朝鮮総連と収容所共和国 (小学館文庫 R り- 2-1)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094034318

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  • 2015.03―読了

    終戦当時、日本には二百数十万人以上の在日朝鮮人がいた。
    その殆どは、終戦直後の引き揚げ事業や自力渡航で朝鮮半鳥に続々と帰還して行った。
    遅い時期に日本に渡って来た者、あるいは強制連行で無理やり連れて来られた者。これらの朝鮮人ほど帰国を急いだ。地縁.血緑など祖国との繋がりが強く残っていたからである。
    比較的早い時期の渡航朝鮮入は引き揚げようにも、祖国にはすでに住居もなければ、耕す田畑もなかった。頼りにすべき親類縁者とは、長い年月の間にすっかり関係が希薄になっていた。
    おまけに大半の朝鮮人の故郷である韓国でコレラが大発生したり、米軍の軍政下で社会混乱が起きていた。さらに朝鮮戦争-50~53年-の勃発が、帰るべき祖国を灰燼に帰してしまう。
    帰るに帰れなくなった朝鮮人が日本に多数留まった。この60万人ほどが、現在の在日韓国.朝鮮人の基数となる。
    ところが、終戦から14年経った頃に突然、第二の引き揚げブ-ムが起きた。
    1959年 12月14日、在日朝鮮人の北朝鮮への帰還が始まったのである。
    日朝両国の赤十宇社の協定-59年8月13日調印-によるものだった。一般に「帰国事業」と呼ばれるものである。
    以後、3年問の中断期-68~70年-を挟んで、84年までに累計で約9万3000人余りが北朝鮮に永住帰国した。
    その中には、日本人配偶者とその子供も含まれる。日本の国籍法によれば、厳密な意味での日本人は約6600人だった。 その内「日本人妻」と称される人たちが約1800人いる。数は少ないが「日本人夫」もいた。
    この「帰国事業」は、いまから考えてみると、奇妙なものだった。
    在日朝鮮人は、その98 パ-セントが「南半分」、つまり今の韓国出身である。だから、厳密にいえば、北朝鮮は故郷ではない。守るべき祖先の墓もなければ、頼るべき親類縁者も殆どいない、「異郷の地」だった。なのに、この人たちは北朝鮮へと「帰っていった」。
    その所為もあってか、韓国政府は、「帰国事業」という用語を使わない。「北送事業」と呼んでいる。「帰国者」も「北送者」と称する。ともかく、歴史上でも稀に見る性格の「大量移住」だったことだけは間違いない。
    北朝鮮の楽園ぶりを紹介する宣伝物が、在日朝鮮人家庭に洪水のように配られる。地方自治体への請願活動も活発に行われた。早期実現を求める自治体決議が続々と採択される。その数は、46の都道府県、290の市区町村に及んだ。
    日本の左翼.進歩的知識人やマスコミも、率先して帰国運動の援護射撃を引き受けた。 なかでも有名なのが、寺尾五郎氏の北朝鮮訪問記-「38度線の北」新日本出版社-である。紙の銃口からは、「人道主義」と「社会主義賛美」の銃弾が、雨霰と撃ち出された。
    北朝鮮政府は素早く、日本政府との交渉をまとめた。熱病が冷め、集団催眠が醒めてしまわないうちに、トボリスク号とクリリオン号のソ連船二隻を配船した。
    1959年12月14日、凍てつくような冬の日であった。
    背中を押されるようにして、約10万人が永住帰国した。また、在日朝鮮人の家族として 6000人余りの日本人も船上の人となった。
    ところが、帰国者を待ち受けていた運命は‥‥
    「温かい歓迎」どころか、祖国の「ひろい懐」で、労働党と現地住民の"狭い心"にさいなまれた。差別と監視の"洗礼"を受け、密告と粛清の対象とされた。
    日本での朝鮮人差別から逃れたい。日本では発揮できない知識や技術を祖国に役立てたい。そんな純粋で崇高な思いは、完全に裏切られた。
    帰国者の夢と希望は、北朝鮮当局の空約束によって、ものの見事に打ち砕かれる。実態は、国家ぐるみの大々的な「詐欺事件」であり、「殺人事件」だった。
    帰国者の居住地と職場は、労働党によって一方的に決定された。本人の経験や能力、夢や希望とは、まったく無関係だった。

  • 自分は朝鮮総連や「北」に対して尋常でないくらいに批判的ですが,相手を知った上で批判するべきだと思っています。
    そのためには,まず相手を知ることからです。
    朝鮮総連や「北」について,真相を深く知る人の著書をこれまで多数読んできましたが,今回もその一環です。

    主張が一貫しており,考え方も非常にシンプルで分かりやすい。
    新しく知ったことはそれほど多くなかったが,改めて知識の整理になったことや,実態について自分の想像以上に異常なこともあったりで,勉強になった。
    韓光煕 氏の「わが朝鮮総連の罪と罰」と合わせて読まれたい。

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