信さん

著者 :
  • 小学館
3.60
  • (7)
  • (14)
  • (20)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 65
感想 : 20
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (111ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093874632

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 表題作と「遥い町」の二編が収録されている。
    九州の炭鉱町に住む主人公の私。
    この私を通して町でも札付きの悪ガキだった信さんとの思い出、また「ヨン君」と呼ばれた在日の男の子のとの思い出がそれぞれ語られる。

    二編とも心に沁みると同時に物悲しい物語だった。
    昭和のノスタルジーと一言で片づけてしまうには忍びない。
    養父母に育てられる子供たちの疎外感や愛情に飢える気持ちは普遍的なものだろうし、在日の子供たちへの差別も決してなくならないだろう。

    いい意味で教科書的な作品。
    子供たちに是非読んでほしいなと思った。
    今の社会だと友達同士のかかわり方も変わってきてるだろうとは思うけれど。

    この作品、どうやら映画化されているみたいだ。
    予告編を見てみたらそれだけで胸が締め付けられそうだった。
    ちょっと見てみようかな・・・。

  • 『信さん』
    九州、炭鉱の町。三十年以上前にそこにいた「私」と信サンはいた。

    「私」の二つ年上の信サンを知らないものはいなかった。小学五年生にして数多くの悪行を働いていたからだ。

    学校帰りの「私」がカツアゲされそうになったとき、助けてくれたのは信サンだった。通りかかった巡査は信サンをカツアゲの犯人と決めてかかるが、「私」の母は彼が犯人ではないと気づく。

    そうして芽生えた「私」と信サンの友情、「私」の母への信サンの想い、
    信サンの腹違いの妹。

    更生していく信サンが愛を覚え、妹のために東京で働いて死んでしまうまでの物語。


    『遥い町』
    朝鮮人のヨン君はいじめられていた。十一歳だった。

    「私」は彼と仲がよかったが、彼は校内の不良グループのスネオみたいなSに目をつけられ、殴られた蹴られ涙を流していた。

    そんななか、ヨン君は家族と朝鮮人学校のある大阪へと引越せることになる。嬉しそうなヨン君。

    出発の日、S達はヨン君を裏山へと連れ込み、徹底的にやってしまうと意気込む。

    裏山に駆けつけた「私」が見たものは、腕が折れたと泣き喚くSやボロボロになった少年たち。

    そこでやっと気づく。
    ヨン君はいじめがつらかったんじゃなくて、我慢するのがつらくて泣いていたのだと。

    本当は強いのに抵抗せず我慢していた朝鮮人の少年。
    戦後、朝鮮人が日本で生きるということは、強く我慢することだった。

    ---------------------------------------------
    ベタな展開が個人的にすごく好み。ツボを押された感じ。
    最高に面白かった。

  • まさに「古き良き昭和」の時代。上辺だけを見ると乱暴者でロクでもない子供の信さん。でも、ちょっとしたキッカケや、一言でどんどん長所が見えてくるし、伸びてくる。淡い恋心(?)もたまらなく純粋。そして ヨンくんも、ひたすら母を思って耐える秘めた強さ。この物語の語り手は、何十年経っても色あせない思い出と友情を持てたこと、とても羨ましく思いました。たった100ページ程の話ですが、良い本に出会えました。

  • 映画を見たのが先です。
    昔懐かしい、人の結びつき。

  • 信さんとの強い絆。
    誤解されやすい信さんをいつもあたたかく受け入れた母。

  • わりとベタだと思うのに泣いてしまった。

  • 2012/2

  • 2012/01/28

  • 哀しいけれど清清しいような…何とも言えない二編の話。

    語り手は大人になった少年、守。
    彼が子供の頃に九州の炭鉱の街で交わった少年との交流が書かれているのだけれど二編とも寂しい子供の話で読んでいて切なくなった。
    変な捻りとかが無く、無理なく読めてすとん、と胸に何かが落ちる感じ。

    二人の少年、信さんとヨン君の心の強さ、生き方に拍手をしたい。

  • 郷愁。

  • すがすがしいの一言。

  • もっと年とってから読んでも、面白そう。じーんときた。

  • 本当にオーソドックスないい話。教科書に載っていいと思う。

  • 2008.6/12
     入っている二つの話が似ているような。/子どものころの幸せな気持ちを思い出す

  • これも昔に読んだ話。懐かしいな…

  • ベタだと思いつつも号泣しました。一言であらすじを言えば・・・う〜ん、頑張ってるのに報われない少年の話?

  • すべての男性は、お母さんを大切にしていることを、堂々と発表してよいと思う!リリーさんの『東京タワー』の源流かと思った。

  • 訂購於日本某購物網站。海運中。(ネットで注文したばかり、まだ船便で運送中。)

  • 図書館にて1時間で読了。『青空のルーレット』『いつでも夢を』と違い、ユーモアが抑えられていたのが意外だった。表紙の下手な絵は一体何だろうと思っていたら、読み進めていくうちに、信さんが書いていた絵なんだな、ということが分かった。「私」の視点で、母と信さんの交流が淡々と描かれているのが印象的。母の懐の広さに胸を打たれた。友人の母を心のよりどころとし、ひたむきに生きる信さんの人生を思うと切なくなる。信さんが、友人の母に干し柿やブローチをプレゼントするシーンが可愛らしかった。

全20件中 1 - 20件を表示

辻内智貴の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×