教室のゴルディロックスゾーン

  • 小学館
3.44
  • (8)
  • (17)
  • (21)
  • (2)
  • (4)
本棚登録 : 380
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866736

作品紹介・あらすじ

自分だけの孤独を大切にしてください。 中学校のクラスに馴染めず、現実から妄想の世界に逃げがちな依子。彼女が頼れるのは 父と、幼い頃から一緒に育ってきた愛犬のトト、そしてたった一人の友人・さきだけだった。しかしクラス替えからしばらくして、さきは依子を避けるようになる。 どうして? なんで? 今までのようにさきと仲良くしたい依子だったが、新しい友達と一緒にいるさきは、話し掛けてもすぐに離れていってしまう。 いっぽう、クラスメイトの伊藤さんは、クラスでいちばん目立つグループに所属しながらも、誰にでも分け隔てなく接してくれる女の子。優等生タイプの子にも、オタクっぽい子にも、そして依子にも話し掛けてくれる。 そんな彼女を好ましく思う依子だったが、伊藤さんと同じグループのリーダー・濱中さんに苦手意識を抱いているため、自分から話し掛けることはできなかった。 その後、事態は伊藤さんのけがを契機に思わぬ展開を見せる。 【編集担当からのおすすめ情報】 本作の主要人物である依子は、人とコミュニケーションを取ることが不得意で、クラスでも浮いた存在です。話せる友人がいないこと、孤独でいること……。一見すると彼女には、「居場所」がないように思えるかもしれません。 しかしこの世は、不安なとき、孤独を感じたときに手を差し伸べてくれる人がいることだけが、必ずしも幸せとは限りません。孤独であったからこそ、掴めることもきっとあるはずです。 全6篇からなる連作短篇小説、ぜひご一読いただけたらと思います。そして「自分の、自分だけの孤独を大切にしてください」。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 朝日新聞デジタル:専修大学ドットコム:われら専修人 : こざわ たまこ 小説家
    http://www.asahi.com/ad/senshu/human/vol10_p1.html

    小学館「教室のゴルディロックスゾーン」1話 – MIYASHITA NODOKA illustration
    https://bit.ly/3UUuhBm

    教室のゴルディロックスゾーン | 書籍 | 小学館
    https://www.shogakukan.co.jp/books/09386673

  • タイトルに惹かれてネットギャリーにて読了。

    昨年読んだ本だがレビューを載せ忘れていた。

    母と愛犬を亡くした少女が、現実世界に空想を交えながら孤独を慰め、離れてしまった親友のことを自分なりに考え成長する物語。


    最初の章「胡蝶は宇宙人の夢を見る」は、空想と現実がごっちゃになってしまう主人公の話だが、前置きなく始まる空想の宇宙世界の話はその世界観に入りこめるかどうかで、読み続けるかどうかが分かれそうだ。
    2章の「真夜中の成長痛」は、1章で主人公と溝ができてしまった親友が主人公となる話だが、こちらが先だった方が物語に入りやすいのではないかという気がした。
    3章以後で分かってくるが、この2人の互いへの気持ちも最初はかなり隔たりがあり、学校での友人関係とは得てしてそういうところがあった、と思い返した。
    3〜5章は登場人物それぞれの関係性や心情が伝わり、情景が目に浮かぶ、心に残る言葉や文章も散りばめられていた。

    途中で主人公の脳内から消えたはずのトト(元は亡くなった主人公の飼い犬で改造された宇宙戦士)が最後の章に再び姿を変えて、主人公の幼い頃に似た少女の前に現れるのだが、そこは必要だったのだろうか。

    学校の教室に閉じ込められる様々な女子生徒の心情を描いているのだが、少し個性が際立ち過ぎているような…共感を得られにくい場面も多かった気がするのが少し残念だった。
    2023.8

  • 中学校を舞台にした連作短編集。女子の人間関係、この年代は自意識が入り乱れてお互い適切な距離感を取るのが難しく、傷付け傷付けられで…読むことで正直かさぶたを剥がされる思い。そうはわかっていても。自分でもびっくりするほどのめり込んで読んだ。
    主人公の依子は現実と空想の境が曖昧で、地味でちょっと鈍くさめな描写に「うっ…かさぶた痛い」となってしまう。でも、そんな彼女が少しずつ少しずつ変わっていく過程がとてもよい。
    依子と親友だったのに、クラス替えで新しいグループに夢中のさき。カーストトップの、派手で勝ち気な濱中。濱中のグループだけど、依子とも分け隔てなく接する爽やかスポーツ女子の伊藤。それぞれが心の奥に抱える鬱屈。この年頃って、友達が別の子と仲良くしただけで焼きもち妬いたり、それで必要以上に嫌なこと言ったり、逆に無性に距離を置きたくなったり…。双方とにかく下手くそで、本作でも結構バチバチな場面はよくある。正直読む前は、そういうのがしんどく感じないかなと不安だったのに、むしろ進んでかさぶたを剥がすかの如く、朝も夜も読み耽ってしまった。
    中学生活を描いた作品は沢山あるだろうけど、中でも本作は「孤独」の美しさを伝えてくれて、いい大人なはずの自分でも、少し心が楽になれる気がした。
    それにしても…中学時代なんてはるか彼方だし、何なら自分の子供もとうにその時代を過ぎちゃっている。なのに、あの頃の自分目線になって、主人公と一緒に一喜一憂しちゃうんだよな。(そして時々は親目線になる。)読み終えた後、清々しい思いでいっぱいになる、幅広い世代に読んでもらいたい一冊だ。

  • 「死んだ」飼犬トトと話す、中学生の依子を見ていると、村田沙耶香的な匂いがしたのだけど。
    読んでいくと、依子は状況をちゃんと分かっている子なんだなと思った。

    自分と周囲の同級生との、どうしようもなく、存在するズレ。距離感。
    それは自分から埋めようとして、埋まってくれるものではない。

    「教室のゴルディロックスゾーン」とは、なかなかお洒落なネーミングと思うが、そこでなら生きていける、存在を許される場所を表している。
    それは、自分ではない誰かの承認を必要とする。

    学校が、序列を付けることを「やむなし」と捉えることから変わらないならば、きっと、何らかの「区分け」の中で、安心したり、苦しんだりすることの構造も、根本的には変わらないのだろう。

    そんな中で、伊藤さんと濱中さんの、ピリピリした関係は、嫌ではなかった。
    「意見を合わせなければ友達じゃない」の、本音も建前も、なんとなく分かる。
    だから、濱中さんのわがままな不安さに、自分なりに歩を進める伊藤さんは、カッコいいと思う。

    誰しもそうなれるわけじゃない。
    だから、「そうできる」相手がどうかも、きっと大事なんだろう。
    二人はその意味で、離れて欲しくない二人だった。

  • 保健室の落ち着かない安心とか
    放課後の遠い笑い声とか
    ぽたりぽたり泣いてるみたいな水道の蛇口とか
    そういう記憶が丸ごと溢れかえってくる。

    意思表示や選択を求められ
    どちらも違うような違和感と
    それでも選ばなければ残る浮遊感に
    戸惑いながら思案する最良。

    傷つかないように
    傷つけないように
    そう思っていながら傷つけ合ってしまったり
    歪んだ感情からお互いを垣間見たりしながら
    自分の居場所を探し求める。

    葛藤の渦に巻かれていつも不安定で
    確かなものを掴むために
    揺らぎ続ける少女たちの物語。

    孤独や喪失を知るからこそ見つけ出せる光が
    やわらかな希望のように
    心をあたためてくれます。

    • ユウダイさん
      相変わらず、詩人のように文章がとても巧みですね!ちょっと正直素人レベルを超えていると思います。参考にしたい文章テクニックばかりで、感嘆してい...
      相変わらず、詩人のように文章がとても巧みですね!ちょっと正直素人レベルを超えていると思います。参考にしたい文章テクニックばかりで、感嘆しています。
      2023/08/02
    • refrain∮さん
      ユウダイさん
      そんなそんな。そんなことはないと思いますが、ありがとうございます。中学生の頃、詩人になりたかったので、嬉しいです☺︎優しさに包...
      ユウダイさん
      そんなそんな。そんなことはないと思いますが、ありがとうございます。中学生の頃、詩人になりたかったので、嬉しいです☺︎優しさに包まれるコメントくださって、ありがとうございます
      2023/08/03
  • 学生時代の孤独ってなんであんなにも恥ずかしいんだろ。今なら孤独が楽しいこともあるのに。ひとりでいる時よりも誰かといる時の方が孤独を感じるって分かるなぁ。学生時代人付き合いが怖かった人、今も難しいと感じてる人へ。

  • 孤独に打ち勝つための応援歌、連作全6編の短編小説、あなたも読んで感動して下さい。震えて下さい。

  • 小さい頃はよくあちこち怪我をした
    大人になると子供の頃みたいな
    荒ぶった怪我はしなくなる
    人付き合いでもそうだなー

    あぁ、もうこんな風に
    傷ついたり喜んだりしないし
    できないんだなぁって
    輝かしい時間を懐かしく思い出した

    教育実習の先生のお話
    これ子供の頃に誰かに言ってほしかったな
    いや、あの頃に聞いても
    そんなこと言われても
    遠足で一人で弁当食うの辛いよ
    って反発しただろうか
    たぶんそうだろうな

    一人が辛い人も
    ままならない人付き合いに悩む人も
    そんなこともあったなぁな人も
    読んでみたらよいと思う

    自分はどの子に似てたかな

    星は4つ

  • 連作短編小説なので、タイトルの教室のゴルディロックスゾーンだけを読了。
    自分の居場所を見つける、は良いのですが、女子の嫌な感じしか出ていないような部分が多く、暗く嫌な気持ちになる。じっくり読む気になったら再読か?

  • 中学生の友情を描いた連作短編集。
    依子とさきちゃんの関係を描くのかなと思ってたら途中から伊藤さんの話になり(語り手も次々かわる)、これは登場人物は共通してるが別々の小説として読むべきなのか?とも思ったが、前にあったことも出てくるのでそういうわけでもなさそう。
    表紙からして読者ターゲットは、登場人物と同じくらいの女の子かなと思っていたが、それにしては多面的で、話はあちこちに飛び、なかなか物語に入り込めない。誰に読ませたいのか。
    メインの登場人物は全員現代の女の子だが、友達を張り倒したりして結構暴力的。今どきそんなことすると、学校でかなり問題になるし、そもそも自分を張り倒した人と友達でいられるのか?スマホもパソコンも出てこないし、リアルなようでリアルじゃない。リアルじゃなくても引き込む力があればいいけど、特にない。
    ある意味『人類の深奥に秘められた記憶』より読みづらかった。個人的には。

全23件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1986年、福島県生まれ。2012年「僕の災い」で第11回「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞。同作を収録した『負け逃げ』でデビュー。著書に『仕事は2番』。本作は結婚を考えていた元恋人へ、自分とは正反対の親友へ、母の再婚相手へ……大切な人に伝えられなかった本音や秘密を、瑞々しく綴った短編集。

「2022年 『君には、言えない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

こざわたまこの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×