。半蔵のことだけでなく信康事件も面白く描いてくれた。また登場人物も今まで読んできた人物像と違くて新鮮的で嬉しい策略家の石川数正、己のやり方で生き抜く今川氏真、父信長似の五徳、父家康に従順で英明な徳川信康、変人で捻くれている榊原康政、剛胆で強い本多正信。お気に入りは榊原康政と徳川信康。

  • 服部半蔵を史実とフィクションを織り交ぜた作品。忍びが嫌で武士に憧れていた半蔵。家を飛び出し武士を志すが梟と言う忍びに父保長を殺され不本意ながら服部家の家督を継ぐ。今川家への侵攻、三方ヶ原の戦い、姉川の戦い、信康切腹など史実の流れのなかで宿敵梟との戦いを描く。最後は徳川家康の伊賀越えで梟の出生の秘密と最後の決戦で物語は終わる。

  • 服部半蔵正成、徳川十六神将で鬼半蔵を描く。
    忍者の印象が深かったが、徳川の旗本先手武将の一人であり、いわゆる武将としての側面も強かったようだ。
    正成は忍びとしては、しょったれ、半人前であるが、やはり忍びとしての一面もあったようであり、なかなかに面白いし、ある程度史実に沿っており、読み応えある一冊となっている。

  • おもしろ忍者小説です。ちょっと服部半蔵のイメージとは違うな・・・エンタメ風味。

  • 2代目服部半蔵正成の半生を、フィクションを織り交ぜて書かれたエンタメ小説。幼少期より、忍びとしての生き方に馴染めず反発し出奔、武士として生きる道を選んだが、父の死により再び服部家に戻ることに。武士と忍び、どちらにもなりきれない半端者=しょったれ半蔵が誕生する。前半ではどちらの実力も極められない苦悩が、後半では忍びとしての能力に徐々に目覚め、活躍する様が魅力的だ。敵である謎の梟面の忍びとの驚きのラストも良かった。面白かった!

  • 表紙から見て、漫画のノベライズだと思いました。
    某漫画家の悪役キャラを思い出しました。
    忍者の家に生まれ、才能もあるのに、「武士」に
    なりたい半蔵の考え方は、現在人に近いです。
    戦国の世が終わり、忍者の需要が少なくなるから
    仕方がないかもしれませんが。
    主人公の半蔵より、脇役の忍者たちの生き方の方が
    しっくりきます。

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著者プロフィール

1986年東京都生まれ。2012年『蒲生の記』で第18回歴史群像大賞優秀賞を受賞。2013年『洛中洛外画狂伝』でデビュー。2018年『おもちゃ絵芳藤』で第7回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞。演劇の原案提供も手がけている。他の著書に『吉宗の星』『ええじゃないか』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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