- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093886529
作品紹介・あらすじ
明治政府に消された幻の「徳川近代」
『明治維新の過ち』を嚆矢とする「維新三部作」の著者待望の新章第一弾。
明治ニッポン近代化の礎を築いたのは薩摩でも長州でもなく、西郷・大久保でもない--。『明治維新の過ち』で、教科書的な明治維新観に一石を投じた著者が、明治政府によって埋没させられた歴史を丹念にひもとき、歴史の真相に迫ります。
明治に改元される5か月前、幕臣小栗上野介忠順が新政府軍に取り調べを受けることなく斬首。後に大隈重信によって「明治政府の近代化政策は、小栗忠順の模倣にすぎない」とまで称された逸材である。本書は、横須賀に製鉄所、築地に日本で最初の本格的なホテルを建造した小栗の歩みを照射することで、徳川幕臣らによって進められていた「近代化」の全貌をひもときます。
さらに、咸臨丸でアメリカに渡った遣米使節の一員だった秀才・小野友五郎など、ニッポン近代化の礎として活躍した幕府のテクノクラートの足跡を辿り、なぜ彼らの功績が埋没したかを検証。抹消された歴史の真実を解き明かします。
【編集担当からのおすすめ情報】
大隈重信によって「明治政府の近代化政策は、小栗忠順の模倣にすぎない」とまで称された逸材・小栗上野介。横須賀に製鉄所、築地に日本で最初の本格的なホテルを建造した小栗の歩みを照射する。
感想・レビュー・書評
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小栗上野介忠順
彼こそが幕末の知と行動の巨人と言えよう。
まずはやけに世間の評価が高い、坂本龍馬とその師である勝海舟に対する、著者の評価が興味深い。
特に勝は敗者側の人間であり、そのために老後「氷川清話」にて勝者側を皮肉ったり、散々な体で不満を漏らしたりであったが、それが彼本来の傲慢、見栄、虚栄心、栄達心の表れであると喝破する。
ただ、彼の弁舌能力、調停能力は父親譲りの本物であったため、江戸幕府も必要な時期・要件にだけ、彼を要職に登用した。しかし彼にはそれが不満だった。
それは、同じ幕臣である木村摂津守や小栗上野介への不満と反発となる。
一方、幕末に徳川幕府存続や将軍の家督相続問題など眼中になく、ただひたすら未来の日本のために粉骨砕身した幕臣が居た。
岩瀬忠震、水野忠徳、小栗上野介忠順、いわゆる「幕末三俊」である。
薩長が攘夷などと矮小な見地に固執する中、彼らは世界の情勢を冷静に見据え、未来の日本国のため、開国、海軍力強化、富国強兵というグランドデザインを描いていた。
彼らこそ、真の国士と呼ぶに相応しい。
ペリーやハリスによる恫喝外交に屈することなく、粘り強く、堂々と正論を唱えて交渉したその胆力。薩長の小者とは比較出来ない傑物達である。
しかし明治政府による勝利者史観により、その功績は横取り、無いものとされた。
「明治維新により、近代化は確実に20年は遅れた」
と言わざるを得まい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
明治維新をクーデターと扱い見直そうという呼びかけ。
学術的ではないので参考文献の信憑性次第だが、
小栗や勝海舟の見直しを考えるにはなるほど論調。
大河ドラマでも物語ではあるが明治維新の扱いを真正面から問うように
徳川の歴史があっての現代という筋道が見えてくる。
著者のタイトルより大体似たような論調の本が並びそうなのと
内容が細かい割には主張が弱いのでお話程度に。 -
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薩長によって一方的に語られてきた、これまでの明治維新の捉え方に異を唱える原田氏の著。
幕末の幕府官僚は旧態依然とした守旧派ではない。むしろ当時の西洋人に互するとも劣らない視野を持ち、明治新時代の礎を築いたのだという。
氏の主張がどこまで専門家からの検証に耐えるものなのか、判断がつかないが、一般に膾炙してきたものから視野が広がるのは、それだけで面白い。
それにしても江戸時代、これだけの教養ある官僚を輩出した教育レベルの高さは恐るべしだ。