帝国妖人伝

著者 :
  • 小学館
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093867023

感想・レビュー・書評

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  • ★5 探偵は誰? 大日本帝国時代、作家が事件に巻き込まれ…歴史と人物が学べるミステリ #帝国妖人伝

    ■きっと読みたくなるレビュー
    おもろい、いい作品。
    明治から昭和初期、作家の那珂川が様々な事件に遭遇する連作短編集です。

    事件は那珂川本人ではなく居合わせた要人が探偵役となって解決してゆく。解決に至った背景として要人のエピソードも語られていくことになる。事件の謎解きだけでなく、この要人は誰なんだ?と想像していくところが興味深く、さらに歴史の学びにもなるという一粒で三度美味しい作品。

    帝国時代の時期や場所が様変わりするところも魅力ですね、日本人としてじっくりと味わいたい作品です。

    〇長くなだらかな坂
    犯罪実録記事のネタを探していた那珂川が、食堂で街の事件について語り合う一幕。青年が母親を訪ねた際に、泥棒を退治したという話なのだが…

    会話してるだけなのに面白い!なるほどなぁと、つい感心してしまう。男性は甘えん坊なので、登場人物たちの気持ちがよく理解できる作品。

    〇法螺吹峠の殺人
    雨が降るなか京都から奈良へ向かう峠で、那珂川は死体を見つけてしまう。発見者のため怪しまれる那珂川であったが、付近にあった茶屋で事件の議論がされ…

    雨の中の足あと問題、短いお話ながらも解法も動機もしっかりしていて素晴らしい。要人が解決しようと思った背景にゾワリ。やたらカタカナの台詞で読みづらいのですが、誰であるか判明したところでナルホド感。

    〇攻撃!
    ドイツのビアホールでの一幕から、日本邸宅の小屋で発生した殺人事件を解決してゆく。

    事件も展開も真相も登場人物も衝撃…この人たちならこうなるかもね、という納得感がエグイ。

    〇春帆飯店事件
    本作イチ推し。満州国時代の上海にある宿館で発生した殺人事件、密室状態だった宿で犯人を見つけ出す。

    丁寧なアリバイ捜査から解決に向かうも、そこからの真相と展開に思い切りお茶を吹き出しました。恥ずかしながら要人は存じ上げず、大変勉強になりました。

    〇列外へ
    戦争終了直後、那珂川の思い詰めた行動とは…そしてどう生きるか。

    終章はあまり語りたくないです、ぜひ読んで欲しい。一体誰なのか。日本人が戦争でうけた影響、人は何故生きるのかという苦しみと希望が切々語られる作品。

    ■ぜっさん推しポイント
    まだまだ知らない人物いて勉強になりましたね~きっとあなたも、どんな人だったか調べることになります。

    本当にその人がその場に居合わせたなら、まさにそんな行動をしたのではないか。と臨場感たっぷりに思わせてくれる。そしてどんな要人でも人に対する想いが深く、でもほろ苦い風味を帯びていました。

  • 読書備忘録824号。
    ★★★★。

    GW前後の在宅勤務も含めた3週間の神戸帰宅に持ち帰った6冊の最後!
    予定通り新幹線が品川に着く前に読み終わりました!

    まあ面白かった!
    多分読売新聞の月イチの小説エンタメ紹介コーナーで読むリストに入れたヤツです。

    尾崎紅葉を師とした売れない小説家、那珂川二坊。
    食うためには、小説ではなく三文記事でも書かないといけない。35歳くらいから75歳くらいまででしょうか、明治、大正、昭和と、彼が赴いた地で体験したミステリ事件。そこには後世誰もが知る<あの人>の妖しい謎解きがあった!という5編の短編集です。

    備忘禄として各話の<あの人>を書きたい!という気持ちはあるんですが、ブクログで私をフォロー頂いている奇特な皆様がいらっしゃり、万が一にもこの作品を読もう!という気持ちになった時、<あの人>が分かっていると面白さ半減なのでやめときます・・・。

    【長くなだらかな坂】
    小説では食っていけないので三文記事のネタ探し。徳川公爵邸に盗人が!という騒ぎ。一膳めし屋で、偶然盗人を捕まえたという男に話を聞けた。
    これはネタになるな!と思ったその時、福田房次郎なる書家がちゃちゃを入れてきた。
    誰だ?この妖しい男は?

    【法螺吹峠の殺人】
    徳川邸の事件から10年。二坊45歳くらい。
    推理小説作家としてなんとか食えている。だけど品格のある歴史小説を書きたい!平家モノとか。
    木津から奈良に抜ける法螺吹峠を取材に訪れた。
    峠にあった茶屋の前に人が刺されて死んでいた!なんじゃこれ!茶屋に居合わせた中に犯人がいる。泰道なる御仁が推理を展開。
    誰だ?この怪しい男は?

    【攻撃】
    さらに8年後。二坊53歳くらい。
    出版社から海外視察を命ぜられた。
    第一次世界大戦で負けたドイツに。戦争に負けることの悲惨さを取材して来いと。
    ポツダムのビアホール。現地のおっさんと、現地大学のドクトルくんと昔ポツダムに住んでいた奉天会戦の英雄、朽木重吾は自害したのか他殺かの議論。そこに現れた日本陸軍大尉が推理を展開する。
    この妖しい大尉とドクトルくんは誰だ?

    【春帆飯店事件】
    昭和20年2月。上海。二坊は75歳。
    上海の陸軍病院に慰問講演へ。
    現地で物資を横流しして私腹を肥やしていた男が死刑に。その裁判中に殺された。殺したのは誰だ?
    殺人犯をでっち上げる企みに無為に加担してしまい間接的に殺人を犯してしまう二坊!
    死刑囚の特別弁護人が推理を展開してすべてを明らかにする!この男装した妖しい女は誰だ?

    【列外へ】
    昭和20年9月。敗戦後の北野天満宮。
    上海で間接的に人を殺してしまったと悩む二坊。
    自ら人生に幕を閉じようとするが死にきれず、山田という青年に介抱される。
    人生の正しい列から外れても別にいいじゃないですか、と。楽になりますよ、と。
    この素敵な妖しい青年は誰よ!

    全く何を言ってるのがわからん備忘録だ。サイテーだ。まあ良いや。

    • shintak5555さん
      ゆうきさま
      それです!それが大事なんです!
      ボケ防止はインプット(読書)ではダメで、アウトプット(レビュー)なんですよ!
      なので日々、備忘録...
      ゆうきさま
      それです!それが大事なんです!
      ボケ防止はインプット(読書)ではダメで、アウトプット(レビュー)なんですよ!
      なので日々、備忘録で苦しんでるボケ老人なんです!(◞‸◟)
      2024/05/08
    • ゆーき本さん
      わたし しんたろさんのレビュー大好きですよ´▽`)ノ
      しんたろさんの気持ちがビシバシ伝わってきます⟡.·*
      わたし しんたろさんのレビュー大好きですよ´▽`)ノ
      しんたろさんの気持ちがビシバシ伝わってきます⟡.·*
      2024/05/08
    • yukimisakeさん
      当たってた!笑
      そうなんですよ、なので有名とくればあの方かなあ…と。期待半分で。
      砂糖入り牛乳!かわいい!!(о´∀`о)
      当たってた!笑
      そうなんですよ、なので有名とくればあの方かなあ…と。期待半分で。
      砂糖入り牛乳!かわいい!!(о´∀`о)
      2024/05/08
  • 二重に味わえる一冊。

    時は明治から昭和にかけて。
    鳴かず飛ばずの小説家、那珂川ニ坊が行く先々で遭遇する事件。
    そこにふっと絡み合うのは有名なあの人この人。

    紐解かれる事件の真相と、紐解かれる探偵役と化したあの人たちの正体に二重の面白さを味わえた。

    最後に思わず、あぁ、あなたでしたか…と言いたくなるほど見事な"妖人"っぷりの種明かし。
    と言ってもほぼお名前しか存じ上げない状態だったのが悲しい。

    ヒントはいっぱいあったのかな。

    舞台が上海の第四話は事件といい妖人の容赦ない冷ややかな言葉といい読み応え有り。

    時代と悲哀が沁みる。

  • 語り手はいわばワトソン役。事件の真相とは別に、探偵役の正体が各話最後で明かされるという、変わった趣向の連作ミステリー。僅かなヒントから途中でピンとくる物知りな人はともかく、有名人5人の名にどこまで反応できるかで評価が分かれそう。自分はまずまず楽しめた。明治生まれの三文文士の数奇な人生譚としても面白い。伊吹亜門氏、まだ若いのに史実の絡ませ方が本当に巧い作家さんだと思う。

  • 明治〜昭和戦後設定のおはなし。無名に近い作家・那珂川が遭遇する犯人は誰かと解き明かす探偵は実は誰なのか!の短編が5作。探偵役は歴史上の有名な人物なのだけれど名前だけの方が多すぎてあとから調べてみたりして、作品の流れとの関係が面白かった。この時代設定が面白さを増していたような気がする作品でした。

  • 明治から太平洋戦争にかけて、那珂川二坊という作家を語り手にした謎解き連作短編集。毎回謎を解くのはその場に居合わせた歴史上有名な人物だが、最後まで正体が伏せられているので、わかったときの驚きが心地よい。このあたりは京極夏彦の”弔堂”と似ている。
    また時代が移り変わるごとに語り手の立ち位置や心境が変化してゆくのもなかなか切ない。地味だが面白い話だった。

  • 懐旧の情が漂う5つの事件。筆を折ろうか悩む那珂川。北大路、夢野、石原、川島、山田たちの鮮やかな謎解きを回想し…物語の端々に、江戸川乱歩を彷彿とさせる端整な妖しさを感じた。

  • わたしの知ってるあの人もこの人も…!著名人が探偵役になるミステリーで、エンタメ的に読んでいたのですが、最後の一編に度肝を抜かれました。なんて壮絶な、凄惨なお話なのかと。
    作品中の人物が固執する、人の情念てやつが、濃厚に散りばめられていたと思います。

  • 京極夏彦氏の弔堂に似ている。知らない人物ばかりなので面白さは感じられず同じ出身地で推し作家になれたらいいと思ったが一作目であるこの本は友達以下の本となってしまった。

  • 明治から昭和初期にかけて売れない小説家が巻き込まれる殺人事件の短編集。
    主人公は本当に巻き込まれだけで、事件を解決するのは後に名を残す偉人達。短編の最後に偉人が誰だったか明かされるのだが、その人が実際どういう人物だったかに興味が持て面白かった。

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著者プロフィール

ミステリ作家。1991年、愛知県生まれ。同志社大学ミステリ研究会出身。「監獄舎の殺人」でミステリーズ!新人賞を最年少受賞。2018年に同作を収録した『刀と傘 明治京洛推理帖』(東京創元社)で単行本デビューし、翌年に本格ミステリ大賞を受賞した。このほか著作に、『刀と傘』の前日譚となる『雨と短銃』(東京創元社)、『幻月と探偵』(KADOKAWA)がある。

「2022年 『京都陰陽寮謎解き滅妖帖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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