スクリーンが待っている

著者 :
  • 小学館
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093888080

作品紹介・あらすじ

ああ、世界は奇跡に満ちていたんだな。

「ニヤニヤ、クスクス。これ、立派な映画作りの教則本です」役所広司
「ため息がでるほど、画には映らない想いがつまってる」仲野太賀
一貫してオリジナル作品に拘ってきた著者が、初めて小説をもとにした作品のメガホンを取った。原案は、佐木隆三氏の『身分帳』。13年という最後の刑期を終えた元殺人犯の人生を描き、舞台を昭和から現代に移して脚本化。『身分帳』との出合い、脚本執筆のために潜り込んだ婚活パーティ、一か八かの撮影現場、コロナによる編集作業の休止など、映画の制作過程の出来事が時にユーモラスに、時にアイロニカルに描かれる。
『すばらしき世界』は、2021年2月11日に公開。主演の役所広司さんはじめ、仲野太賀さん、長澤まさみさんなど豪華キャスト。2020年9月に行われたトロント国際映画祭への正式出品など既に注目を集めている。

【編集担当からのおすすめ情報】
映画『すばらしき世界』は、2021年2月11日に公開です!

映画の世界を離れたテーマの読み物と、『すばらしき世界』のアナザーストーリーともいえる短編小説を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 図らずして「すばらしき世界」鑑賞後に図書館予約が来たので、監督のことばがより自分に入りやすかったです。これまで西川監督のオリジナル作品が好きで、今回は、ん?原作があるなんてどーいうことなんだろうと思っていましたが、その原作との出会いとか、映画化までの詳細が書かれていたので、原作があるからといって、当たり前だけどそのまんまってわけにはいかず、しかも時代背景をより現代にもってきたあたりが非常に興味深く、監督さすがやなーと思いました。本書の中では、鑑賞中もつい職業柄気になっちゃってた在留外国人役の子たちの話もあって、真相?を知ったらやっぱりぐっときてしまった。ラストの彼の話も◎!映画を観るまえに読んだ方は、観てからラストの短編だけでも再度読むことをオススメします♪って言われなくても読むか?!

  • 「すばらしき世界」を観て、刑務所から出所した主人公が生きた、この社会がすばらしき世界なのかどうか分からなくて、この本を手にした。
    結果、コロナで人との交流が閉ざされた、その当時、こうやって人と人との血の通ったやり取りが出来ること、含めすばらしき世界なのかと自分なりに解釈した。

    それより、何より、映画作りって、ロケ地選考からやり取り、ストーリー展開、音、配役、色、こんなに大変なのかと、そこに驚いたし、役所広司さんがどれだけすごい俳優さんであるか、よく分かった。映画を作る人たちの情熱と、粘り強さと、体力と、行動力を考えると、観させていただくことに、深みが増した。
    映画を観て、分かる人風な難しいことは言いたくないが、すごい世界だ。
    読んで良かった。

  • 西川美和監督、映画作品ももちろんだけれどやはりこの人の書く文章が好きすぎると思った。どんな文章も瑞々しく、でもしっかりと地に足がついていて、確実な歩みを見せてくれる。感情や物事にぴったりと寄り添い、少しのズレもなく、ただそれを書く。心地よい。

  • 良かった。マジでスクリーンが待ってるぞ!と叫びたくなる。

  •  西川美和監督の最新作「すばらしき世界」を制作する際のエピソードを中心にしたエッセイ。映画はもちろん大好きなんだけど監督の文章もファンなのでこうして読めて嬉しかった。
     今回の映画は初めて小説原作ありきということもあり、小説から脚本へと昇華させていく過程での様々なエピソードや監督がどういうアプローチで臨んでいったのか細かく記録されていて一体どんな映画になっているのか非常に楽しみになった。また、おそらく見てから読んだとしても「これはあのシーンだな」とか「この人のことか」みたいな答え合わせもできるだろう。したがって、見てから読んでも、読んでから見てもどちらでも良いように個人的には感じた。
     「ともだち」というエッセイでは、これまで長年付き添ったプロデューサーから新しいプロデューサーに乗り換えることが書かれているのだけど、それが本当に生々しい内容で読んでてドキドキした。新しい空気を入れなければ次の進化はないし、それに伴い失う安定もある中で、著者が苦渋の決断するところは華やかに見える映画作りはシビアな世界で他の仕事と変わらないのだなと感じた。筆力ということで言えば「異邦の人」が抜群。前作の「遠きにありて」では何度もウルルになったけど、今回は「異邦の人」でウルルだった。日本に来ている技能実習生の話なんだけど、彼らの過酷な環境が問題になっていることは念頭に置きつつ、その中でもたくましく生きている姿が取材含めて丁寧に書かれていて非常にオモシロかったし最後のくだりで泣いた。
     公開前ということもあり映画に関する具体的な内容は少ないものの、著者が今回キャスティングした役所広司と仲野太賀の話は興味深くて、特に仲野太賀の話は語られているのを読んだり聞いたりしたことなかったので新鮮だった。
     映画はコロナ前に撮影が終わっていたものの、編集作業などはコロナ禍の影響をもろに受けていたようで、その頃どういうことを考えていたか知ることができてオモシロく、これまで読んだコロナ禍における文章で一番刺さった文章を最後に引用しておく。何気ない描写でハッとさせる著者の提示する視点がとにかく好きだ。映画が楽しみでならない。

    またスタジオの密室で、朝から晩まで膝と膝をつき合わせながら、人たちと仕事ができるときのことを思うと、それだけで胸が踊るような気持ちだ。私たちは、必ずその日を迎える。それまでは窓外の空に憧れながら、麺を茹でてはネギを刻み、タレをかけて食す日々だ。

  • 映画もとてもよかった。西川監督の話も映画を作る過程も興味深くて、読み応えあった。
    また映画観たい

  • 映画のタネ(原作)に出会って、作り始めて、完成するまで。
    たくさんの人と関わって、時には苦い想いもして、全てはよりよいものを届けるために。
    映画のタイトルがなー!と思ったけど(多分これだと観に行かない)エッセイを読んだら観てみたくなる不思議。役所広司さん、八千草薫さん、仲野太賀さんという魅力ある人たち。気になる。

  • 彼女の作る映画同様、きびきびと潔く書き進めつつ、自身のものの見方や価値観を揺らす。「ゆれる」のでなく「ゆらす」。メンタルな体幹が強い人なんだろうと思う。

  • 最後の短編小説を読んでほしい。
    小説家としてもすごい人だと思う。
    大好きです。

  • 「すばらしき世界」を観た後、先輩におすすめされたので読んでみた。
    まず、感情の言語化が上手くてびっくりした。普通の人がふと違和感を覚えたとしても、目まぐるしく変わる日常の前では「まあいいや」とスルーしてしまうような感情でも、突き詰めて何故?と考えて言語化できるのはすごい。しかも平易な言葉で具体的な描写をしてくれるので、理解しやすくてするする頭に入ってくる。スゲー。

    八千草薫さんの章が1番面白かった。
    映画観てもそう思うけど、エッセイを読んで、西川監督ってやっぱり優しいリアリストだなあと改めて思った。特に、主人公の母親への幻想を断ち切ってやろうとするところ。

    「居もしない母ちゃんより、自分の人生だろ。私が介錯してやるから、次へ進めよ。」

    おもろ笑

    あと、聖書のイエスとユダ両方に人間味を感じているエピソードにも西川監督らしさがあった。人間の嫌なところだと考えられていること、目を背けたくなる感情に対して、「いやいや知らんとは言わせねえぞ」と切り取って、映画へと昇華させてしまうのが、西川監督の恐ろしさだと思う。監督の思考のルーツが少しわかる興味深いエッセイだった。

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著者プロフィール

1974年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中から映画製作の現場に入り、是枝裕和監督などの作品にスタッフとして参加。2002年脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』で数々の賞を受賞し、2006年『ゆれる』で毎日映画コンクール日本映画大賞など様々の国内映画賞を受賞。2009年公開の長編第三作『ディア・ドクター』が日本アカデミー賞最優秀脚本賞、芸術選奨新人賞に選ばれ、国内外で絶賛される。2015年には小説『永い言い訳』で第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補。2016年に自身により映画化。

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